内容的にはかなりの力作? 攻めたデザインの派生車3選

既存のクルマをベースに、一部分を変更して仕立てられたモデルが派生車です。ゼロから開発するよりも開発費などのコストが抑えられ、ラインナップの拡大ができることから、これまで各メーカーとも生産してきました。そして、派生車のなかにはかなりデザインに凝ったモデルも存在。そこで、攻めたデザインの派生車を、3車種ピックアップして紹介します。

攻めたデザインを採用した派生車を振り返る

 新型車をゼロから開発するには、莫大な費用と時間、労力が伴います。しかし、既存のクルマをベースに一部分を変更して新たなクルマを仕立てれば、開発費や製造コストも削減でき、ラインナップの拡充も容易になります。

 そうして誕生したモデルを一般的には派生車と呼び、各メーカーともこれまで盛んに販売してきました。

ユニークなスタイリングで、かなり凝ったつくりの派生車たち
ユニークなスタイリングで、かなり凝ったつくりの派生車たち

 派生車のなかにはさまざまな種類があり、フロントフェイスのみを変えたモデルや、ボディ形状まで変えたモデルなど、変更の度合いは千差万別です。

 さらに、かなりデザインに凝った力作といえる派生車も存在。そこで、攻めたデザインの派生車を、3車種ピックアップして紹介します。

●日産「マイクラ C+C」

3代目「マーチ」をベースに大胆に仕立てられた「マイクラ C+C」

 日産のエントリーモデルである「マーチ」は現行モデルが4代目にあたり、国内仕様はタイで生産されていますが、ほかにも複数の国で生産されて各国で販売するグローバルカーです。

 1982年に誕生した初代から一貫してグローバルカーであり、海外では「マイクラ」の名で展開されてきましたが、現在は一部の国ではマイクラは独立したモデルとなっています。

 このマイクラでユニークな派生車として誕生したのが、「マイクラ C+C」です。

 2005年に登場したマイクラ C+Cは、3代目マーチをベースにしたオープンカーで、日産とドイツのコーチビルダーで、フォルクスワーゲン車など数多くのオープンカーの製作を手掛けてきたカルマン社によって共同開発されました。

 基本的なデザインはマーチと共通で、ルーフは後部のトランク内に格納できるガラスルーフを備えた、4シーターのクーペカブリオレに仕立てられています。

 生産は英国工場でおこなわれ、当初は欧州専用モデルとして発売されましたが、2007年に日本でも輸入車として1500台が限定販売され、価格は249万9000円(消費税5%込、AT車、MT車とも)でした。

 22秒でフルオープンが可能な電動ガラスルーフによって、手軽にオープンエアモータリングが楽しめ、日本でも好評でしたが、ユニークなのはクローズド状態のボディで、違和感を覚えるほど斬新なフォルムです。

 エンジンは国内では設定されていなかった最高出力110馬力の1.6リッター直列4気筒DOHCを搭載し、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定。

 また、クルマのキャラクター以上に評価が高かったのがハンドリングで、欧州仕様のサスペンションによる優れたコーナリング性能を発揮しました。

 なお、マーチでは2代目でヒットした「カブリオレ」、3代目ではマイクラ C+Cと、2代にわたってオープンモデルの派生車が設定されましたが、現行の4代目では設定されていません。

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●ダイハツ「コペン クーペ」

世にも珍しいショートボディのファストバッククーペ、「コペン クーペ」

 ホンダは「S660」を2022年3月で生産を終了すると発表し、すでに生産予定分が完売したことから、受注も停止しています。

 そのため、現状では新車で購入できる軽オープンカーはダイハツ「コペン」のみとなってしまいました。

 2014年に発売された2代目コペンは、スチール製シャシに樹脂製外板パーツを取り付ける構造のボディで、「ドレスフォーメーション」と呼称される着せ換えも可能なことから大いに話題となりました。

 オープン2シーターというコンセプトは初代と変わらず、ボディが当初3タイプあり、それぞれのデザインテーマは、躍動感あふれる「ローブ」、親しみやすい「セロ」、新しいジャンルを拓く「エクスプレイ」で、2019年10月には第4のモデルとしてスポーツマインドあふれる「GRスポーツ」を追加。

 そして、2018年12月には、セロをベースにした派生車の「コペン クーペ」が発表されました。

 オープンカーからクーペ化する手法は、ルーフ部分からテールエンドまで一体成型されたボディパネルを搭載しているのですが、なんとカーボンファイバー製(CFRP)です。トランクリッドは廃止され、代わりにリアウインドウが開閉可能なハッチバックとなっており、荷物の出し入れを可能にしました。

 ほかにも特別な装備として、モモ製ステアリングホイールやBBS製鍛造アルミホイール、LSDなどを標準装備。さらに世界初の防曇コート付フロントガラスを採用しています。

 コペンクーペは限定200台で販売され、価格は248万4000円(消費税8%込)からと、ベース車に対して40万円ほど高額ですが、CFRP製のルーフと装備を考えると、意外とリーズナブルだったといえるでしょう。

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●ミニ「ミニ クーペ」

かなり大規模にボディに手が入れられていた派生車の「ミニ クーペ」

 1959年に誕生した不屈の名車であるBMC「ミニ」のDNAを受け継いだのが2001年にBMWから発売された「ニューミニ」です。

 ニューミニはオールドミニをオマージュした外観デザインとシャープな走りによって世界的に大ヒットを記録。2006年に登場した第2世代では初代からのキープコンセプトながら、さまざまなボディタイプの展開を開始しました。

 そのなかでも、かなり異端なモデルとして評されたのが2011年に登場した「ミニ クーペ」です。

 ミニ クーペのボディは3ドアハッチバックがベースで、リアセクションはなだらかに傾斜するハッチバックを採用。また、全高が低く抑えられたルーフに合わせてAピラーの角度を寝かせるなど、キャビンは全面的につくり替えられています。

 内装の意匠は3ドアハッチバックと変わっていませんが、リアシートを撤去して2シーター化されており、後部座席部分はすべて荷室とされました。

 グレードは「クーパー」、「クーパーS」、よりハイパフォーマンスな「JCW(ジョン・クーパー・ワークス)」が設定され、スタンダードグレードである「ワン」は除外されるなど、スポーツカー色を強調。

 ミニクーペはミニをベースとしたFF2シータースポーツカーというモデルでしたが、異色ともいえるデザインからか人気となることはなく、2013年登場の第3世代では設定されませんでした。

※ ※ ※

 最後に紹介したミニ クーペでは、ざっくり見積もってもボディパネルの半分は新規で製作されており、コスト的にはかなりかかっていると考えられます。

 ほかにもトヨタ「bBオープンデッキ」やホンダ「N-BOX スラッシュ」なども、派生車ながらボディパネルの多くが新作されており、かなりつくり込まれているといえるでしょう。

 こうした大胆な変更をともなう派生車は意外と多いのですが、なかなかヒットに結びついた例は少なく、短命に終わっているモデルばかりです。

 しかし、見た目には非常に面白いので、話題性という点ではアリなのかもしれません。

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