「ハンドルが丸くない!?」D字型やU字型も! 異形ステアリングの存在理由は「見た目の差別化」だけじゃない?
日産車に多いD型ハンドルなど、丸くない異形なステアリングホイール形状のモデルが増えています。なぜでしょうか。
ハンドル形状はドライバーの視界や乗降性にも影響していた!?
クルマのハンドル(ステアリングホイール)は丸いものとは限りません。下側が削られた「D型」や「だ円」など、実は丸くない「異形」ハンドルも存在しています。
丸いハンドル形状をあえて変える理由はどこにあるのでしょうか。
自動車が世の中に登場してから現在に至るまで、変わらず装着されているハンドル。
しかし現在のハンドルには、さまざまな機能を持ったボタンなどが配置されているだけでなく、その形状も丸型以外のものが多く登場しています。
特に日産では、コンパクトカーの「ノート」からミニバンの「セレナ」、SUVの「エクストレイル」など、幅広い車種に、下側が水平形状となる異形のD型ハンドルを採用しています。
この異形ハンドル、レーシングカーなどには古くから採用されており、スタイリッシュな見た目となることは間違いないありませんが、それ以外の利点や採用の狙いはどんなところにあるのでしょうか?
日産自動車にD型ハンドルを採用した理由をたずねてみると、乗降性の良さを考慮しているとのこと。
確かにステアリングの下側が水平形状となることで、ドライバーの太ももとの距離を稼げることから、乗り降りする際にステアリングが邪魔になることが少なくなります。
特に着座位置の高いミニバン系などではその効果を実感することも多そうで、車内で運転席から後部座席などに移動するウォークスルー時にも、知らず知らずのうちにその恩恵に与っているケースもありそうですね。
ただその一方で、日産の車種の中でもD型ステアリングを採用していない車種も存在しています。
デビューが10年以上前の「マーチ」や「エルグランド」などであれば、旧世代のステアリング形状であることも不思議ではありませんが、軽自動車の「デイズ」や先日発表された軽EVの「サクラ」などは丸型のステアリングとなっています。
とくにサクラにおいては、SUVタイプのEVである「アリア」と共通のデザインモチーフを持ち、ハンドルもアリアと同じ2本スポーク形状のもの(一部グレードを除く)を採用しているにもかかわらず、アリアのようなD型ではなく、丸型ステアリングとなっているのです。
これについて日産自動車は、「軽自動車は初心者や運転に慣れていないユーザーが運転する機会も多く、丸型の方が違和感なく運転しやすいという声があるため」丸型ハンドルを採用しているとのこと。
確かにD型ハンドルは車庫入れなど、ステアリングを大きく回す際などに違和感を覚えることもあります。
運転に不慣れなユーザーにとっては、乗降性の向上よりも運転のしやすさを重視してくれるというのはありがたいところと言えるかもしれません。
ちなみに「GT-R」や、間もなく登場となる新型スポーツカー「フェアレディZ」においても、丸型ステアリングが採用されていますが、これに関しても繊細なステアリング操作や瞬間的にカウンターステアなどが求められるスポーツ走行を考慮してのことなのかもしれませんね。
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そして、もうひとつ特徴的なステアリングを採用しているメーカーとしては、フランスのプジョーが挙げられるでしょう。
こちらは下側だけでなく、上側も水平に近い形状になっただ円形に近いハンドルを採用しています。
このだ円ハンドルは「I-COCKPIT(アイコックピット)」と名付けられたプジョー独自の革新的なコックピットレイアウトのひとつです。
そもそものハンドル径を小径とすることで、今まで左右に大きく開いていたドライバーの腕をより自然な位置にする狙いがあるとのこと。
またハンドル上側も水平状態としたのは、ハンドルの前に位置するメーターの情報を、ハンドル越しに視認するのではなく、ハンドルの上側から視認する「ヘッドアップインストルメントパネル」とするため。
こうすることでハンドルを回した状態でメーターが遮られることもなく、運転中の視線移動を最小限にしてより運転に集中できるようにという配慮から、特徴的な形状となっているのです。
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長らく変化のなかったハンドル形状ですが、最近になって特徴的な形状を持つハンドルも多く登場するようになってきました。
先日発表されたレクサスのEV(電気自動車)専用モデル「RZ」では、操縦桿のような形状もオプション設定されました。
またテスラの「モデルS」と「モデルX」には、ヨークステアリングと呼ばれるU字型ハンドルが設定されています。
ハンドルの形状にも、転換期がやってきているのかもしれませんね。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
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