バイクの自動運転は本当に不可能?レベル1の自動運転技術が実用化へ
長い間、バイクの自動運転は実現不可能ではないかと言われていました。しかし最近になってようやく、バイクにも先進運転安全システムを搭載した車種が登場するようになりました。一体、どのような機能となっているのでしょうか。
バイクの自動運転技術は実用化に向けて進んでいる?
長い間、バイクの自動運転は実現不可能ではないかと言われていましたが、最近になってようやく、先進運転安全システムを搭載したバイクが登場するようになりました。一体、どのような機能を搭載しているのでしょうか。
バイクの電子制御システムの進化は目覚ましく、現在では、FI(フューエルインジェクション)やABS(アンチロックブレーキシステム)といった装置が、ほとんどの新型車に搭載されるほど普及が進んでいます。
その他にも、後輪の空転を防ぐ、トラクションコントロールが搭載されているモデルもあり、IMU(慣性計測装置)と併用することで、車体の傾斜角に応じた細かい制御が可能となっています。
このように、安全性をはじめ環境にも配慮した電子制御の役割と進化は、バイク業界に大きな影響を与えています。
そして2021年には、バイクに初めてレーダーセンサーが搭載されるようになり、新たなステージの幕開けとなりました。それが、世界的な部品メーカーのBOSCH(ボッシュ)が開発した「ARAS」(アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム)です。
BOSCHの事故調査報告によると、ARASシステムを導入することにより、7件に1件のバイク事故を防止できると表明しています。
ARASは、ACC(アダプディブクルーズコントロール)、衝突予知警報、死角検知機能からなる、レーダーセンサーの監視の元で二輪車の安全性と走行時の快適性を向上させる安全運転支援システムの一環です。
これは、同じレーダーを使用した自動車の先進運転支援システムである「ADRS」(アドバンスト・ドライバー・アシスタンス・システム)の技術をベースに、二輪車用に開発されたものになります。
BOSCHがARASを開発した目的は、交通事故のない未来のモビリティの実現にあり、2019年には、日本の高速道路においても開発車両でテストの実施をおこなっています。
その背景には、レーダーの検知に影響をおよぼすガードレールや遮音壁、トンネルやカーブの多い日本特有の道路環境に対応することが理由とされています。
ARASの3つの機能のうち、特に注目されているのが「ACC」(アダプティブクルーズコントロール)です。通常のクルーズコントロールでは、速度を一定に保って走行するだけの機能で、前車との車間距離はライダー自身が調整しなければなりません。
しかしACCは、前方に設置されたレーダーが前車との距離を認識し、バイクがエンジンやブレーキの操作をおこなうため、ライダーは前方に意識を集中するだけでよく、長距離ツーリングなどの高速道路での移動が非常に楽になるというメリットがあります。ただし、システムが作動する速度は30km/hから160km/hの間であるため、低速走行ほど不安定になるバイクでは渋滞時などでACCを作動させることができません。
それでも、バイク自らが状況を判断して、ライダーの代わりになって速度を調整する機能は今までになかったもので、電子制御の新たなステップを踏み出した第一歩といえます。今後さらに技術が進化し、バイクの低速時のバランス技術が高まれば、30km/h以下の速度域でもACCを作動させることが可能になるかもしれません。
また、ARASのふたつ目の機能として「衝突予知警報」があります。ACC同様に前方に設置されたレーダーセンサーを活用した機能のひとつで、前方車両が危険なほど接近したとき、ライダーがその状況に何も対処しないことを検知すると、メーターパネルに警告を表示してくれる機能です。
視覚的な警告以外にも、体感的に危険を知らせる「警告ブレーキパルス」という手法を用いた警告も可能にしています。これは、ブレーキを操作するMSCユニットを使って人工的なパルス(振動)を発生させて、バイクの挙動によってライダーに衝突の危険が迫っていることを知らせる警告手段です。
そして、ARASの3つ目の機能である「死角検知機能」は、後方に設置されたレーダーセンサーを使用します。ライダー後方の死角になっている車両および斜め後方から高速で接近する車両がある際に、ミラーに設置されたLEDのランプが発光するなどの方法で危険を知らせる機能です。
これらARASの3つの機能は、クルマの自動運転レベル分けでいうと、レベル1の自動運転技術に相当するといえます。
ARASが搭載されている車種
では、ARASが搭載されている車種にはどのようなモデルがあるのでしょうか。
まずひとつ目の車種は、ドゥカティのアドベンチャーツアラー「ムルティストラーダV4S」です。2021年モデルに、世界で初めて2輪車でARASが搭載されたモデルで、ACCと死角検知機能を搭載しています。
ふたつ目の車種は、BMW Motorradのスポーツツアラーの「R1250RT」です。2021年のモデルチェンジでスタイリングを一新し、同時にACCの機能を追加しました。なお、レーダーセンサーの設置は前方のみで、後方のレーダーによる死角検知機能は搭載されていません。
3つ目の車種は、KTMの「1290スーパーアドベンチャーS」です。2021年のモデルチェンジでオンロード指向の強い「S」のグレードのみACCが搭載され「R」のグレードには装備されていません。また、BMW同様に、前方のみレーダーが設置されており、ACCのみとなっています。
そして4つ目は、カワサキのハイパフォーマンススポーツツアラーの「ニンジャ H2 SX」です。2022年のフルモデルチェンジで、国産のモーターサイクルとして初のARASを採用したモデルとなります。
ARASのレーダーセンサーは、従来型よりも小型化されたLEDヘッドライトの下に、後方のレーダーはリヤフェンダーに搭載されています。これにより、ACC、衝突予知警報、死角検知の3つの機能を搭載し、ツアラーとしての利便性を高めています。
このように、現時点ではARASが搭載されたモデルは非常に数が少ないですが、今後はさらに安全性が向上したバイクが発表される可能性もあります。バイクが完全な自動運転になるのも、そう遠くない未来かもしれません。
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「ARAS」が搭載されるようになり、バイクでは不可能と思われてきた自動運転が現実味を帯びてきました。将来的に自動運転の技術が進歩すれば、バイクでの事故がなくなる日が来るかもしれません。
提供:バイクのニュース
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そりゃーバイクに乗ってる時に寝たら死ぬからね。事故っても死ぬ。間違いなく死ぬ。バイクに必要なのは自動運転じゃなくて、転倒した時にライダーを守る機構。