かつての「暖気運転推奨」が激減したのはなぜ? 条例で禁止も クルマ側は問題ない?

暖気運転しない場合、クルマに負担はかからない?

 暖機運転が推奨されなくなったもうひとつの理由として、クルマ自体の性能の進化が考えられます。

 近年のクルマでは、基本的にあらゆるパーツが電子制御されており、例えばパワーステアリングなども、昔はオイルを要する油圧式でしたが、近年ではオイルを必要としない電動式となっています。

 電子制御のパーツでは、パーツが温められていない状態からでも、それぞれの性能を十分に発揮できるようになっているうえに、オイルも進化しており、冷えた状態でも円滑に循環するようになっています。

 前述のように、クルマやオイルがどのような状態であっても、パーツの性能を発揮できるように進化していることから、暖機運転は近年のクルマには不要であるといえるでしょう。

 ただし、クルマのことを考えた場合には、暖機運転はしても損はないと考えられるうえに、一部では例外的なケースも見受けられます。

長時間の暖気状態(アイドリング)を条例で禁止している場合もある
長時間の暖気状態(アイドリング)を条例で禁止している場合もある

 前出の整備士は、暖機運転の例外的なケースについて以下のように話します。

「冬などの寒い時期に限っては、エンジンルーム内の温度が非常に低温になっていることもあり、パーツ類やオイルが過剰に冷却されていることが予想されます。

 そうした状況では、できる範囲で暖機運転をした方が望ましいでしょう」

※ ※ ※

 暖機運転は、環境問題への配慮やクルマの進化から、現在は推奨されている行為ではありませんが、現在では代わりに「暖機走行」を推奨している識者も多いようです。

 暖機走行とは、エンジンをかけて発進後、数分間は交通を妨げない程度に、低めの回転数を意識して運転することです。

 実際にトヨタ「ヤリス」の取扱説明書では「エンジンが冷えた状態で空ぶかししないでください」(ガソリン仕様の取扱説明書より)などと記載されています。

 そのため、排気ガスや騒音といった環境問題もクリアしつつ、暖機走行をおこなうのがクルマにとって優しい行為といえるかもしれません。

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