最近のクルマ「グリル」デカすぎ!? 威圧的「フロントマスク」傾向どこから始まった? きっかけは約50年も前!? 「今後」はどうなるのか

グリルの大型化は、軽自動車にも

 前ページでは、グリル大型化の歴史と、グリル大型化が販売台数や車種の成否までをも決定していたかもしれないということを紹介しました。

 しかし、2000年代頃までの自動車メーカーは、グリルデザインの重要性に気付いていなかったかのような節があります。

フロントマスクはほとんどグリルな軽自動車スズキ「スペーシア カスタムZ」
フロントマスクはほとんどグリルな軽自動車スズキ「スペーシア カスタムZ」

 2022年現在、トールタイプの軽乗用車市場ではホンダ「N-BOX」が販売台数の面で成功していますが、N-BOXが登場する前はダイハツ「タント」の牙城でした。

 タントは、ムーヴの天井を高くしたうえ、左側センターピラーをスライドドアに内蔵した、ピラーレスデザインで子育て世代を中心に絶大な人気を博していました。

 スズキは、タントの対抗車種として2008年に「パレット」を発売しました。

 タントの左後席スライドドアに対して、パレットはセンターピラーを残しつつ両側スライドドアとしました。

 パレットも「ママのための子育てトールワゴン」というキャラクターで登場しましたが、結局タントの後塵を拝したままでした。

 そこでスズキは、2013年のフルモデルチェンジを機に車名を「スペーシア」に変更して反撃に出ます。

 基本コンセプトはそのままに、当時の軽乗用車が必ずといってよいほど設定していた「カスタム」グレードを追加し、「ママ向け」のイメージを薄くしていきます。

 そして2016年、フロントグリルを大型化した「スペーシア カスタムZ」シリーズを追加し、ついに「フロントマスクはほとんどグリル」とでもいうようなフロントマスクを得ました。

 当時のタントカスタムは、どちらかと言うと横長で安定感を演出したフロントグリルを採用していました。

 これに対してスペーシアは、標準モデル、横長グリルのカスタム、縦にも大きなグリルのカスタムZでタントに対抗し、スペーシアはすでに好調だったN-BOXに次ぐ販売台数を記録するようになり、それまでライバルだったタントに勝利したのでした。

 同一メーカー内でも、逆転の例があります。

 トヨタの「ノア」と「ヴォクシー」は姉妹車ですが、2014年に登場した3代目モデルまでは、どちらかと言うとエッジが効いたデザインのヴォクシーが人気で、おとなしい印象のノアはどちらかというと日陰の存在でした。

 他車で言うところの標準グレードをノア、カスタムグレードをヴォクシーとした結果で、カスタムグレードの方が人気を得るという点では、ノア/ヴォクシーも変わりはないことの現れでした。

 しかし、2017年のマイナーチェンジでノアはフロントマスクを大幅に変更、大型のグリルを前面に押し出したデザインになりました。

 この変更が功を奏してノアの人気は上昇し、ヴォクシーと並ぶ好評を得ていきます。

 現在、トヨタ社内の方針で姉妹車の削減が行われていますが、今年初めのフルモデルチェンジではノアもヴォクシーも統合されず、双方人気のまま現在に至っています。

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