誰が予想出来た? トヨタ「水素カローラ」日本の強みで大幅進化! その先にある水素の挑戦はどうなる?

来シーズンはどうなるのか?

 今回の岡山でスーパー耐久の2022シーズンは終了となり、水素カローラの挑戦もひとまず完了になります。

 気になるのは「来期はどうするのか」ですが、モリゾウ選手に直球で聞いてみました。

「カーボンニュートラル実現に向けた『選択肢』を広げる取り組みのキッカケを作った以上は、来シーズンも参戦をおこないます。私も参加するつもりでいますが、今年で65歳なので体と相談です(笑)」。

 さらにこのようなことも語ってくれました。

「トヨタのモータースポーツは景気の浮き沈みで撤退や復帰を繰り返すのではなく、継続的にやるにはそこに意味を持たせないとダメです。

 それは何かというと、マーケティングニーズではなくもっといいクルマづくり……人材育成/商品作りをモータースポーツ起点でおこなう。

 どんな時代になっても商品で経営していくうえでは省けないことです。

 開発、現地現物な開発、そしてマスタードライバーが関わる開発は非常にユニークですが、秘伝のタレのように『いいことは取り入れよう』という形になると思います」

さまざまな人が関わって作り上げた水素技術の挑戦
さまざまな人が関わって作り上げた水素技術の挑戦

 一方、エンジニアはこの挑戦をどのように思っていたのでしょうか。

 水素カローラの開発を担当した坂本氏に聞いてみました。

「社長がどんどん先に行ってしまうので、まさに未来日記のような感じでした。怒涛の半年は『緊張感』と『新鮮』の連続でした。

 それは僕だけでなく多くのエンジニアがそうだったと思っています。プレジデントの佐藤は『アジャイル開発』と呼んでいますが、一番変わったのは『マインドの変化』です。

 短い期間でハードを変える、テスト期間は限られていたので、できない理由をいう時間もなく(笑)。

 スパンの長い仕事だと慎重になりすぎて初動が遅れ『とりあえずやってみよう』にはなりません。

 しかし、ここでは『やるしかない』でした。なので、やることに対して常に前向き&ポジティブでした」

 来期に向けた課題はどの辺りにあるのでしょう。

 そのひとつはやはり航続距離ですが、佐藤プレジデントはこのように語っています。

「現在は信頼・安全性が担保できたMIRAIの水素タンクを用いているので、体積効率はよくありません。

 当然、『ジャストサイズに作る』ということは検討中です。

 ただ、現時点でも残圧を活かし切っていない(=最後まで使えていない)所も課題のひとつです。

 実はそれが解決できると、今のタンクのままでも航続距離は伸びると思っています」

※ ※ ※

 来シーズンは、水素に加えて合成燃料(トヨタ/スバル)、バイオディーゼル(マツダ)と内燃機関の可能性を探るさまざまな選択肢がモータースポーツを通じて鍛えられます。

 ちなみに1970年のオイルショックのときは自動車メーカーがモータースポーツから消えましたが、今回は環境問題に立ち向かうために自動車メーカーがサーキットに戻ってきたことで、これも新しい時代なのかもしれません。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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