最近のクルマ「グリル」デカすぎ!? 威圧的「フロントマスク」傾向どこから始まった? きっかけは約50年も前!? 「今後」はどうなるのか

日産「エルグランド」VSトヨタ「アルファード」!勝ったのは?

 フロントグリルの大型化に関連し、のちに大きな出来事が起こります。

 1997年、日産は「キャラバンエルグランド/ホーミーエルグランド」を登場させます。

自動車評論家に「獅子舞」「神社仏閣」と呼ばせた日産初代「エルグランド」
自動車評論家に「獅子舞」「神社仏閣」と呼ばせた日産初代「エルグランド」

 大型フロントグリルと二段に分割されているように見える大型ヘッドライトのフロントマスクは、当時の自動車評論家に「獅子舞」「神社仏閣」と呼ばせましたが、クルマとしては大ヒットします。

 1995年、すでにトヨタはLクラスミニバンとして「グランビア」を登場させていましたが、細く横長のヘッドライトとフロントグリルの組み合わせが嫌われてか、エルグランドに大敗を喫しました。

 その後、マイナーチェンジでヘッドライトとフロントグリルを拡大したり、「ハイエースレジアス/グランドハイエース/ツーリングハイエース」と包囲網を築きましたが、成功には至らず、アルファードへの置き換えまで待たなければなりませんでした。

 2002年に登場した「アルファード」は、グランビア系列を一新してエンジン横置きのFWD/4WDモデルとして登場しました。

 ヘッドライトとフロントグリルはさらに大型化し、ボディサイズと相まって威圧感すら感じさせつつも、低床化による乗降性の良さも得たのです。

 また、グリルとは無関係なことながら、V型6気筒3000ccエンジンに加えて4気筒2400ccエンジンを搭載する安価で燃費が悪くないグレードを用意したことも功を奏しました。

 エルグランドも、2003年にフルモデルチェンジを実施しました。

 人気を得た初代モデルを基本としながら、有名デザイナーによる熟成かつ均整の取れたデザインが特徴で、フロントグリルやヘッドライトは大型ながらすっきりした印象になりました。

 デザインとは難しいもので、市場はすっきりとしたエルグランドよりも威圧感のアルファードを選んだようです。

 もちろん、エルグランドはデザイン以外にも不都合な要素がありました。

 エンジンはハイパワーなV型6気筒3500ccエンジンのみとし、まもなく発生した急騰する燃料価格問題への対応も後手に回ってしまいました。

 2004年に急遽追加したV型6気筒2500ccエンジンは、実際にはそれほど燃費が良くないなど、いろいろと失策が重なります。

 エルグランドへの対策が功を奏したアルファードに対して、エルグランドは企画が裏目に出て不利になっていくのでした。

 いまや、アルファードや、のちに追加された兄弟車「ヴェルファイア」に対して惨敗となってしまっているエルグランドですが、グランビアで喫した執念がトヨタのメーカーとしての原動力になったのかもしれません。

 これにはグリルも大きく関係していたことでしょう。

グリルレス・グリルの小型化はなかなか受け入れられない

 1989年に登場した日産「インフィニティQ45」は、新時代の高級車としてグリルを持たず、七宝焼きのエンブレムを持ったフロントマスクで登場しました。

 当時すでにグリルレスの車はあったものの、高級車では少なく、少し前に登場していたホンダ「レジェンド」もマイナーチェンジでメッキグリルを搭載しました。

 一方で、インフィニティQ45とボディを共用する国内専用の高級車「プレジデント」は、大きなメッキグリルが装着されており、またインフィニティQ45にはすぐにアフターパーツのダミーグリルが登場するありさまでした。

 結局、インフィニティQ45自体もマイナーチェンジでフロントグリルを装着し、当初のコンセプトは崩れたのでした。

 この事実があったにもかかわらず、2003年にも日産は同様の出来事を起こしました。

 C25型「セレナ」です。

 セレナは1999年にC24型にフルモデルチェンジ、トヨタ「ノア」に対して一足早くFWD化しました。

 中でもエアロパーツを装着した「ハイウェイスター」グレードが人気で、鈍重なデザインになりがちなミニバンにシャープなイメージを与えることに成功していました。

 そしてノア/ヴォクシー登場後の2005年、セレナはC25型にフルモデルチェンジされるのですが、このときハイウェイスターグレードを廃止、小ぶりなメッキグリルのグレードと、ボディ共色ですっきりした印象のグリルのグレードの2本立てとなりました。

 このデザインが不評で、当時営業現場からハイウェイスターグレードの復活を望む声が強く寄せられました。

 そして2006年にハイウェイスターグレードを再設定、この時にハイウェイスターグレードは太い横桟を持つメッキグリルを装着し、セレナの人気を復活させたのでした。

 このように、「フロントグリルが小型化する変更は失策や失敗につながり」、「フロントグリルを大型化する変更が成功する」傾向にあるとしか言えない事実があるのです。

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