「24時間走りきるために…」 速さと耐久の課題に挑む! TOYOTAとSUBARUの飽くなき挑戦心とは
両チームが抱える富士24時間に向けた課題とは?
GR86が抱える課題は「熱」でした。
フロント開口部はNAエンジンに合わせて設計されているため、熱量が大きいターボエンジンの搭載によりクーリング性能はギリギリ。
3月の開幕戦は気温がそれほど高くなかったため問題は起きなかったようですが、5月の気温では厳しかったようです。
それに加えて、今回空力改善で床下を覆う形状のスポイラーを装着したことで熱の逃げ道がなくなってしまったことも原因でした。
ドライバーの豊田大輔選手にクルマの印象を聞いてみると次のように語ってくれました。
「着実に進化はしているものの、このクルマが持つポテンシャルをすべて活かしきれていません。
タイムは良かったですが『安定して楽にタイムを出せたのか?』といわれるとまだまだ、正直言うと完走できるか解らない状況です。
もちろん勝ちたいですが、今やっていることが将来に繋がることが目的なので、24時間までに間に合わせること、そこから先にやることを見極め、さらなる玉込めをしていきます。
24時間は生き残ることも大事なので、壊れても直して走ります」
一方、SUBARU BRZが抱える課題は「ハンドリング」でした。
今回大きく手を加えてきた部分で理論上は良くなるはず……でしたが、実際に走行させてみるとドライバーからは厳しいコメントが。
スバルが目指す「誰でも乗りやすくて、速い」には程遠いようで、走行を中断させてセットアップの根本的な見直しをおこなうシーンも。
この辺りは量産車から一歩踏み出したことによる“洗礼”を受けているような感じでした。
ドライバーの山内英輝選手にクルマの印象を聞いてみると次のように話してくれました。
「開幕戦からクルマは大きくアップデートされました。
セットアップ幅も増え、これまで課題だったリアの挙動も改善されるなど進化は感じています。
ただ、僕らが求める所に対してはまだまだ足りていません。
山は着実に上り始めてはいるものの、GR86とのタイムも大きいのでさらにペースアップしていかないと、同じ土俵には立てないな……と。
ただ、24時間を戦ううえで重要となる耐久・信頼性に関しては、これまで一度もトラブルが起きていないのでまったく心配していません。
なので、いかにして『安心して速く』を目指すかです。レースをやっている以上はやはり負けたくないので」
製作段階から2台を追いかけている筆者(山本シンヤ)が今回のテストを取材して感じたことは、「目的(=安心して速く)は共通だが、開発のアプローチは異なる」です。
とくにマシンの進化のさせ方については、GRは「やってから、考える」に対して、スバルは「考えてから、やってみる」という違いがあります。
これはどちらが良い悪いではなく、各々の社風が表れているな……という感じです。
そして、「抱える課題は異なるが現状に決して満足していない」ということです。
同じ土俵で戦う2台ですが状況はタイムしかわからないため、隣の芝生は青く見えてしまうのでしょう。
24時間までの期間は短いですが、両チームともに己を信じて更なるカイゼンが進められていることでしょう。間違いなく、どちらも「負け嫌い」ですので……。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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