フェラーリとランボルギーニのボートで買えるのはどっち? 40艇限定の「リーヴァ・フェラーリ32」とは

スピードとラグジュアリーを求めるのはクルマだけではありません。そこで、ボートの世界におけるフェラーリとランボルギーニの場外バトルをお届けします。

スーパーカーブランドが関わったボートたち

 昨2020年6月に概要と広報写真が公開された、ランボルギーニ社プロデュースによる超高級モーターヨット「テクノマール・フォー・ランボルギーニ63(Tecnomar for Lamborghini 63)」が、つい先ごろ初の納艇を迎えたというニュースは、VAGUEでも第一報を伝えたとおりである。

 このテクノマール・フォー・ランボルギーニ63は、スーパーカーブランドとヨット&ボートの世界は親和性が高いことの証でもある。そこで、かつて作られたランボルギーニ、そしてフェラーリの名のついたボートを紹介しよう。

ランボルギーニ社プロデュースによる超高級モーターヨット「テクノマール・フォー・ランボルギーニ63」
ランボルギーニ社プロデュースによる超高級モーターヨット「テクノマール・フォー・ランボルギーニ63」

●20世紀に誕生したフェラーリやランボルギーニのパワーボートたち

 創成期から現在に至るまで、自動車用エンジンをモーターボートに搭載する事例は数多いものの、自動車メーカーはあくまでエンジンを供給するのみ。その存在感は、少なくとも船舶の世界ではあまり大きなものとはいえなかった。

 ただ第二次大戦前から活発におこなわれていた、水上における世界スピード記録チャレンジでは、より速いボートに必須な軽量かつ高出力なエンジンを求めて、高性能車メーカーの協力を得る事例も数多く見られた。

F1マシン「375F1」用のレーシングエンジンを搭載した「ARNO XI(アルノXI)」
F1マシン「375F1」用のレーシングエンジンを搭載した「ARNO XI(アルノXI)」

●モデナのムゼオで見ることが可能なフェラーリ製ボート

 なかでも有名なのは、1920年代からレース/スピード記録チャレンジ用水上機や戦闘機の設計もおこなった伝説の航空機エンジニア、マリオ・カストルディ技師の設計によるスピードボートに、フェラーリが1951年シーズンに使用したF1マシン「375F1」用のレーシングエンジンを搭載した「ARNO XI(アルノXI)」だろう。

 4.5リッターV12エンジンにスーパーチャージャーを装着し、500ps以上のパワーを得たアルノXIは、1953年10月におこなわれたチャレンジでは、ロンバルディア州ブレシア近郊のイゼオ湖に設定された1kmコースの往復平均で、現在でも800kg級ボートの世界記録として残っている150.19mph(約242km/h)をマーク。現在では「フェラーリ・アルノXI」とも呼ばれることになった。

 またパワーボート競技の最上級カテゴリー「オフショア」では、ランボルギーニV12エンジンを搭載したモンスター級のボートが、1980年代中盤から今世紀初頭にかけて輝かしい戦果を残すことになった史実は、まだ記憶に新しいところである。

ランボルギーニ「350GT」用の3.5リッターV12エンジンを2機がけしたリーヴァ・アクアラマ・ランボルギーニ
ランボルギーニ「350GT」用の3.5リッターV12エンジンを2機がけしたリーヴァ・アクアラマ・ランボルギーニ

●フェルッチオが愛したボート

 しかし、記録チャレンジやパワーボート競技以外、一般向けのモーターボートの分野で初めて自動車メーカーが存在感を示したのは、ヨーロッパでは「リーヴァ・アクアラマ・ランボルギーニ(Riva Acquarama Lamborghini)」ではないかと思われる。

 1842年創業というイタリアの名門ボートコンストラクター「リーヴァ(Riva)」が、1962年から1996年まで生産。「モーターボート界のフェラーリ」あるいはイタリア的「ドルチェ・ヴィータ」の代名詞とも称された、総木造高級ランナバウト・ボート「アクアラマ」に、ランボルギーニ「350GT」用の3.5リッターV12エンジンを2機がけしたもので、フェルッチォ・ランボルギーニのオーダーによって一艇のみが製作された。

 このボートは、1988年にフェルッチオの友人に売却されるまで、ランボルギーニによって所有。そののち21世紀に入ってからはレストアされ、現在でもランボルギーニの創世記を象徴するアイコンとして、しばしば表舞台に現れている。

40艇のみ生産されたリーヴァ・フェラーリ32
40艇のみ生産されたリーヴァ・フェラーリ32

●フェラーリと名のつくボートは780万円!

 また1980年代末になると、こんどはフェラーリがリーヴァとのコラボレーションに挑んだ伝説的なパワーボート、「リーヴァ・フェラーリ32」を40艇のみながら生産化した。

 もともとこのプロジェクトは、当時「リーヴァ・ヨット」社の会長だったジーノ・ジェルヴァソーニの発案によるもので、最晩年のエンツォ・フェラーリも賛同。世界に冠たる両ブランドの血統を損なわないように、デザイナーとエンジニアのチームが慎重にデザインワークを進めたという。

 その結果、同時代のアイコン的スーパーカー「フェラーリ・テスタロッサ」をイメージしたアグレッシブなプロポーションに、革新的で人目を引く大型カーボンファイバースポイラー、船側や船尾にもテスタロッサを意識したフィンを配するなど、極めて魅力的、かつフェラーリ的なアピアランスが完成に至ったのだ。

 ただしパワーユニットはフェラーリ製ではなく、イタリアの船舶用エンジンメーカーBPM社の「Vulcano 400 V-8」、8リッターのV型8気筒390psエンジンを2機掛けし、54ノット(約100km/h)の最高速度をマークするとされた。

 1990年代初頭には関東某所のマリーナにおいて、さるフェラーリ愛好家の所有するリーヴァ・フェラーリ32が時おり見られる機会があったことから、日本でも記憶している人が多いかもしれない。

【VAGUEからさらなる情報】

 このリーヴァ・フェラーリ32だが、2018年にオークションに出品されている。28艇目となる個体であったが、その落札価格は6万9000ドル。当時の為替で換算して780万円ほどだ。

 エンジンこそフェラーリ謹製ではないものの、コックピットなどのデザインは当時のフェラーリそのもの。なにより跳ね馬を背負った正真正銘のボートであることを考えれば、お買い得ともいえる落札価格ではないだろうか。

【画像】フェラーリやランボルギーニの名のついたボートとは(32枚)

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