「家族の相棒」が超進化! トヨタの新型ミニバン「シエンタ」売れない理由が見つからない!?【試乗記】
トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」がフルモデルチェンジし、3代目となる新型が発売されました。内外装のデザインや使い勝手、走行性能、安全装備など、全方位で進化した新型シエンタにさっそく試乗しました。
3代目シエンタは愛嬌のあるデザインに
トヨタの最小3列シートミニバン「シエンタ」は初代モデルが2003年に登場。愛嬌のある丸いヘッドランプが特徴でしたが2010年にその座を「パッソセッテ」に譲って生産終了と思いきや、パッソセッテの売れ行き不調により2011年に復活するという珍しい歴史を持った一台です。
2代目は2015年に登場。スポーティなデザインに加えてCMにサッカー選手(J・ロドリゲス)を起用するなど、スポーティでアクティブなキャラクターが特徴でした。
そして2022年、3代目となる新型が登場。歴代モデルの特徴である「5ナンバーサイズ」、「3列シート」はそのままに、トヨタのクルマづくりの構造改革「TNGA」をフル活用して全面刷新。シンプルながらも愛着が湧くようなクルマに仕上がっています。
エクステリアはスポーティでスタイリッシュさをアピールしていた先代に対して、ボクシーだけど優しさを感じる「シカクマル」をモチーフにしたデザインです。
それだけだとビジネスライクになってしまいますが、前後サイドのプロテクションモールや愛嬌のあるフロントマスクなどにより、ツール感を上手く演出しています。
ネット界隈ではフランスの某車に似ているという意見もありますが、筆者(山本シンヤ)は初代「ヴィッツ」の派生モデルのひとつ「ファンカーゴ」のイメージを現代流に解釈したデザインに感じました。
インテリアもエクステリア同様に「シカクマル」がモチーフ。デザイン優先だった先代と真逆で、シンプルかつ機能的な空間に仕上がっています。
ソフトパットではなくファブリック巻きを採用したインパネや、ソファーのようなざっくりとした風合いの生地を採用したシートなど、豪華さよりリビングのような居心地の良さを重視したコーディネイトに加えて、「これでもか!」というくらいの充実した収納スペースは嬉しいポイントです。
ただ、気になるところもいくつかあり、1列目シートは、高い位置に設定されたドアのプルハンドルが意外と使い勝手が悪いこと(咄嗟のときにパワーウィンドウ部に手がいってしまう)やインパネ右下に追いやられた電動スライドドアスイッチ。
2列目シートは、運転席背面のみに設置されたUSB電源付シートバックスマホポケット(助手席には未装着)や、子供は手が届きにくい、スライドドア下部に置かれたボトルホルダー(3名乗車だけど2名分しかない)、スライドドアの関係でドアにアームレストが未装着(体が保持しにくい)などなど。
開発陣は「用品をたくさん揃えたのでうまく活用してほしい」と語っていますが、家族が「おっ、いいね!」と思うような痒いところに手が届くようなプラスαが欲しいと感じました。
ボディサイズは全長、ホイールベースともに先代から変更されていせんが、3列シート7人乗りはもっとも活用される2列目シートがシートスライド量のアップ(+80mm)を実現しており、足元スペースは大人でも余裕たっぷり。
加えて運転席より着座位置を高めたシアターレイアウト、さらには大きいグラスエリアなどにより開放感は高いです。
3列目の絶対的なスペースは先代と大きく変わりませんが、プラットフォーム変更で足を入れるスペースがしっかりと確保され、大人でも短時間の移動であれば実用に足りると思います。
新型シエンタでは、先代で追加された2列シート5人乗り仕様も用意されました。シートスライド機構はありませんが、2列目シートバックの最適化により、シートを畳むと超フラットな空間が生まれます。
実際に寝てみましたが、身長170cmの筆者は余裕。180cmから190cmの大人でも体を曲げることなく寝ることが可能です。
欲をいえば、取り外した2列目シートのヘッドレストが枕になるような用品があったりすると完璧ではないでしょうか。
全高は先代+20mmとなっていますが、これには大きな理由があります。子供が立てる室内高の実現に加えて、通学・通勤用自転車の定番であるブリヂストン・アルベルト(27インチ)を倒さず収納するために必要な数値だったそう。この辺りも「家族の相棒」として大事な性能のひとつといえるでしょう。
こんな人が選考委員じゃあ、トヨタ安泰だね!