もはや幻のクルマになった? 激レアな日産「スカイライン」3選

近年、世界的な規模で、1980年代から1990年代に発売された高性能車の中古車価格が高騰しています。そのなかでも、著しく高額になったのが日産「スカイラインGT-R」です。さらに、今では「R34型」までのスカイラインシリーズ全般にわたって、プレミアム価格となってしまいました。そこで、スカイラインのなかでも激レアなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

激レアなスカイラインを振り返る

 今から10年ほど前から、クラシックスーパーカーの価格が高騰し始めました。その影響からか、だんだんと新しい年式の高性能車の価格も高騰する事態に発展。

今ではまずお目にかかれない激レアなスカイラインたち
今ではまずお目にかかれない激レアなスカイラインたち

 現在、1980年代から1990年代に登場した高性能車は、世界規模で価格高騰が続いています。なかでも著しく価格が上がったモデルというと、日産「スカイラインGT-R」シリーズです。

 当初は「R32型」から始まり、今では初代から「R34型」まですべてが新車価格を上まわるほどのプレ値で取引されています。

 さらに、直近ではR34型までのスタンダードなスカイラインも、プレ値がついている状況です。

 R34型までのスカイラインは一部の国と地域を除いて輸出の実績がほとんどなく、基本的には国内専用車であり、海外では希少なモデルということも価格高騰の理由のひとつとなっています。

 そこで、スカイラインのなかでもさらに激レアなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●日産「スカイラインGT-R NISMO」

純粋なレースベース車として開発されたストイックなモデルの「スカイラインGT-R NISMO」

 1989年に、16年ぶりに復活したR32型 スカイラインGT-Rは、1969年に誕生した初代(ハコスカ)と同じくツーリングカーレースに勝つという目的のために開発されたモデルです。

 実際にR32型 スカイラインGT-Rは、市販車を改造した「グループA」車両で争われる全日本ツーリングカー選手権に1990年シーズンから参戦し、デビュー戦から1993年にレースが消滅するまでの4年間で全勝を飾り、まさに無敵の存在となりました。

 この全日本ツーリングカー選手権に参戦するベース車両として、1990年に500台限定で発売されたのが「スカイラインGT-R NISMO」です。

 エンジンはスタンダードモデルと同じ最高出力280馬力を発揮する2.6リッター直列6気筒ツインターボ「RB26DETT型」を搭載していますが、ターボチャージャーのブレードがセラミックからメタルに変更され、より高い過給圧に対応しました。

 また、ABSやエアコン、オーディオ、リアワイパーなどの装備が省かれ、約30kgの軽量化が図られました。

 グループAのレギュレーションで、外観は変更が許されないため、フロントバンパーに冷却用ダクトが追加され、トランクリッドには大型リアスポイラーとともに小型リアスポイラーを装着。さらにサイドステップの形状も空力性能向上のため専用のデザインを採用するなど、細部にまで手が入れられています。

 第2世代のスカイラインGT-RのなかでもストイックなモデルはこのスカイラインGT-R NISMOのみで、多くは実際にレースで使われて失われており、今ではシリーズ屈指の貴重なモデルです。

●日産「スカイライン オーテックバージョン」

大人のための高性能ツーリングセダンに仕立てられた「スカイライン オーテックバージョン」

 前述のR32型 スカイラインGT-Rはレースだけでなく、ストリートにおいても高性能車の頂点に君臨するモデルでした。

 この高性能なR32型 スカイラインGT-Rのコンポーネンツを利用したコンプリートカーが、1992年にオーテックジャパンから発売された「スカイライン オーテックバージョン」です。

 ボディは2ドアクーペのみだったスカイラインGT-Rと異なり4ドアハードトップとされ、スタンダードなスカイラインと同様に5ナンバーサイズのままです。

 また、外装では派手なエアロパーツが装着されておらず、専用デザインのエアロフォルムバンパーがフロントに取り付けられた程度で、シックな印象となっていました。

 エンジンはRB26DETT型をベースに、ターボやインタークーラーを外して専用に仕立てられた自然吸気で、専用のインテーク/エキゾーストマニホールド、カムシャフト、ピストン、などが組み込まれました。

 型式も2.6リッター直列6気筒DOHC自然吸気の「RB26DE型」が与えられ、最高出力は220馬力を発揮。

 駆動方式はスカイラインGT-Rと同じく4Wdシステム「アテーサE-TS」Dが採用されましたが、余裕のあるロングドライブを楽しむという開発コンセプトだったことから、トランスミッションは4速ATのみです。

 一方、足まわりは4輪操舵のスーパーハイキャスを装備し、ショックアブソーバーなど専用チューニングが図られ、ブレーキはスカイラインGT-Rから移植された4輪ベンチレーテッドディスクが奢られるなど、コーナリング性能が高められました。

 高性能ツーリングセダンに仕立てられたスカイライン オーテックバージョンは、スカイラインGT-Rと比べて販売台数はわずかで、今では中古車市場でも滅多にお目にかかれないほど激レアなモデルです。

●NISMO 400R

究極のスカイラインを目指して開発されたコンプリートカーの「NISMO 400R」

 1995年に発売された「R33型」スカイラインGT-Rは、R32型から主要なコンポーネンツがキャリーオーバーされましたが、ボディサイズの拡大や足まわりとブレーキを中心に改良され、さらに運動性能が高められました。

 このR33型 スカイラインGT-Rをベースに、1996年にニスモから販売されたコンプリートカーが「NISMO 400R」です。

 車名の400Rは、搭載された「RB-X GT2型」エンジンが最高出力400馬力を発揮することに由来しており、RB26DETT型の排気量をアップして2.8リッターとし、専用の鍛造ピストン、コンロッド、クランクシャフト、N1用ターボチャージャー、強化エンジンブロック、燃焼室形状が最適化されたシリンダーヘッド、専用プログラムのECUなどを採用してチューニングされました。

 なお、RB-X GT2型エンジンは中低速域のトルクアップを重視したセッティングとなっており、実際は400馬力以上を達成することも十分に可能だったといわれています。

 外観は専用デザインの各エアロパーツとボンネットに加え、全幅が50mm拡大されるオーバーフェンダーを装着。軽量化とともに迫力あるリアビューを演出するチタン製マフラーも、400R専用に開発されました。

 足まわりやブレーキ、ホイールなどは、もともと高いポテンシャルを誇る既存のNISMO製パーツが組み込まれています。

 NISMO 400Rの当時の価格は1200万円(消費税含まず)と、ノーマルよりも700万円ほど高額でしたが、チューニングの内容や信頼性を考えると妥当な価格といえるでしょう。

 なお、NISMO 400Rは99台限定で販売を予定していましたが、実際にデリバリーされたのは50台前後といわれ、まさに幻のハイパフォーマンスカーです。

※ ※ ※

 R32型以降の第2世代のスカイラインGT-Rは、国内のみならず海外でも人気で、数多くの車両が現役です。そのため、日産とNISMOは共同で純正部品の復刻や、レストアサービスを展開しています。

 旧車ユーザーにとって最大の問題は純正部品の入手ですから、メーカーによるサポートが充実しているのは本当にありがたいことで、トヨタやホンダ、マツダも同様の事業をおこなっています。

 ただし、復刻されたパーツの価格は新車当時を大きく上まわっており、やはり旧車を維持するにはそれなりの覚悟と情熱が必要です。

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