打倒「プリウス」を目指したホンダの「意地」で誕生!? ストイックすぎるハイブリッド車、初代「インサイト」とは
ホンダのハイブリッドセダン「インサイト」の生産が、2022年8月末に終了となると明らかになりました。初代は1999年に誕生し、トヨタ「プリウス」を凌駕する燃費性能を実現しました。そこで、ストイックなまでに燃費を追求した初代インサイトとはどんなクルマだったか、振り返ります。
あくなき燃費改善を追求したホンダ初代「インサイト」を振り返る
ホンダの現行モデルで、ハイブリッド専用のミドルクラスセダンである3代目「インサイト」が、2022年8月末をもって生産終了となることが明らかになりました。
初代インサイトはホンダ初のハイブリッド車として、1999年に発売されました。1997年に誕生した世界初の量産ハイブリッド車、トヨタ初代「プリウス」を上まわる燃費性能を目指して開発。とにかく低燃費を追求した設計は前代未聞のストイックさで、まさにホンダの「意地」といえました。
インサイトは一旦3代目で歴史に幕を下ろすことになりますが、この稀代の名車である初代インサイトはどんなクルマだったのか、振り返ります。
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初代インサイトは1999年11月に発売され、初代プリウスの28.0km/Lを凌駕する35.0km/L(10・15モード)と量産ガソリン車で世界最高燃費を達成したことで、センセーショナルなデビューを飾りました。
外観は3ドアハッチバッククーペで、全長3940mm×全幅1695mm×全高1355mmと非常にコンパクトに収まっていました。
デザインは徹底的に空力性能向上を目指したことから流線形の生粋のスポーツカーをイメージさせ、さらに空気の整流を目的にリアのフェンダーアーチをカバーするスパッツが取り付けられ、空気抵抗係数のCd値は当時としては驚異的な0.25を達成しました。
内装ではスピードやタコメーター、各種インフォメーションを表示できる高機能デジタルマルチメーターをコクピットに採用。燃費表示の切り換えやエアコンなどの操作スイッチ類をメーター近くに機能的に配置した、集中スイッチとするなど、先進的なデザインとなっていました。
また、後述する軽量化の一貫として2シーターとし、リアには比較的容量が大きい荷室が配置されました。
そして、初代インサイトのハイライトのひとつだったのが、オールアルミ製のモノコックシャシの採用です。
一般的なスチールを用いたモノコックシャシに対し、初代「NSX」に続いてアルミモノコックとし、大幅な軽量化を達成。
そのため、初代インサイトの生産はNSXのために建設された、栃木県塩谷郡にある「高根沢工場」でおこなわれました。
この高根沢工場は少量生産に特化しており、アルミモノコックのスポット溶接が可能な機械もNSX用に開発され、さらにアルミは電気抵抗が少なく熱伝導も良い素材のためスポット溶接には大電流が必要となったことから、専用の発電施設も併設されるなど、ある意味、初代インサイトはコストを度外視していたと想像できます。
ほかにも軽量化のためボディ外板の多くにアルミと樹脂が使われ、ブレーキはフロントにアルミキャリパー、リアにはアルフィンドラムブレーキを採用。ブレーキペダル、クラッチペダル(5速MT車)のアームにもアルミを採用し、 さらに燃料タンクは高密度ポリエチレンの樹脂製とするなどによって、モーターと走行用バッテリーを搭載しながらも車重はわずか820kg(MT車)を実現しました。
搭載されたパワーユニットは最高出力70馬力を発揮する新開発の1リッター直列3気筒エンジンと、13馬力のアシスト用モーターを搭載。トランスミッションは5速MTとCVTが設定されました。
このように燃費性能向上のための努力が結実して、初代インサイトは35.0km/Lという燃費を達成しましたが、2シーターというネガティブな要素が災いして販売は極端に低迷。また、2003年にはライバルのプリウスが2代目へモデルチェンジ。出力向上と同時に燃費は35.5km/L(10・15モード)を達成し、使い勝手も優れていたことから大ヒット作となりました。
そこで、初代インサイトは2004年の改良で36km/L(10・15モード)まで燃費向上が図り、燃費No.1のポジションを奪還しています。しかし、もはや販売面では2代目プリウスに太刀打ちできる状況ではなく、2006年に生産を終了。
その後、2009年に5ドアハッチバックボディで5人乗りとなった2代目インサイトが登場し、実用性が一気に向上してヒット作になりましたが、シャシやボディは一般的なスチール製となり、技術的には初代から後退してしまったといえるでしょう。
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