ロールス・ロイスのBEV「スペクター」誕生! 400年分の250万キロ極限走行テストとは

ロールス・ロイスから、ついに市販BEVに関するアナウンスが発表されました。その名も「スペクター」と名付けられた、真にラグジュアリーなBEVが生まれてきた背景をレポートします。

ついに登場!? ロールス・ロイス初のEVの名は「スペクター」

 自動車用パワーユニットの電動化への対処が否応なしに進められている現在においては、世界最高級車ブランドであるロールス・ロイスとて、例外とはなりえないようだ。

 2021年9月29日の英国夏時間午後1時(日本時間の同日午後9時)、ロールス・ロイス・モーター・カーズ社は、トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOが自らプレゼンテーションをおこなう動画を世界に向けて公開。そのなかで、正式な市販モデルとなることが決定しているBEV「スペクター(Spectre)」のテスト車両を発表した。

 スーパーカーやハイパーカーの分野では、すでに数多くのEVが現れているかたわらで、超高級プレステージカーの世界では盟主として君臨するロールス・ロイスがいかなるEV戦略を構築するのか。今回は、その第一報をお届けしよう。

「スペクター」は、ロールス・ロイス独自のアルミニウム・アーキテクチャー「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」を採用
「スペクター」は、ロールス・ロイス独自のアルミニウム・アーキテクチャー「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」を採用

●試作車ではなく、シリーズ生産を想定した完成車

 ロールス・ロイスはかねてから、2020年から2030年までの10年間のうちにオール・エレクトリック(完全電動)の車両を導入すること、その自動車はハイブリッド車ではなく、純粋な(バッテリー駆動の電気自動車=ピュアEV)になる予定であること、そして時期が来て、技術面、審美面、性能面のあらゆる要素がロールス・ロイスの基準を満たしたときにのみ発売することを言明していた。

 ロールス・ロイス・モーターカーズ社のCEO、トルステン・ミュラー-エトヴェシュ氏は、今回のスペクターを発表するプレスリリースで、以下のように切り出した。

「本日は、1904年5月4日以来、ロールス・ロイス・モーター・カーズにとってもっとも重要な日となります。かつてのこの日は、当社の創業者であるチャールズ・ロールスとヘンリー・ロイス卿が初めて出会い、『世界最高のクルマ』を作ることに合意した日でした。

 このふたりの先駆者は、当時、卓越した技術者として最先端技術を駆使し、交通手段としてまだ発展途上にあり、騒音や不快感を伴っていた初期の内燃機関搭載の自動車を、まったく新しい、それまでとは異なる基準を設定してその性能を引き上げました。

 彼らが作り上げた自動車は、世界中に真のラグジュアリーたる体験を提供し、ロールス・ロイスに究極の頂点という地位をもたらしました。ロールス・ロイスはその後1世紀以上にわたり、最高峰の内燃式エンジンを定義し続けています。

 それから117年を経た今日(こんにち)、ロールス・ロイスは世界的な電気自動車への変革をあと押しするために、この種の製品としては初めての、もっとも洗練された超高級車を生み出しました。この優れた新製品の公道走行試験プログラム開始をお伝えできることを誇りに思います。このクルマは試作車ではなく、完成車です。このクルマを丸裸になるまでテストし、2023年の第4四半期にはお客様に最初の車両をお届けする予定です」

 ご記憶の方も多いかと思われるが、2011年にロールス・ロイスは「102EX」のコードネームでも知られる試作車「ファントム・エクスペリメンタル・エレクトリック(ファントムEE)」を発表している。この試作車は当時のR-R最上級モデル「ファントムVII」をベースとするもので、完全に運行可能で公道走行もできるバッテリー駆動の電気自動車(BEV)だった。

 また2016年には、BMWグループ全体で自動車の100年後を予測した「ヴィジョン・ネクスト100」のために、完全自動走行を想定した試作車「103EX」を開発・発表した。このコンセプトカーは、ラグジュアリー・モビリティに対するロールス・ロイスの長期的ビジョンを明確化したものだが、もちろんこちらも電動パワーユニットを想定していた。

 そしてこのほど、カムフラージュを施された状態で初公開された「スペクター」は、「ファントムEE」のようなロールス・ロイスEVの可能性を実験する試作車ではなく、「103EX」のごとく遠い未来のR-R像を想起させるコンセプトカーでもない。

 あくまで、ごく近い将来に生産モデルとして正式デリバリーされるクルマの走行テスト車両というのだ。

【画像】ロールス・ロイス「スペクター」とロールス製EVの変遷とは(14枚)

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