世界最速だったジャガー「XJ220」は5200万円! フェラーリ「F50」やブガッティ「EB110」の半値以下の理由とは

ライバルに比べるとリーズナブルな「XJ220」は今が狙い目

 今回RMサザビーズ「Monteley」オークションに出品されたXJ220は、シャシNo.#220686。「ジャガー・ダイムラー・ヘリテージトラスト」によってトレースされた証明書によると、1993年9月下旬に完成したものとされている。

走行距離わずか6837kmのローマイレージ車両のジャガー「XJ220」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
走行距離わずか6837kmのローマイレージ車両のジャガー「XJ220」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●5000万円オーバーでもリーズナブルといえなくもない

 XJ220のほぼ全車両が、往年の「XJ13」を思わせる濃いブリティッシュグリーン、ないしは「Eタイプ・ライトウェイト」にあやかったシルバーにペイントされて送り出されたが、今回の個体は後者。ボディは「スパ・シルバー」で仕上げ、インテリアは「スモーク・グレー」の本革レザーによるフルトリムとされている。

 伝えられるところによると、もともと新車として北米コネチカット州に住むスーパーカースペシャリストによって輸入され、アメリカ合衆国内での公道走行が認められたXJ220は、のちにヨーロッパ製スポーツカーの著名なコレクションに販売されたとのこと。

 アメリカの車両履歴WEBサービス「CARFAX」のレポートでも、このジャガーが2004年までにフロリダに拠点を置く愛好家によって所有されていたことが記されている。

 2008年にはニューヨーク在住の著名コレクターが入手したのち、彼のプライベートコレクションに組み入れられたXJ220は、2016年には英本国「ジャガー・ヘリテージ」に移送され、燃料タンク内のバッグ交換を含む包括的なサービスが施された。この時の請求書は今回の出品に際して添付されるファイルにも含まれており、その費用の合計は約8万6000ポンド(≒10万5000USドル)にのぼったことが明らかになっている。

 さる2020年には、今回のオークション委託者である現オーナーに譲渡されたのち、定期的なメンテナンスによって完全な走行可能なコンディションを維持。また最近になって、ジャガーがXJ220用として純正指定したタイヤの新品セットを装着したが、歴代オーナーが保持してきた新車時のオリジナルタイヤも車両に添付される。

 RMオークション北米本社が、公式WEBカタログを製作した段階での走行距離は、わずか6837km(4249マイル)を表示するこの絶妙なXJ220は、例外的なコンディションを身上とするローマイレージ車両。また「ジャガー・ヘリテージ」によってメカニカルパートにも、そしてエクステリア/インテリアにも総合的なサービスを提供されている数少ないXJ220の1台。ヒストリーまで含めて、希少なXJ220としてもハイエンドに属する個体と考えられる。

 だから、現状でもジャガーのクラブミーティングやスーパーカーの展示イベントなどで高い人気を得られるほか、今後は国際的なコンクール・デレガンスのエントリー対象になることも見込まれよう。

 このジャガーXJ220に、RMサザビーズ北米本社および現オーナーが協議の上に設定したエスティメートは、45万−55万ドル。そして8月13日に行われた競売では47万2500ドル、日本円に換算すれば約5200万円で落札されることとなった。

 この落札価格は、もちろん絶対的な金額としては充分に高価であるのは間違いあるまい。しかし新車としてデビューした1990年代前半に、同じく「ハイパーカー」のパイオニアとして市場を競ったライバルたち、例えばフェラーリ「F50」やブガッティ「EB110」が現在の国際マーケットにおいて軒並み「億超え」を果たしている市況と比較すれば、むしろリーズナブルにも感じられてしまう。やはり、エンジンの気筒数が、この種のクルマでは重要視されるのだろうか。

 ジャガーXJ220には、もしかしたら遠くない将来に大化けするだけのポテンシャルがあるのでは、などという、とりとめのない妄想を掻き立てられるオークション結果となったのである。

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