なぜメルセデス・ベンツが10年後EV専業メーカーに!? 衝撃の中身と急速なEVシフトの理由とは

メルセデス・ベンツは2021年7月22日、「Mercedes-Benz prepares to go all-electric」という発表をおこないました。それによると、10年後の2031年に、すべてをEV(電気自動車)にする準備をおこなうという「EVシフト」を宣言しました。実際、そのようなことは可能なのでしょうか。その発表をおこなったメルセデスの意図とは?

日本での乗用車におけるEV比率は現状わずか0.7%

 メルセデス・ベンツから驚きの発表がありました。それが、2021年7月22日の「Mercedes-Benz prepares to go all-electric」というタイトルの発表です。

 直訳すれば「メルセデス・ベンツは、オール・エレクトリックへの準備を進める」というものになります。

2021年4月に世界初公開されたメルセデス・ベンツのフラッグシップEV「EQS」。欧州での納車はこの秋から始まる予定だ
2021年4月に世界初公開されたメルセデス・ベンツのフラッグシップEV「EQS」。欧州での納車はこの秋から始まる予定だ

 オール・エレクトリックとは、全EV(電気自動車)化ということが考えられます。つまりメルセデス・ベンツは「市場の状況が許すかぎり」という前提条件を添えつつも「10年後には、すべてをEVにする準備を進める」というのです。エンジン車をやめてEVへという、いわゆる「EVシフト」の宣言です。

 これは自動車業界にとっては激震ともいえる発表です。政治家ではなく、実際にクルマを販売している自動車メーカーのメルセデス・ベンツがいっているところに重みがあります。では、その宣言が、どんな内容かと、以下に箇条書きしてみました。

・2022年までに、すべてのセグメントにEVを投入する。
・2025年以降に発売される新たなアーキテクチャー(プラットフォームを指しているようです)は、すべてEV専用となる。
・2025年に3つのEV専用アーキテクチャーを発表する。
・3つのアーキテクチャーは、中型から大型の乗用車用、AMG用、バン用。
・10年後は、すべてがEVに切り替わる準備をする。

 しかも、こうした計画を実現するために、モーターを製造する会社の買収やサプライヤーの垂直統合の推進、バッテリー開発のために欧州のパートナーとの提携、8つのバッテリー工場建設、充電インフラの拡大、1000km以上の航続距離を持つEV「VISION EQXX」の開発、世界中の工場でのEVの生産、バッテリーのリサイクルの研究・開発、従業員への研修や新規人材の獲得なども考えられているのです。

 さらに「メルセデス・マイバッハやAMGのようなハイエンドモデルのEV比率を高めて、純利益を増加させる」「デジタル・サービスからの収益の増加」という考えもあります。お題目ではなく、しっかりとした筋道のある計画であることがわかります。

コンパクトSUV型EV「EQA」の透視図。日本でも2021年4月にメルセデスのEV「EQシリーズ」の第2弾として登場している
コンパクトSUV型EV「EQA」の透視図。日本でも2021年4月にメルセデスのEV「EQシリーズ」の第2弾として登場している

 しかし、日本に住む私たちにとって、今回のメルセデス・ベンツの発表に、いまひとつリアル感を抱けない人も多いはずです。

 なぜなら、日本では、すでに約10年も前から日産「リーフ」や三菱「i-MiEV」というEVが販売されています。しかし、直近(2021年6月)の国内販売を見ると、軽自動車を除く乗用車のうちEVの割合は、わずか0.7%(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会 燃料別販売台数より)にすぎません。

 ちなみに、エンジン車は51.2%、ハイブリッドは40.2%、ディーゼルは6.5%、PHVは1.2%、FCVが0.2%です。

 ざっくりいえば、電動化率は約42%といったところ。軽自動車が省かれていますが、現時点での電動化率が40%台というのは世界でも有数の高さではないでしょうか。電動車は増えているのですが、EVそのものの普及は停滞しているのが現実です。

 そうした現状を目の当たりにする日本の人間としては、今回のメルセデス・ベンツの発表は、いささか先鋭的すぎるのではとの思いがよぎります。

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2件のコメント

  1. まあ、言葉だけならどうとも言える訳で驚く事ではない、
    あくまでベンツがEU向けに欧州委員会の環境政策発表に歩調を合わせたアピールをしたに過ぎず、
    2030年までのEVシフトの様子をみつつも
    それまでに全ラインナップをEV化出来る 準備 が出来ますと言ってるだけで、
    あくまで準備であって、EVしか売らないとは一言も言ってない処がミソでしょ、
    EVシフトがEUの思惑通りには進まない状況であれば、
    ドイツ本国、EU圏以外の生産部門は例外的にICEも当面作り続けるだろうね
    (意訳するに、開発はしないが生産しないとは言ってない模様)
    BEVのみでは何かと不便な商用トラック部門では
    既にダイムラートラックをグループ内の別企業として切り分けており
    そちらでは燃料電池トラックなどのBEV以外の次世代パワーユニットの開発も進めてる訳ですし、
    ちゃんとした二枚舌を使い分けてますよ。

  2. EVシフトは、当然ながらICEの部品は不要。 現状は、大量生産で、ICEの部品は廉価になっているが、EVがコモディティー化で廉価に向かい、ICEが今後部品メーカーの撤退や新規開発がコスパの悪化で撤退となっていき、どこかで逆転が起こり始める。
    どうもICE肯定派は、現在のガソリン供給体制や、ICEの部品供給体制が減量しても維持できると思っているらしい。
    ガソリン価格が200円や300円や配給制になっても乗るのだろうか。
    当方、片田舎と言ってものぞみ停車駅まで在来線で30分。その駅まで徒歩10分。 名神高速ICまで車で5分の位置だが、GSの撤退で給油難民化が目立ってきた。 AM7-PM7時の店やセルフだらけ。
    安いセルフには金曜日は長蛇の列。
    セルフ嫌いの家内は早々にギブアップでリーフにした。
    当方PHEVで45リッタータンクを満タンにすると、通勤にはガソリンは使わないから一ヶ月に一回の給油。
    自宅は太陽光発電+V2Hで接続できるから400V充電は早い。
    ICE車も2台持っているが、趣味車以外はBEVかPHEV(本当はBEVが欲しい)にする。
    欧米中が舵を切れば日本市場は従うしかない。

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