ホンダが新「MEV-VAN」の実車初公開! 画期的な内装の反響は? すぐに電池交換で「1日100km超走行」を想定

ベース車であるN-VANとは何が違う?

 ベース車であるN-VANは、ホンダの軽商用バンとして2018年に登場。ホンダの軽自動車「Nシリーズ」のN-BOXのシャシやパワートレインをベースに商用車に最適化して開発。また特徴として、軽商用車として初の助手席側のセンターピラーを廃したモデルでもあります。

 そんなN-VANですが、今回のMEV-VAN Conceptとはどのような違いがあるのでしょうか。開発を担当した本田技術研究所先進パワーユニット・エネルギー研究所の小野浩一氏は次のように話を伺いました。

―― MEV-VANのコンセプトや想定される使用状況などを教えてください。

 今回出展したMEV-VAN は着脱式バッテリーMPPによって軽バンを走らせるためのスタディモデルになります。

 MEV-VAN が目指すところはガソリン軽商用車の代替ではなく、いわゆる「ラストワンマイル」需要にこたえるもので、1日100km超の配送を想定しています。

 フル充電でスタートし午前中の配送を終えたところで営業所に戻ってバッテリーを交換。お昼の休憩をはさんで午後の配送に出かけるというような使用です。

 近い範囲にエリアをしぼった配送などを想定しているので、必要最小限の航続距離と動力性能になっています。ホンダが2024年春に発売する「新型軽EV」や日産「サクラ」などの軽EVとのすみ分けもできると考えています。

―― ベースとなるガソリン車のN-VANとは何が異なりますか。

 MEV-VAN はN-VANを改造して作った、コンバートEVのコンセプトモデルです。

 エンジンを下ろした部分にモーターを搭載し、元々は燃料タンクがあった床下部分にバッテリーユニットを搭載し、着脱式バッテリーMPPを8個収めています。

 また、クルマの状態をモニターするためのタブレットを付けています。

 大きな荷物も積みやすい大開口部を実現した助手席側のセンターピラーレス(ドアインピラー構造)などは変更ありません。

――室内高ついてはいかがでしょうか。

 N-VANの大きな特長である荷室高1365mmは変更ありません。ただし、床下にバッテリーパックを収めている関係で最低地上高だけが少し低くなっています。

―― 最大積載量に変化はありますか。

 N-VANの最大積載量は軽バンとしては一般的な350kgですが、MEV-VANではバッテリーパックが約80kgになるため、最大積載量は250kgとしています。

床下にバッテリーを8個搭載する「MEV-VAN Concept」(撮影:加藤博人)
床下にバッテリーを8個搭載する「MEV-VAN Concept」(撮影:加藤博人)

―― 8個のバッテリーは同じように減っていくのでしょうか。

 8本同時に減っていきます。8個のバッテリーパックをフル充電するには約5時間を必要とします。

 またバッテリーを入れ替えるときも8個が同じ充電量であることが必要になり、個々のバッテリーパックに電圧差があるとうまく作動しない仕様になっていますが、フル充電じゃなくても8個が同じ残量であれば問題ありません。

―― 来場者の方々からの反応はいかがですか。

「最高速度が約70km/hで満充電からの航続距離が75km位です」とお伝えすると、「それでは高速道路を走れませんね」、「長距離は無理ですね」という反応を最初に頂きます。

 しかし、私たちが目指すところのラストワンマイル需要や開発のコンセプト、他の軽EVなどとの違いやすみ分けについてご説明すると、ご理解いただけるようです。

※ ※ ※

 なお、ホンダは2024年春にN-VANをベースにした「新型軽商用EV」の発売を公表していますが、こちらの新型軽商用EVは従来通りのシャシにバッテリーを固定搭載する方式となり、今回のMEV-VAN Conceptとは全く異なるEVです。

 現在のところ、MEV-VAN Conceptの実用化や発売予定はないとのことですが、着脱式バッテリーの採用で充電に時間を要さないことはもちろん、既存の軽バンからEVへのコンバートが可能という点でも実用化への期待が大きく高まりそうです。

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ホンダ N-VAN
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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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