内燃機関を敵にすると日本は潰れる!? EV化が進む欧州とは異なる日本らしい脱炭素とは
これからも日本経済が持続的に成り立つ方法とは?
今回のおこなわれた自工会の会見では、政府が2021年10月末から英国グラスゴーで開催予定のCOP26(国連気象変動枠組条約・第26回締約国会議)に向けて、「欧州寄り」の考え方を示そうとしているとして、自工会として政府に対して牽制球を投げた印象があります。
プレゼンでは、カーボンニュートラルの根幹は「敵=炭素」であり、「敵=内燃機関」ではないという表現で、政府の動きに釘を刺しました。
日本はハイブリッド車を基盤とした、世界でも極めて稀な電動化立国であり、過去20年間に5400万トンのCO2を削減。これを今後の政府目標に当てはめると、同量を10年間で削減する必要があるといいます。
それを実現するためには、欧州のような急激なEVシフトではなく、日本がこれまで培ってきた電動車フルラインナップ体制をさらに強化し、加えて内燃機関に水素や合成燃料を使うなど、CO2削減のための選択肢を増やすことが重要だと主張したのです。
さらに、仮に日本がEVと燃料電池車のみが電動車という欧州方式を取り入れた場合、日本自動車産業界がどうような事態に陥るかも説明しました。
それによると、2030年で日本国内でのEVと燃料電池車の総生産台数は「200万台には満たない」と予測しており、これが現在の総生産台数1000万台の2割にとどまります。
また、現状では1000万台のうちの半数にあたる500万台が海外輸出ですが、カーボンニュートラルにおける作る・運ぶ・使うという社会全体を俯瞰するLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点では、資源に乏しい日本では海外輸出が難しくなる可能性があります。
出荷額では、全製造業の2割に相当する約70兆円の自動車産業で、関連する従事者約550万人の雇用に大きな影響が及びかねません。
要するに、環境と雇用とのバランスを考えると、現状での電動車フルラインナップ体制から急激なEVシフトさせることは、日本全体にとってプラスではないという考え方です。
そのうえで自工会として、エネルギー政策全体に対する提言を2021年10月に公表することを明らかにしました。
概要としては、日本がいつまでに、何を、どのようにしてエネルギー供給体制を作ることが、電動車フルラインナップ体制を続ける日本の経済が成り立つのかという、大きなロードマップを描くことになります。
豊田会長は、自動車産業は運輸部門だけではなく、多様な産業界と社会を通じてつながっている産業であるため、カーボンニュートラルを考えるうえで「納期と課題がわかりやすくなる」と表現し、政府に対して今後一層の連携を訴えました。
また、一部で会長任期の延長が決まったとの報道があったことについては「決まっていない。理事会で決定したことはすべてこのように会見(で説明)している」として、単なる噂話であると報道を完全否定しました。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
欧州のルールに付き従うとバッテリー争奪戦が始まる、
そんな相手先行の御都合ルールを馬鹿みたいに真に受けて付いて行った先に
勝ち目なんてない(経済的に追い詰められる)事は
有識者なら目に見えてるんだよね、
カーボンニュートラルなどとうそぶきながら、
真実は環境問題解決が本当の目的ではなく
欧州はこの分野での政治的リーダーシップと経済的イニシアチブを獲りたいのが本音なのだから。
その為に事実上は下手なBEVよりLCAでの排出量少ないハイブリッド車を排斥しようとしてる点を見ても
日本優位の分野を外して欧州優位に事を進めようと諮っているのは明らか、
きれいごとを並べ欧州の思惑に嵌り追随しかねない日本政府の無策ぶりに
自工会も待ったをかけるべく苦言を呈したというのが実態でしょう。