大雪時の「安心感」ハンパない!? 冬こそ履くべき「冬タイヤ」の実力は? 北国で人気「BLIZZAK VRX3」を北海道で試す!
ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3」に新たにSUV向けサイズが追加。その実力をさっそく北海道の公道で体験してみました。
「ブリザック VRX3」のSUVサイズを北海道の公道で試す!
降雪地で条件の厳しい地域であるほど高い装着率を誇るという、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK(ブリザック)」。2021年に登場した最新版「VRX3(ヴイアールエックススリー)」に、新たにSUV向けサイズが加わりました。
その走りを確かめるため、いざ北海道へ。北海道にはブリヂストンが誇る広大なテストコースもあるのですが、今回はあえて公道のみを走って、リアルなシチュエーションではどうなのかを体感してきました。
VRX3は、これまでのブリザックを超える氷上性能に加えて、ライフや効き持ち性能を向上させた「新次元のプレミアムブリザック」を掲げています。
優れた諸性能を誇る中でも、すべりの原因である水膜に対して、吸水力を高めることでより強力に水膜を除去する「フレキシブル発泡ゴム」や、水をすばやく溝へ流して逆流を抑えながら、接地面を増やした新トレッドパターンの採用などにより、従来品に対して氷上ブレーキ性能がじつに20%も向上しているのが最大の特徴です。
当日は旭川市内から約45kmの距離にある旭岳へと、まずトヨタのコンパクトSUV「ヤリスクロス」に乗って向かいました。
タイヤサイズは既存の205/65R16です。外気温はちょうど0度ぐらい。下がすでに凍っている状態の路面に昨晩降った雪が重なり、市街地はかなり滑りやすい状況となっているのは歩いてみても明らかでした。
そんな滑りやすい路面ながら、ヤリスクロスは軽くアクセルを踏んだ瞬間からスルスルと空転することもなく走り出します。
その感覚が従来製品とは別物で、試しにわざとラフにアクセルを踏んでみたり、赤信号で止まろうと強めにブレーキを踏んでみたりしたときも、「こんなに!?」と思わずにはいられないぐらいのグリップが感じられます。
とくにブレーキングでABSが作動したときの、路面に食いつきながらきめ細かくABSが作動する感覚は未知なるもの。
さすが「20%」の向上はダテではありません。大げさに表現すると、タイヤのソフトな踏面がしなやかに路面を包み込むような感覚すらあります。
さらには、ところどころにあった舗装がむき出た箇所や、雪が溶けてウェット路面状態になった箇所でも、静粛性にも優れウェットグリップも高そうなことがうかがえました。
幹線道路から脇道に入り旭岳が近づくと、状況は一変。圧雪が主体の路面となりました。
段取りとしてはいったん山頂まで上り、発着場でメルセデス・ベンツ「GLC」、トヨタ「ハリアー」、アウディ「Q5」の順でふもとまでを往復する片道約14kmの同じコースで乗り比べました。
頂上付近の気温はマイナス7度ほど。こちらの3台には新設のSUV向けサイズが装着されていました。
VRX3は前身の「VRX2」に対して氷上性能と背反する雪上性能を高レベルで維持したことをアピールしています。
ドライブすると雪上でのハンドリングはややマイルドな印象で、操舵に対してキビキビとした感覚ではなく、おだやかについてくる印象です。
そのうえで、ハリアーとヤリスクロスはあるところからリアがやや巻き込みがちになる傾向が見受けられたのですが、それは車両自体の特性によるものでしょう。
むしろヤリスクロスはその特性に加えて軽いおかげでコントロールしやすく、楽しく走れました。
写真の路面状況ですと、言っちゃ悪いですがブリヂストンやヨコハマといったメジャーメーカーのタイヤでなくともオールシーズンタイヤでもそこそこ走れますね。
テスト走行するのであれば極低温の地域だけではなく、実生活で遭遇する様々な路面で試験して欲しい。
日本海側の豪雪地帯(日中の寒暖の差が大きく湿った雪/踏み固められやすく白い氷になる/滑りやすい溶けかかった圧雪/通勤帰宅時に厄介なそろばん道路/路肩が傾斜して横滑りし易い/氷の轍だらけ)
奥羽山脈の豪雪地帯(青森県酸ヶ湯。1時間に20cmくらい平気で積もる除雪の追い付かないような地帯での深雪をチェーン無しの4WDで難なく走行できるか)
太平洋側内陸部の圧雪(八幡平市~滝沢市付近。おそらく豪雪地帯の非ではない怖さを誇るカーリング場並の摩擦係数が低いアイスバーン。発進しても空転。スピード出せない。すぐ止まれない。ブレーキ踏むと傾斜方向に斜めに滑っていく。)
太平洋側北部沿岸のブラックアイスバーン(濡れているように見えて薄い氷の膜で凍っているが、表面がタイヤの摩擦/熱で溶けやすく滑り安さではダントツ。ハンドル切っても真っ直ぐ進む)
この記事の北海道の旭川のような極低温地帯(パウダースノー/マイナス30度まで下がる/踏み固められても表面が剥離/砕けやすい圧雪路面)
特に雪が多い割に昼夜で±5~10度の寒暖差がある地域では、踏み固められる→溶ける→凍って圧雪が氷になる→表面が溶けた氷→チェーンで凸凹になる。しかも轍の深さが10cmを超えることもザラにある。接地面積が30%以下で滑りやすいため4WDでも真っ直ぐに走れない。
というような雪が多い割に半端に気温が上下する地方では、除雪で路肩に寄せられた雪で道路が狭くなり、路肩が高く、センターライン付近は低いというような断面がすり鉢状になるため、横滑りによりすれ違い時の接触事故が多く、平面の路面に合わせたタイヤの設計では対応できない道路状況が日常的に発生する。
更に、除雪が追いつかないため、融雪剤を中途半端なタイミングで撒くと、ザラメ(砂糖)状態ならまだしも片栗粉のような状態になり、ハンドルを取られやすく危険。前後のタイヤが左右に振られやすい。
他には真横から強烈な地吹雪を受けつつ、防風柵(防雪柵)の切れ目で急に横から押されるとか、横方向の滑りにも強いタイヤが欲しいと思うこともあり。
真冬も含めて年中、東北~新潟付近まで彼方此方行く身としては、タイヤの性能試験って平面の滑りやすい道路での走行テストが中心で、プロドライバーでも嫌がるような劣悪な立体的雪道には応えてもらっていないような気がします。
もう、こうなると、バギー用のゴツゴツしたタイヤで出っ張りにサイプが入ったタイヤでも無ければスタック必至ですね。去年の年末の記録的な大雪からもうすぐ1年。これからまた大雪の予報が出ていますし、もう少し深雪でも走れるタイヤの登場を期待します。