ついに「スーパー耐久2022」開幕へ GR86/SUBARU BRZはどう戦う? 開発-テストで見えた両者の課題とは

公式テストでは「1分53秒454(富士)」を記録も…開幕までの不安材料はいかに?

 続いて、シェイクダウン、公式テスト共にトラブルが起きてしまった「ORC ROOKIE Racing」のマシン開発をおこなうGRの藤原裕也氏です。

――公式テストはエンジンテストに専念されていましたが、その理由は?

 藤原:カーボンニュートラル燃料のエンジンに対する影響を見るためです。

 ガソリンとほぼ同等のパフォーマンスを見込んでいますが、耐久性など、レースに向けて確認すべきことが多くありました。

――そんななか、1分53秒454とST-2クラスに匹敵するタイムを記録、これはSUBARUも驚いていました。

 藤原:このときはガソリンの量はギリギリ……予選モードで走らせたタイムで、事前のテスト結果から好タイムは予想していましたが、ドライバーが会心の走りをしてくれました。

――夜間走行時にトラブルが起きてしまいましたが、原因は?

 藤原:ミッショントラブルで合同テストと同じ部品が壊れました。正直ここが壊れると思っていなかったので、見立てが甘かったな……と。

 現在、対策をおこなったトランスミッションの試験の真っ最中です。

――公式テスト後、プライベートでのテストはおこなっているのでしょうか?

 藤原:社内テストは1回、おこなっています。

――アジャイルな開発……といっていますが、どのような手順でやっているのでしょうか?

 藤原:「いつまでに何を判断するか」という工程表を用いた開発手法は、サイクルこそ短いですが量産車と何も変わりはありません。

 ただ、そのサイクルが圧倒的に早い。おのずと仕事のやり方が変わってきています。

――GRは「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を柱にしていますが、今回の取り組みで、どのような所が鍛えられていると思いますか?

 藤原:メンテナンスのしやすさが、より速く組み付けられるか……など、「レースカーを作る」、「1分1秒を争う」とはどういうことかを含めて、クルマをより深く知るようになったことでしょうね。

――ちなみに足回りのセットアップは、まだできていないわけですよね?

 藤原:本来、公式テストの夜間走行でロングランをおこなう予定でしたが、ミッショントラブルで走行出来なかったので、ほぼぶっつけ本番になります。この辺りはドライバーのコメントを聞いてチームと協議中です。

――公式テスト以降の見た目の変化などは?

 藤原:すでに発表済みですが、外観はルーキーレーシングのカラーリングが施されているだけでなく、細かなところもアップデートしています。

 この辺りはテスト時の写真と見比べて間違い探しをしてみてください(笑)。

公式テストでSUBARU BRZはカラーリング済み。GR86のカラーリングは施されていなかったが、開幕戦ではどのように変化するか楽しみだ!
公式テストでSUBARU BRZはカラーリング済み。GR86のカラーリングは施されていなかったが、開幕戦ではどのように変化するか楽しみだ!

――ぶっちゃけ、SUBARUのことは何をどれくらい知っているのでしょうか?

 藤原:安全面やカーボンニュートラル燃料に関しては共有していますが、それ以外の部分……とくにパフォーマンスの部分は全く解りません。

 ちなみにSUBARUのタイムは予想通りでしたが、「もうここまで来たか!!」という印象です。

 ドライバー同士は色々話をしているようですが(笑)。タイミングが合えば、SUBARUの井口選手/山内選手にも是非乗ってもらいたいです。

――スバルとガチンコで戦うことについて、どのように思われてますか?

 藤原:テスト後、各担当者も火が付いたようで、刺激的な環境のなかで楽しくやっています。

 もちろん「SUBARUには負けない!!」という気持ちに変わりはありません。

――最後に意気込みをお願いします。

 藤原:速さと強さを見せることができれば、おのずと結果はついてくると思っています。

※ ※ ※

 このように両チーム共にさまざまな課題や悩みを抱えているようですが、決勝のスタートギリギリまで改善の手が止まることはなさそうです。

 果たして、開幕戦の鈴鹿ではどのようなドラマが待っているのか。

 2022年3月19日-20日、GR/SUBARUの「仲良く喧嘩」のゴングが鈴鹿で鳴りますが、筆者(山本シンヤ)はこのガチンコ勝負を冷静かつ平等に見守りたいと思っています。

【画像】カーボンニュートラル燃料は見た目も違う? 新たな挑戦に挑む「GR86」と「SUBARU BRZ」を見る!(39枚)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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