自動運転車の事故、選手村の実態は? 「交通環境もしっかり整えないと難しい」 今後の課題はどこに

2021年8月26日午後、東京2020パラリンピック競技大会の選手村で低速自動運転車「eパレット」と選手が接触する事故が起きました。実際の選手村の様子を交えて、今後の自動運転における課題を自動車評論家・国沢光宏氏が解説します。

低速自動運転車との接触事故、今後の課題は?

 東京2020パラリンピックの選手村で起きた低速自動運転車「eパレット」の事故、さまざまなメディアで取り上げられ、車両を開発したトヨタに対する批判も出ていた。
 
 確かに事故直後は情報も少なく、さまざまな受け取り方が出てきてしまう。4日経って状況が“ほぼ”判明したのでレポートしてみたい。
 
 最後まで読んで頂ければ解る通り、自動運転の難しさを感じさせます。

自動運転社会の実現はさまざまなハードルを乗り越えなければいけない(画像は事前取材会の様子)
自動運転社会の実現はさまざまなハードルを乗り越えなければいけない(画像は事前取材会の様子)

 まず自動車ジャーナリスト・岡崎五朗氏が提供してくれたeパレットの運行動画(2倍速)を見てみた。

 場所は選手村の中、一応道路や横断歩道という造りながら、関係者によれば公道ではないため、eパレットは基本的にどこを走っても良いし歩いても良いという。

 大きいショッピングセンターや遊園地で、子供を乗せたトレインの遊具を走らせるようなもの。

 動画を見れば解る通り、少なからぬ歩行者は横断歩道を渡る気が無い。eパレットの直前を横切ろうともしてくる。

 当然ながらeパレットは自動停止します。発進はeパレットに乗っているオペレーターがおこなう。

 オペレーターが操作をおこなわないと歩行者が車両の近くにいたら、いつまでも走り出せない。

 スマホを持って脇見している人が接近しているけれど、自動運転だったら停車しただろう。

 また、横断歩道の手前に安全運行をサポートする誘導員がいる。

 自動運転は「横断歩道を渡ろうとしている人」だと判断するため、安全確認後、後ろに移動している。

 動画を見て解る通り、今回の選手村は自動運転をする環境としては条件が厳し過ぎるんだと思う。

 だからこそ緊急時に停止させる役割だったオペレーターが、自分の判断によって発進操作していたそうだ。

 今回、こんな状況の中で接触は起きた。eパレットは横断歩道の手前で一旦停止。誘導員も安全だと判断したらしい。

 オペレーターが手動で発進して右折。その直後、左前あたりに歩いてきた人が接触して転倒してしまう(接触時は歩行者を検知したため自動減速中。そもそも交差点なので歩くくらいの速度だったようだ。1~2km/hという情報も)。

 さて、日本の警察は「事故防止」より「誰が悪いか」を決めるコンセプト。

 被害が出たら必ず悪いヤツがいて、そいつを懲らしめたら事故が無くなるという概念です。

 ただ新しい技術は航空機事故と同じく“ 犯人捜し”より事故の原因を見つけ、次の事故を起こさないようにすることこそ重要。今回の事故を受け、警察が捜査を開始した。

 皆さんどう思われるだろうか。

 eパレットの自動運転システム、しっかり稼働しているし、接触したのはマニュアル操作時。車両を開発した人を犯人にすることなど難しい。

 オペレーターも日常的におこなっていた操作であり、はたまた積極的に車両へ当たってくる人がいると予想しにくい。車両の近くに人が居たら動けないとなれば、移動手段にならないです。

 なかには「誘導員がしっかりガイドすればいい」と思うだろうけれど、eパレットに近づいたら自動停止するため、ある程度の距離から声を掛けるしか無い。

 また今回の柔道選手、白杖を持っていなかったため、配慮も出来なかったという。

 参考までに書いておくと、視覚障害を持っている人が公道を単独移動する際は、道交法第14条で白杖の使用が義務づけられている。

 ただ柔道選手は全盲の人では無く、視野狭窄(見える部分が限られてしまう)ということ。

 おそらく注意すれば白杖なくても移動出来たんだと思う。たまたまeパレットや誘導員が視野狭窄の見えない部分に入ってしまったのかもしれない。

 では、こんな状況で発生した接触、果たして誰が悪いか決められるだろうか。皆さん、一生懸命やっている。

 ちなみに運行再開するための対応は、「1)eパレットの走行音を大きくする」「2) 誘導員を3倍に増やして交通インフラを確保する」「3)選手や関係者には大会組織委員会から『移動時のルールを周知してください』というお願いを出す」、というもの。

 自動運転の実現には交通環境もしっかり整えないと難しい、ということがよく解ります。

【動画】これは自動運転難しい? 選手村のリアルな様子を動画で見る!

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コメント

9件のコメント

  1. いつも楽しく読ませて頂いています。
    今回の件は選手村内の歩行者ルールがどうなっていたのかが重要かと思います。歩行者は安全の為、横断歩道を渡るように指示されていたなら歩行者がアウトでしょう。でも動画を見る限り無法地帯となっていたのでルールがあれば守らせない運営側が悪い気もします。
    自動運転をするのは技術的には可能と思いますが、どうやってルールを守らない人間とルール遵守する機械を共存させるのか今後の課題だと思ってます。

    • 交通環境といっても、eパレットの事故はオリンピックではなくパラリンピック中の話だろ?
      しかし横断歩道を渡りましょうと言っても、目の見えない人にはどこが横断歩道かが分かりずらい。
      だけど健常者なら横断歩道はわかるし、来た車もわかるから横断歩道を使わなくても車道の”横断”は障がい者よりは安全にできる。(スマホを見ながら歩いているのは、健常者であっても周りが見えないからその時は障害者ともいえる。)
      ルールを守ると言っても健常者と障碍者とではそもそもハードルが違うのでは?
      そうなるとスマホの使用禁止とかならまだしも、”ルール”を守るということ自体に無理があるのでは?

  2. 性善説で語らないと自動運転は成立しないの?
    それじゃぁ、100年経っても実用化出来ないよね。
    ある程度の安全策を施した上で、轢かれたら人が悪いという位の法改正が無いと誰も走らせないよね

    • 性善説を唱える以前の問題として
      轢かれた人にも罪はあったとしても悪人呼ばわりするのは間違ってると思います。

  3. 今回の事故で、トヨタ側の技術的な非はないでしょう。
    動画のような状況で、安全に重きを置いた自動運転だけでは、止まってばかりでまともに進むのも大変だと思います。だからこそ人間が目視での安全確認のうえで発信させるように運用していた。
    事故を起こさないよう対策するなら、人と車が交差する場所を限定させた方がいいでしょうね。

  4. 思うに
    ルール作りとルール周知が整っておらず、
    その上にルールを守る意識を選手村及び会場施設にいる人すべてに共有出来ていないからでしょう。
    ルールに従って競技をおこなうスポーツマンなのだから
    ルールがしっかり決められておれば
    当然人並み以上に守ろうという意識はあってしかるべきなのだが、
    場当たり的に日本の交通ルール基準で選手村の交通機関を作っただけみたいに見える。
    その上で警備員や誘導員頼みで運用しようとしてる、
    運用における交通ルールを選手や関係者にしっかり説明して理解を求めていないのでは?
    ちゃんと説明してなくて意思疎通も出来て無いのなら
    関係者と言えど自国の交通マナーの感覚で勝手に歩き回るからそれを制するなんて無理だろうよ。
    自動運転するならそれを制御する側が注意すれば良いのではなく
    周囲の通行者への理解がなければ安全な運航は成り立たないという事が
    トヨタや大会運営側もこれで検めて気づいたんじゃないかと思う。
    障がい者の通行の為にはバリアフリー化は大事ですが、
    こと自動運転車と歩行者の間にはバリアーの必要性があると言えるかもしれませんね。

  5. トヨタ内部では技術的にはもちろん経営的にも大問題になっていると思う。少なくとも担当役員の何人かの首は飛ぶはず。
    よりによって自動運転技術のすばらしさを世界に発信するはずのパラリンピックの場で、目玉である「e-Palette」が障害者アスリートを傷つけてしまったのだから。
    本来ならば、御殿場でつくっているWoven Cityあたりで十分実験し安全性を検証してから出すべきだった。Woven Cityはトヨタ関係者や民間でも希望者だけを集めた実験環境で、仮に事故を起こしても隠したりあるいは労災としての処理が可能?
    しかも、事故の原因を自動運転を標榜していたにもかかわらず、ヒューマンエラーに帰するような素人だましの言い訳をしている。
    さらに、当面の対応策として「監視人を増やし、警告音の大きさを2倍にする!」、トヨタの安全技術のレベルは150年前の「赤旗法」の時代と変わらないといわれても反論できないのでは。

  6. e-パレットを開発しているトヨタの敷地は歩行者でなく車優先です。健常者なら車が地k付け場止まれるが視覚障害のある人はどうでしょう?そういう環境で開発しているから車はセンサーで止まるけどオペレーターは歩行者より車を優先する社風があるのでは?

  7. おしでめくらでつんぼも居る。差別用語だと言う連中ほど障害者の現実をマトモに見る気が無い。先ず此処がこの社会の問題。

    障害者の身体事情は他人に瞬時には見分けられない。従って健常者の中で移動などの社会活動を行うには障害者が社会に合わせざるを得ない。

    技術進歩発展は素晴らしい事だ。障害者が障害者の程度を電波信号で発信し車がキャッチし障害者に合わせた注意にプログラムすれば何の問題も無い。そうした電波信号も無く横断歩道も無い所で異常接近する人があればホーンを鳴らし注意を促すべし、酔っ払やテロかもも知れません。

    なまじ人が扱うからこそ事故になる。歪んだ人権環境意識がどれ程技術発展に悪影響を及ぼし人を不幸に陥れて居ることか。