最近のクルマ「グリル」デカすぎ!? 威圧的「フロントマスク」傾向どこから始まった? きっかけは約50年も前!? 「今後」はどうなるのか

クルマの「顔」は、文字通りフロントマスクです。いま販売台数の中核は背の高いミニバンやSUVで、ボディの拡大傾向にともないフロントマスクも大きくなっているせいか、大グリルのクルマが目立ちます。今回は、「グリル」の簡単な歴史を紹介し、将来像を探っていきます。

大きな「フロントグリル」増加中? この流れはどこから

 文字通りクルマの顔となるフロントマスクですが、その中心に位置するグリルが大きなクルマが増えていると思う方もいるでしょう。

 2022年現在、販売台数の中核となっているのはミニバンやSUVです。ボディ形状が縦方向に大きく、自然とフロントマスクの比率が大きなクルマが増えています。そんな顔に釣り合わせようと、大きなフロントグリルを持つクルマも多いように感じます。

 今回は、そんなフロントグリルの歴史を振り返り、将来像はどうなっていくのか考察します。

モデルチェンジを重ねるたびにグリルが大きくなるトヨタ「アルファード」
モデルチェンジを重ねるたびにグリルが大きくなるトヨタ「アルファード」

 クルマのフロントグリルは、もともとクルマのエンジンを冷却させるための機能部品である「ラジエター」を保護する役割としてスタートしています。

 その後歴史を重ねるごとに、各メーカー独自のデザインを競い合うようになり、その形状も大きく変化していきました。

 そのため現在では、グリルは必ずしも機能部品とはいえないものとなってきました。

 せいぜいラジエーターを大きなごみから守ったり、ミリ波レーダーをマウントしたりする程度の機能は求められていますが、ラジエーターを冷やすのに十分な空気を導入する開口面積さえあれば、機能を十分に満たしているといえます。

 しかもラジエーターを冷やす空気は、バンパー下部の「ロアグリル」で十分な量が確保されている場合もあるために、もはやラジエーターグリル(フロントグリル)が絶対に必要という訳でもないのです。

 とはいえ、たとえ機能的には不要であったとしても、マイナーチェンジのたびに変更されたり、グレードによって造り分けられたりするなど、フロントグリルの形状は丁寧に取り扱われています。

 これも、グリルが最も目に付きやすい部分にあることや、クルマの商品性を左右する証だからと考えられます。

 デザインとしては、メーカーや車種を示すエンブレムが取り付けられたり、メーカー統一の形状にデザインされたり、格子やハニカムといった形状、メッキやボディ同色、艶消し黒などの色合いが組み合わされることが多いようです。

 一方で、グリルを無くしてすっきりとしたフロントマスクとした、「グリルレスデザイン」を採用するクルマもあります。

 海外勢では、BMWのキドニーグリルやアウディのシングルフレームグリル、アルファロメオの楯形状など、メーカーを象徴するデザインとして代々受け継がれています。

 いずれにせよ、フロントグリルは空気を通す機能を満たしながら、商品性を表す重要なアイコンになっているといえます。

始まりは1974年から?

 グリルの大きさは、開口部の面積が十分あれば機能を満たしていると書きましたが、日本の自動車市場の歴史を調べると、少なくとも日本国内では大きなフロントグリルが好まれる傾向があります。

 日本を代表する高級車であるトヨタ「クラウン」でみてみましょう。1974年に登場した5代目クラウンは、約5年間にわたるモデルサイクル中に二回のマイナーチェンジを受けていますが、マイナーチェンジのたびにフロントグリルが大型化されました。

 先代の4代目クラウンは斬新なデザインを特徴としていて、高級車を求める保守層からは必ずしも支持を集めた訳ではありませんでした。

 当時排出ガス規制が強化されていた時期にフルモデルチェンジを受けたクラウンは、エンジンルームを大きくとりつつ、盛り上がったエンジンフードとフロントグリルを一体化したデザインに変化していきました。

 その後のマイナーチェンジでグリルを拡大していったのは、エンジンの吸気効率を高め、排ガス規制に対応するという理由もあったかもしれませんが、当時の高級車のお手本であったアメリカ車のイメージを年々取り入れたことが大きかったと思われます。

 その結果「威風堂々としたクラウンらしさ」の具現にもつながり、以後のクラウンのアイコンになっていきました。

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