「手放し運転」も進化中! クルマの自動運転、その現在地は? 産官学連携「国家プロジェクト」SIP-adusの試乗会で実体験

「ハンズフリー運転」が進化 「自動運転」国内での今後の展開は

 自動運転の研究開発は、カメラによる画像認識、ミリ波レーザーやライダーによる物体検知、様々なデータを高速で処理するためのシステムとそれに使う演算能力が高い半導体、そして走行するための高精度三次元地図など、これまで自動車産業では扱われる機会が比較的に少なかった分野が満載でした。

 SIP-adusプログラム・ディレクターの葛巻清吾氏は「(2014年当時)自動技術の競争で日本は欧米に対して数周遅れだった」とSIP-adus立ち上げ時を振り返ります。

 そんな厳しい環境下で始まったSIP-adusですが、第1期(2014年6月から2019年3月)には、自動運転車が安全に走るために必要な高精度三次元地図「ダイナミックマップ」を運用する企業の設立に漕ぎ着けました。

SIP-adus試乗会の様子
SIP-adus試乗会の様子

 また、第1期終了に1年先んじて始まった第2期(2018年4月から2023年3月)は、第1期で進めてきた国連を舞台とする国際強調の成果が現れます。

 2020年4月には、道路交通省と道路運送車両法の一部が改正されました。

 これにより、運転の主体が運転者からクルマのシステムとなる自動運転レベル3を世界で始めて実装した「ホンダセンシングエリート」搭載の「レジェンド」量産モデルがホンダから登場しています。

 また、トヨタが「Teammate」(チームメイト)という考え方のもと、「MIRAI」とレクサス「LS500h」でダイナミックマップを活用した高度な自動運転レベル2を実装しています。

 今回、このシステムを搭載したMIRAIを約1年ぶりに試乗しましたが、両手を離して走行できるハンズフリーの条件が、以前より圧倒的に増えていることを確認できました。

 都内の首都高での渋滞中から中低速走行までハンズフリー走行できることに驚きました。こうしたソフトウエアは、クルマの通信機能(OTA:On The Air)で更新できるといいます。

 その他、ホンダは2020年代半ばに東京都内を皮切りに日本市場で導入予定の、米GMクルーズとの共同開発プロジェクト用の車両を展示しました。

 ホンダ関係者は「日本市場向けの研究開発を進めており、まずは都内のタクシー事業者と連携し、そこから今後の事業展開を考えていきたい」と開発の実情について触れました。

 今回、SIP-adus試乗会を通じて、自動運転は今後、乗用車(オーナーカー)ではレベル2(特定条件下での自動運転機能)とレベル3(条件付自動運転)のそれぞれで、またタクシーやバスなどのサービスカーでは使用地域など条件を限定したレベル4(特定条件下における完全自動運転)で、それぞれ普及が並行して進んでいくことを再確認しました。

 なお、SIP-adus第2期は2022年度(2023年3月)で終了していますが、2023年度からは自動運転の含めたモビリティ全体のデータ活用を進める「スマートモビリティプラットフォームの構築」という分野での議論が始まる予定です。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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