昭和のクルマ「キンコン音」今なぜ消えた!? 「速度警告装置」廃止された理由とは

1970年代から80年代にかけ、高速道路で時速100キロを少し超えてしまうと「キンコンキンコン…」とチャイム音が鳴りました。しかしその後の法改正で廃止されています。なぜでしょうか。

1975年に義務付けられ、1986年には廃止された「キンコン音」装置

 1980年代以前の古いクルマで高速道路を走行中「キンコンキンコン」と音が鳴っていたのを覚えていますか。
 
 あの「キンコン」という音はなぜ鳴っていたのでしょう。そして、なぜなくなってしまったのでしょうか。

時速100キロを超過すると「キンコン」音が鳴りだした時代のホンダ「プレリュード」(2代目・1982年)
時速100キロを超過すると「キンコン」音が鳴りだした時代のホンダ「プレリュード」(2代目・1982年)

「キンコン」という音は、速度警告装置の警報音です。

 普通自動車で時速約100キロ、軽自動車で約80キロを超えた際、注意喚起のために音で知らせるものでした。

 1970年代から1980年代初頭にかけての多くの国産車にとって、時速100キロ以上で走り続けるのは相当な負荷がかかるものでした。

 クルマの性能も現在より劣るため、ブレーキの制動距離ひとつを取ってみても現在より長く、スピードが出ていればさらに伸びます。

 高速道路や自動車専用道路を走行する時に運転席のシートベルトの装着が義務づけられたのは、1971年(昭和46年)です。

 衝突安全に関する技術開発は進められていましたが、実際にエアバッグといった先進安全技術が備わったクルマが多く公道を走るのはまだ先のことでした。

 そのようなことから、スピード超過は重大事故につながる恐れがあるとして、スピード超過を警告するために取り付けられました。

 法律上、その装置は「速度警報装置」と呼ばれ、1975年(昭和50年)4月に義務付けられました。

 このことは1974年(昭和49年)11月に交付された運輸省令第45号「道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令」に書かれています。

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 第四十六条に次の一項を加える。

 前項の規定により速度計百キロメートル毎時を超える速度を示す部分にその旨を黄色又は赤色で表示しなければならない自動車には、次の基準に適合する速度警報装置を備えなければならない。

1.当該自動車の速度計の指度が百キロメートル毎時を超えている場合に、その旨を運転者にブザ(原文まま)その他の装置により警報するものであること。

2.当該自動車の速度を調整する方法以外の方法によって、運転者において作動を解除することができない構造であること。

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 また、そのことを受け、自動車の適合検査を手掛ける自動車技術総合機構では、保安基準第46条第2項「速度警報装置の装備要件及び性能要件」で、装備化が保安基準に追加されました。

 車検整備の保安確認検査の際、スピードメーターの動きの確認と合わせて、音がしっかり鳴るかなどを確認していました。

 つまり、音が鳴ることを確認できなければ、車検に通らなかったのです。

 キンコンという音は、小型の鉄琴をスピードメーターの裏側に装着し、物理的に音を鳴らす車が多かったですが、1980年代に入ると電子ブザーや機械式チャイムを使用するような車が増えてきました。

 しかし当時を知る整備士によれば、クルマの構造などに詳しい人であれば、配線を外すなどして警告音が鳴らないようにすることも可能だったといいます。

 そして、1986年(昭和61年)3月に交付し、即日施行された運輸省令第3号「道路運送車両の保安基準の一部を改正する省令」により、キンコン音の義務付けが廃止されました。

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