新車が買えない! トヨタは半数のモデルが注文不可!? 納車遅延が及ぼす深刻な影響とは
EVは最大140万円の補助金が受けられない可能性も!?
新たな電気自動車として「ソルテラ」をラインナップに加えたスバルですが、同車も販売がストップしています。販売店に話を聞いてみました。
「ソルテラは、トヨタ『bZ4X』とあわせて、ハブボルトが緩む不具合が生じたことからリコールを届け出ました。この影響により、現時点(2022年7月下旬)では、ソルテラは受注を停止しています」
そうなると購入を希望する場合、補助金はどうなるのでしょうか。
「ソルテラの購入では、申請をおこなうと、経済産業省から85万円の補助金が交付されます。
都道府県や市区町村が独自に補助金を設定している場合もあり、例えば東京都は45万円、さらに足立区では10万円が交付されます。交付総額は計140万円です。
補助金を考えると、電気自動車は今が買い時ですが、登録を済ませないと申請できません。
つまり受注停止が解除され、注文を入れて生産され、登録してからの申請です。仮に明日受注が再開しても、登録できるのはおそらく来年でしょう」(スバル販売店)
ソルテラの納期を尋ねると「受注の停止前に注文されたお客さまの場合で、納車予定は11~12月でした」とのことです。つまり今後の注文では、2022年度の補助金に間に合わない可能性があります。
また「今は工場の生産も停止しているため、すでに注文されたお客さまの登録も遅れます。購入済みでも、今年度の補助金に間に合うかは微妙です」とのこと。
万が一、今年度の補助金に間に合わない時は、次年度に請求できますが、その予算や交付額は未定で、交付額が減る可能性もあります。
電気自動車は高価格で補助金の交付額も多く、その金額次第で損得勘定が大きく変わるため、購入時の経済的な負担が曖昧な商品だといえます。
このように、新車の受注が停止した理由は多岐にわたります。もっとも多いのは、半導体、ワイヤーハーネス、樹脂部品、塗料などの不足が納期を遅らせ、これがエスカレートして受注停止に至ったものです。
このほかにもソルテラやbZ4Xのようなリコールを伴う車両の不具合、ランドクルーザーなど販売計画に基づく根本的な車両の供給不足もあります。
それにしても、トヨタのように約半数の車種で受注が停止すると、ユーザーや市場に与える影響も大きいです。
今の新車需要は約80%が乗り替えに基づいています。乗っているクルマの車検期間満了が近付いたらそれを下取りに出して新車を購入する人が多く、新車の納期が延びると、使っている車両の車検期間が新車の納車前に満了するため車検を取り直す出費を要します。
そして新車が納車されないと下取りに出される車両も減り、中古車の流通台数も減少します。そのため需給バランスが変わって中古車価格が高くなるのです。
つまり、新車は買えず、さらに中古車は値上げして、すべてのクルマが購入しにくくなります。
この状態を考えると、古い車両の増税は直ちに廃止すべきです。納期が遅れると、新車を買いたくても購入できず、古いクルマを使い続けることになります。その結果として古いクルマに乗らざるを得なくなったユーザーの税額を増やすのは酷な話でしょう。
今は最初に登録されてから、ガソリンエンジン車は13年、ディーゼルエンジン車は11年を経過すると、自動車税や軽自動車税が増税されます。1.6リッターから2リッターの小型/普通乗用車は従来の1.4倍、軽自動車税は1.8倍に増えます。
自動車重量税も、ガソリンエンジン車の場合で13年を経過すると増税され、18年を経過した時点でも、2段階で税額が増えます。
増税の目的は「環境性能の優れた新車に乗り替えさせること」ですが、古いクルマのユーザーも、好んで使っているわけではありません。
年金で暮らしていたり、コロナ禍によって所得が減りながら、公共の交通機関が未発達な地域に住んでいるためにクルマを手放せないのです。
新型コロナウイルスと納期遅れも加わり、クルマを維持するために辛い思いをしているユーザーのことを考えると、増税は直ちに廃止して各種の税金も見直すべきでしょう。
そしてメーカーについては、日本の企業としてどの市場を重視するのか、その姿勢も問われています。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
この人はいつも、ランクルの受注停止は国内市場を軽視したせいだと言っているけど、需要が多い市場を優先するのは仕方ないんじゃないの?
メーカーだって慈善事業じゃないんだからさ。