EVは外出時の急速充電が心配? レクサスが充電インフラ普及に着手! 充電問題の解決策はある?

長距離運転時に必要な経路充電が課題となる?

 では、充電の使用方法と充電方式という2つの観点を重ねてみます。

 基礎充電と目的地充電は、EVコンセントまたは普通充電で十分対応できるはずです。例えば、日産の軽EV「サクラ」の電池容量は20kWhですので、EVコンセントの3.2kWで充電すると、単純計算ではほとんど空の状態から7時間程度で満充電になるでしょう。

 なお、日産はEVコンセント(日産の表記は「普通充電コンセント」)では、車両側の充電能力は2.9kWと記載されています。

 また、レクサス「RZ450e」やトヨタ「bZ4X」/スバル「ソルテラ」の電池容量はともに71.4kWhですので、出力6kWの普通充電では12時間程度で満充電になる計算です。

日産ディーラーで充電するトヨタ「bZ4X」
日産ディーラーで充電するトヨタ「bZ4X」

 問題なのは、やはり経路充電でしょう。経路とはその名の通り、目的地に向かう移動の途中なので、できるだけ早く充電を終えることが目的となり、必然的に急速充電器が必要になります。

 もっとも多く利用されているのは高速道路のSA/PA、または日産ディーラーに設置されている急速充電器(日産車以外も24時間利用可能)というのが経路充電の実状です。

 そのうえで急速充電の課題は、近年登場しているEVの電池容量が大型化していることです。

 欧米のプレミアムモデルでは満充電での航続距離が長距離化していることもあり、90kWhから100kWhなどの大容量タイプを採用しているケースが珍しくありません。電池容量が大きくなれば、同じ出力で充電しても充電時間が長くなるのは当然です。

 例えば、レクサスディーラーがこれから順次配備する三相交流電源で入力し直流出力50kWだと、急速充電の基本ルールである1回30分ルールで、50kW×0.5時間(h)=25kWhが単純計算での充電量になります。そのため、RZ450e(71.4kWh)では出力50kW急速充電で30分間を3回分しないと、ほぼゼロの状態から満充電になりません。

 ただし、リチウムイオン電池の特性、安全性、劣化に対する考慮などから、電池に大きな負荷がかかる急速充電ではEVそれぞれの電池容量の80%を超えたあたりから電流を一気に絞り、出力を抑制する制御がはたらきます。交流出力3kWから6kW程度の普通充電では、このような制御はとくに強調されていません。

 こうしたことから、レクサスを含めて自動車メーカー各社は「EV充電の基本は自宅での普通充電」という、基礎充電を重視した考え方の周知を進めているところです。

 一方で、経路充電については急速充電が主流であるため、ユーザーが時間的に十分な余裕を持った計画を基に移動することが重要です。

 そのうえで、経路充電をより効率的に行えるようにする方法としては、急速充電器のさらなる高出力化が考えられます。ただし、現行の法規制では、最大電圧は450Vであるため、大電流に対応する充電ケーブルへの対応で難しい点があります。

 とくに発熱に対応するため、ケーブル内を液体で冷却する方法がありますが、そうなるとケーブルがかなり太くなりユーザーは取り回しが大変です。そのため、急速充電器メーカー各社の関係者は「当面は一時的にブーストモードで電流量を増やして最大150kWとするモデルが国内では最上級になる」という見解を示しています。

 さらには、急速充電器の設置事業者にとっては、超高出力型急速充電器は導入コストと電気代もかなり高くなることで、事業性を維持することも大変です。

 そのほかの充電関連技術では、走行中に一定区間でパンタグラフなどの機器を使う「接触充電」や、電磁誘導による「非接触充電」の研究開発が地道に進んでいるものの、国内での量産の見通しが立っていないのがEVの充電インフラの現状なのです。

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日産の新型軽EV「サクラ」

Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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