最近のクルマ「グリル」デカすぎ!? 威圧的「フロントマスク」傾向どこから始まった? きっかけは約50年も前!? 「今後」はどうなるのか

大きなグリルを求める気持ち、どこから?

「クルマは外部から乗員を守る鎧のようなもの」という言葉を聞いたことがあります。

 快適な車内を実現する要が、「丈夫そう」、あるいは「いかついスタイルのボディ」だとすると、大型SUVブームや大型ミニバンブームは十分理解でき、小さなクルマでも大型グリルで武装したいという欲求が働くのかもしれません。

 特に小柄な女性やお子さんを連れた女性からすると、外敵から身を守るためにはそんないかついスタイルのクルマに乗ることで、街中をクルマで走るストレスが軽減されるのかもしれません。

 心の要求には、「デザイナー渾身の優雅なスタイル」や、「自動車評論家が褒めちぎる美しいスタイル」も、無力なのかもしれません。

グリルの必要性が少ないEVだが、大型キドニーグリルを装備したBMW「IX」
グリルの必要性が少ないEVだが、大型キドニーグリルを装備したBMW「IX」

グリルの必要性が低い「EV」、それでもやっぱり大型グリル装備するクルマも

 現在、各メーカーがバッテリーEVを展開しつつあります。

 バッテリーEVの電力制御装置は、エンジンほどには高温になりません。

 そのため、ラジエーターこそあるものの必要な風量はエンジン車ほどではありません。

 この影響もあり、EVは各車ともグリルを小型化したり、グリルはあっても奥にグリルシャッターを設け、実際の風量を抑制しているものが多くなっています。

 特にテスラ各車はこの例に倣い、グリルレスのスタイルを採用、近未来を感じさせるスタイルを実現しています。

 しかしBMWの「iX」シリーズは、エンジン車同様の大型キドニーグリルを採用しています。

 そしてグリルの実際の開口部は非常に小さく、キドニーグリルの部分にはグリルのように見える模様が描かれています。

 ラジエーターグリルをわざわざ装着し、穴が開いているよう見せているとなると、もはや「機能を実現したグリル」ではなく「クルマのスタイルを演出するパーツ」となっているといえます。

 すなわち、電動化時代のグリルは、看板になっていくことを示唆しています。

グリルの大型化、今後はどうなっていく?

 2000年代半ばから、フォルクスワーゲンとアウディはグリルを縦方向に長くした「シングルフレームグリル」を展開しました。

 このグリルは同社のアイデンティティとして各車に採用され、その後高級車のデザインとしてアウディブランドのみの展開となりました。

 ところがこのシングルフレームグリルは世界的な流行となり、国産車では2012年に発売されたS210型クラウンが採用されました。

 その後も話題に事欠かないクラウンですが、当時としては大胆なスタイルとして話題になったものです。

 シングルフレームグリルは、現在もアウディが継続して採用していますが、天地方向の長さはずいぶんと控えめになりました。

 こうなると、流行としては終わりです。

 近年では、LEDヘッドライトの採用に伴うヘッドライトの薄型化と相まって、横に長く天地方向に短いラジエーターグリルが流行りつつあります。

 夏に発表された新型クラウンシリーズ、シトロエン「C5」、フェラーリ「プロサングエ」など、いずれも薄く横長のグリルを採用しています。

 クルマが電動化されても冷却系統はなくなりませんし、クーラーのコンデンサーもありますから、車の前方には通風孔が必ず装着されるでしょう。

 そのため、車の前方には何らかの穴が開くことになりますから、グリルは残るといえます。

 グリルは多くの人の目に触れ、スタイルの上でも重要なパーツとなりますから、小型化する可能性は極めて低いといえます。

 なかには「デザインのためのデザイン」と感じさせるグリルも多数見受けられますが、この傾向はしばらく続くでしょう。

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