世界最速だったジャガー「XJ220」は5200万円! フェラーリ「F50」やブガッティ「EB110」の半値以下の理由とは
1990年代にジャガーが、当時世界最速のスーパーカーを作りました。その名も、最高速チャレンジした220mphをそのまま車名にした「XJ220」。この300台未満しか生産されなかったXJ220が、いまどうして狙い目のスーパーカーであるのかを説明します。
課外活動で生まれた世界最速のスーパーカー
「ヤングタイマー」と呼ばれる1980−90年代のスーパーカーたちは、2020年代を迎えた今、クラシックカー/コレクターズカーのマーケットにおいて主役の一端を担いつつあるようだ。
とくに現代の「ハイパーカー」に系譜をつなぐような超弩級モデルが登場し始めたのもこの時代のことだった。そんな元祖ハイパーカーたちは、次から次へと登場する現代のハイパーカーにも飽き足らない上級志向のエンスージアストに向けて、国際オークションでも重要な人気商品となっている。
2021年8月中旬、新型コロナ禍によって1年休止となっていた「モントレー・カーウィーク」が2年ぶりの復活を果たし、クラシックカー/コレクターズカー・オークションの業界最大手RMサザビーズも、北米本社の主導による「Monteley」オークションを開催。
数百台に及ぶ出品車両のなかで、今回VAGUEが注目したのは、英国ジャガーが1990年代初頭に少数生産した超弩級スーパーカー「XJ220」である。
●“サタデークラブ”から生み出された、元祖英国製ハイパーカーとは?
今からちょうど30年前、1991年の東京モーターショーにて生産モデルが初公開されたジャガーXJ220は、もともとジャガー本社のスタッフによる課外研究活動からスタートしたスーパーカー。
コヴェントリーのジャガー本社のデザイン部門やエンジニアリング部門に属する有志が、本来は休暇である土曜日ないしは終業後に結集し、彼らは「サタデー(土曜日)クラブ」と呼ばれていた。
当時エンジニアリング部門のディレクターだったジム・ランドルは、もともとフェラーリ「F40」やポルシェ「959」に触発され、それら元祖ハイパーカーとも競合しうるような超弩級スーパーカーとして、当時のスポーツカー耐久選手権で活躍していた「XJR」シリーズの市販版のようなV12ミドシップ・ロードカーを構想。さらに当時の市販ミドシップ車では未知の領域に近かった4輪駆動にもチャレンジするという、驚くべきスーパースポーツを仲間たちとともに開発した。
その成果として完成したプロトタイプは、1988年のバーミンガム国際モーターショーで発表。満場一致で賞賛されるとともに、フェラーリF40のライバルにもなり得る存在として、当時のスーパーカー愛好家たちから生産化を求めるリクエストが押し寄せたという。
ところが、当時のジャガーにはスーパーカーを生産するノウハウがなかったうえに、ジャガーを買収したばかりだった米フォードは、自社生産の体制を構築することに難色を示した。
そこでXJ220の生産は、最終的にトム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)との共同で創立した子会社のレーシングカンパニー「ジャガースポーツ」に委任されることになるのだが、V12エンジン+4WDは重量がかさむからという理由で早々にキャンセル。
この時期のTWRは、オースティン・ローバーのグループBラリーカー「メトロ6R4」のために開発された総軽合金製V6エンジンをベースに、ツインターボを追加するなどの大改造を施した新エンジンを開発。1989年の北米IMSA選手権用の「XJR10」および世界スポーツカー選手権用の「XJR-11」に搭載していた。
「JV6」と呼ばれたこのターボV6は、XJ220の新しいパワーユニットに選ばれ、XJR11と同じ3.5リッターから542psにディチューン。さらに前輪用の駆動システムもキャンセルされ、ジャガー社デザイン部門のキース・ヘルフェットによって描かれたアルミニウム製のボディに収められることになる。
1992年に生産に入ったXJ220は、南イタリア・ナルドの高速オーバルテストトラックでのタイムトライアルで達成された、約220マイルの最高速度にちなんで命名され、一時は世界最速の生産車としても名をはせた。
また、フェラーリF40やランボルギーニ「ディアブロ」(ともに3.7秒)よりも0−60マイル加速タイムが速いことも証明されたうえに、ニュルブルクリンクにおける生産モデルのラップ記録も更新した。
こうして鳴り物いりでリリースしたXJ220ながら、たまたまのデビュー時期がスーパーカー市場の停滞期と重なってしまったことから、セールスは日本を含む全世界で低迷。350台の生産が予定されていたが、1994年まで生産された台数は300台にも満たない(281台説が濃厚)といわれている。
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