クロカン車なのに泥は似合わない? シティ派のオフロードカー3選

近年、世界的に高い人気をキープしているSUVですが、その前身となったモデルはクロスカントリー4WD車です。クロカン車といえば悪路走破性に特化したクルマですが、見た目や走りの面でオフロードが似合わないモデルも存在。そこで、都会的なクロカン車を3車種ピックアップして紹介します。

本格的なクロカン車なのに都会的なモデルを振り返る

 ここ数年で一気に人気が高くなったのがSUVです。この傾向は世界的にも波及しており、次々と新型SUVが登場しています。

オフロードよりもオンロードが似合うクロスカントリー4WD車たち
オフロードよりもオンロードが似合うクロスカントリー4WD車たち

 SUVといってもいくつか種類があり、とくに人気が高いのがオンロード走行に特化して開発された「クロスオーバー」と呼ばれるモデルで、なかには2WDのモデルもあるくらいです。

 このSUVの源流をたどるとクロスカントリー4WDに辿りつきますが、クロカン車はクロスオーバーとは対極に位置する悪路走破性に特化したモデルです。

 日本では1990年代に「RVブーム」が起こり、クロカン車が市場を席巻するほど売れ、各メーカーから数多くのクロカン車がラインナップされていましたが、その後ほとんどが淘汰されてしまいました。

 そんなクロカン車のなかには、見た目や走りにおいてオフロードが似合わないモデルも存在。そこで、都会的なクロカン車を3車種ピックアップして紹介します。

●スズキ「エスクード」

都会的で洗練されたデザインから人気となった初代「エスクード」(画像は欧州仕様)

 スズキのミドルクラスSUVである「エスクード」は現行モデルが4代目にあたり、同社の「ジムニー」に比べるとライトなオフロードカーというイメージですが、1988年に登場した初代エスクードは、コンパクトサイズのクロカン車として開発されたモデルでした。

 発売当初は3ドアのハードトップとソフトトップのショートボディみで、前後ブリスターフェンダーを採用するなどスタイリッシュなフォルムが特徴です。

 一方、車体はラダーフレームにボディを架装した構造で、リアサスペンションにリジッドアクスルを採用するなど、ハードウェアは本格的なクロカン車と同等のメカニズムとなっています。

 1990年にはロングホイールベースの4ドアモデルの「エスクード ノマド」を追加ラインナップし、さらに使い勝手の良さを向上しました。

 エンジンは当初は1.6リッター直列4気筒ガソリンのみでしたが、後に2リッター直列4気筒ディーゼルターボや、2リッターと2.5リッターのV型6気筒ガソリンを搭載。駆動方式は全車パートタイム式4WDです。

 初代エスクードは洗練されたデザインからかシティユースをメインとするユーザーが多く、低扁平のワイドタイヤを装着し、車高をローダウンするカスタムも流行るなど、RVブームのなかでも異色のクロカン車だったといえます。

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●日産「ミストラル」

「テラノ」とベースは同じながら欧州テイストに仕立てられた「ミストラル」

 日産はRVブームが起こる以前から、大型の「サファリ」、4WDピックアップトラックの「ダットサントラック」、ミドルクラスの「テラノ」と3タイプのクロカン車を展開していました。

 そして、RVブームの頃にはどのモデルも好調なセールスを記録し、第4のクロカン車として1994年に発売されたのが「ミストラル」です。

 ミストラルはもともと欧州向けに開発されたクロカン車で、生産はスペイン工場でおこなわれ、欧州各国にデリバリーするとともに、日本にも輸入されました。

 車体は9代目ダットサントラックのラダーフレームに、専用のボディを架装するかたちで、テラノと同様の構成です。

 ボディバリエーションは当初ロングボディの5ドア3列シートのみの設定でしたが、後にショートボディの3ドア2列シートが追加されました。

 外観は質実剛健な印象のテラノに対してソフトなデザインで、足まわりのセッティングも欧州での使用状況を反映して、高速域での直進安定性や乗り心地の良さを重視するなど、まさにシティオフローダーというコンセプトです。

 国内仕様では2.7リッター直列4気筒OHVディーゼルターボエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はパートタイム式4WDを採用。悪路走破性よりも普段使いに適したパワートレインとなっていました。

 その後、ミストラルは1997年のマイナーチェンジでフロントフェイスが一新され、よりモダンなデザインを採用した個性的なクロカン車というイメージで販売が続けられましたが、テラノほどの人気は得られず、1999年に一代限りで生産を終了しました。

●トヨタ「FJクルーザー」

高い悪路走破性ながらユニークなデザインで都会にもマッチする「FJクルーザー」(画像は豪州仕様)

 今や日本を代表するクロカン車といえば、トヨタの「ランドクルーザー」シリーズです。

 現行ラインナップでは2021年8月に発売された新型ランドクルーザー(300)がステーションワゴン、海外専用モデルの「ランドクルーザー 70」がヘビーデューティ、「ランドクルーザープラド」がライトデューティにカテゴライズされています。

 このうち、ランドクルーザープラド(3代目)のコンポーネンツをベースに開発されたのが、2006年に北米専用車としてデビューした「FJクルーザー」です。

 外観はランドクルーザープラドとはまったく異なり 丸目2灯のヘッドライトやトヨタのCIマークを使わずグリル前面に配された「TOYOTA」のロゴ、ホワイトにカラーリングされたルーフなど、70系の前身である40系をイメージしたネオクラシックなデザインを採用。

 さらに前後方向に開く観音開きのサイドドアによってユニークなサイドビューや、あえてポップなカラーリングを設定とするなど、秀逸なデザインによってアメリカでヒット作となり、日本でも話題となったことから2010年に国内でも発売されました。

 国内仕様では4リッターV型6気筒ガソリンエンジンに5速ATを組み合せ、駆動方式はパートタイム式4WDで、海外ではFRの2WD車や6速MTのフルタイム4WDも設定され、外観はユニークですが悪路走破性の高さはランドクルーザー系だけあって本物です。

 国内でもスマッシュヒットしたFJクルーザーでしたが、2017年10月に最後の限定モデル「ファイナルエディション」が発売され、2018年1月に生産を終了。

 アメリカやオーストラリアでも順次販売を終えましたが、中東や南アフリカなどでは現在も新車の販売が継続されています。

※ ※ ※

 ジムニー/ジムニーシエラや新型ランドクルーザーは日本だけでなく世界的にも高い人気を誇っており、バックオーダーを抱えている状況です。

 これら本格的なクロカン車は、日本の道路状況で真価を発揮する機会はほとんどありませんが、スクエアなフォルムや本物だけが持つ性能は、大いに魅力的といえるでしょう。

 とくにジムニーはデザインに惹かれた女性ユーザーがこれまで以上に増えたといいますから、今後、直線基調のモデルが再評価されるかもしれません。

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