昭和のクルマ「キンコン音」今なぜ消えた!? 「速度警告装置」廃止された理由とは

「キンコン音」は“ガイアツ”と眠気誘発の危険から廃止された!?

 速度警告装置が廃止された理由については、省令にもはっきりと記されていません。

 しかし以下のような理由が有力な説といわれています。

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1.速度警告装置が日本独自の規制だったため

2.居眠り運転を誘発してしまうため

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 まずひとつめから説明しましょう。

 速度警告装置は日本独自の規制でした。しかし、装置がついていないと車検に通らないのは輸入車も同様です。

 そのため、海外の自動車メーカーが日本でクルマを販売するためには、速度警告装置を取り付ける必要がありました。

 もともと日本車のほうが価格も安く燃費も良いうえ、国内で扱いやすいボディサイズであることから人気がありました。

 一方で1970年代から1980年代当時の多くの輸入車は、大きくて扱いづらいボディサイズの高級車が主流で、販売店も少ないことから、販売台数も伸びていませんでした。

 その上、日本の保安基準に適合するために速度警告装置を装着する余計なコストもかかります。

 当時輸入車のインポーター業務で出荷前点検(PDI:Pre-Delivery Inspection)に携わっていたNさんは、以下のように話します。

「私の勤め先で扱っていた当時の正規輸入車にも“速度警報装置”は取り付けられていました。

 モデルによってはブザー音のようなそっけない警告音が鳴るものもありましたが、のちに音質の良い日本製に交換しました。

 併せて、スピードメーターの時速100キロ以上の表示部分を赤色にする必要があったので、国内で扇状のシールを貼り付けたモデルもありました」

 1980年代は、日本車の海外における販売台数増加が急速に進んだ時期でもありました。

 海外(とくに米国)の自動車メーカーとしてはかたよった貿易摩擦を解消し、一層輸入車を販売しやすい環境を作りたかったため、手間とコストがかかる日本独自の規制を撤廃するように働きかけた(外圧をかけた)、というのがキンコン音廃止の最大の要因とされています。

1982年に登場したホンダ「プレリュード」(2代目)のメーターパネルも、時速100キロ以上の表示周囲には赤い色が加えられていた
1982年に登場したホンダ「プレリュード」(2代目)のメーターパネルも、時速100キロ以上の表示周囲には赤い色が加えられていた

※ ※ ※

 廃止されたもう一つの要因に「キンコン音が眠気を誘発してしまう」というものがあります。

 速度警告装置の音が鳴ったらスピードを落とす人もいれば、速度超過と知りながらも鳴らしたまま走り続ける人がいたのも事実です。

 キンコン音は時速100キロ(軽自動車は80キロ)を超えている間は、一定のリズムで鳴り続けます。

 その音をずっと聞き続けていると、だんだんと眠くなってきてしまう危険性も指摘されていました。

 スピード超過を警告して事故を防ぐために装着を義務化したものが、居眠り運転を誘発してしまうかもしれないという新たなリスクを生み出していたのです。

※ ※ ※

 昭和の高度経済成長もたらした好景気によって人々の生活が豊かになり、自家用車も一般家庭に普及していきました。

 クルマの普及とともに急増したスピード超過が原因の悲惨な交通事故を防ぐために、速度警告装置の取り付けが義務付けられた経緯があります。

 日本国内での事故を防ぐために義務付けられたものでしたが、日本でクルマの販売を増やしたい海外からの声などを受けて廃止に至りました。

 その後のさらなる技術開発により多くの安全装置が備わったクルマが普及し、いまでは交通事故の数も激減しています。

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