もはや車が買える値段! 「ブガッティ」や「300SLR」のチルドレンズカーの深遠なる趣味の世界とは?
コレクターズアイテムとして欧米では愛好家も多いチルドレン・カー。その深遠なる趣味の世界を、対照的なブガッティとメルセデス・ベンツの2台のチルドレン・カーを俎上にあげて紹介しよう。
「キッズカー」よりちょっと大人の乗り物「チルドレンズ・カー」
「チルドレンズ・カー」ないしは「ジュニアカー」は、しばしば呼ばれる「キッズカー」よりは、少しだけ対象年齢が高めのものを指していう言葉のようだ。
これらのモデルの一部には、モデルとなる「ホンモノ」のクルマの再現度や作り込みの精巧さなど、子供用のおもちゃの領域をはるかに凌駕し、コレクターズアイテム、ないしはアート作品のレベルに達したものも少なくない。
また、自動車メーカーのなかでもプレミアム志向の高い会社では、裕福なエンスージアストを対象としたチルドレンズ・カーをオフィシャルとして生産・販売する事例が続々と増えている。
そして、これらのチルドレンズ・カーだけを蒐集するコレクターは欧米に数多く存在するばかりか、専門のミュージアムもいつくか設立されており、国際オークションでは重要なアイテムとして取引されているのだ。
今回VAGUEでは、クラシックカー/コレクターズカーのオークション業界における世界最大手、RMサザビーズがアメリカ/イギリス両本社を拠点に同時開催したオンライン限定オークション「OPEN ROADS, MAY」に出品された、2台の「小さな名車」たちのオークションをレビューしよう。
●ブガッティ「タイプ35 グランプリ チルドレンズ・カーby HARRINGTON」
最初に紹介するのは、RMサザビーズ米国本社から出品された1台。イギリスに本拠を置く「グループ・ハリントン(Group Harrington)」がプロデュースした、キュートな魅力あふれるブガッティ・グランプリ型のチルドレンズ・カーである。
グループ・ハリントンは、人気のクラシックカーのためにステンレス製のバンパーを生産・販売するサプライヤーとのこと。その傍ら長年培った技術力を生かして、今世紀初頭からは「Harrington Junior Car」のブランドのもと、往年の名車たちをモデルとした高級なチルドレンカーも製作しているという。
現在では、AC「コブラ」を模した「COBRA 289」やジャガー「Eタイプ」を模した「Series 1」。フェラーリ「250GTスパイダー・カリフォルニア」を模した「Spyder」。メルセデス・ベンツ「300SLロードスター」を模した「300」。そして最初期のランドローバー(ディフェンダー)を模した「Land Junior」など数多くのラインナップをそろえ、いずれも1万ドル(邦貨換算約110万円)以上で販売されていることが公式HPにて確認できる。
今回のオークション出品車は、彼らにとっての第1作にあたるモデル。ブガッティ「タイプ35(T35)」をモデルとし、2003年から2009年にかけて生産された約150台のうちの1台である。
ただ「T35」を名乗ってはいるものの、その作りはかなり大らかといわねばなるまい。現在のブガッティ・オトモビル社が自らラインナップにくわえている「Bebe II」のごとき、厳密に作り込まれたT35の縮小版ではなく、T35シリーズ(T36からT39も含む)、「T37」、「T51」、さらに「T59」からなる一連の「グランプリ・ブガッティ」全体へのオマージュとみる方が自然にも映る。
たとえば「ブルックランズ」スタイルのウインドスクリーンやエンジンフードの革ストラップとルーバーは、グランプリ・ブガッティ全体の特徴である一方で、8本スポークのアロイホイールは「T35B/T35C」およびT51風。また「T59GP」を思わせる、サイドエキゾースト風デコレーションも施されている。
加えて、グランプリ・ブガッティの特徴であるアルミ磨きだしのダッシュボード中央には、ヴィンテージ期の様式を忠実に再現したメーターが置かれるほか、ボディサイドに露出したハンドブレーキ用レバーも、グランプリ・ブガッティのそれを彷彿とさせる。
原動機はブラシレス36V電動モーター。このセットアップのために、12V電池を3基搭載することになっており、バッテリーは最近交換をすませたばかりとのことである。
RMサザビーズの公式WEBカタログでは「プチ・ブガッティスティ(Petit Bugattisiti=小さなブガッティ愛好家)のための正しいサイズの1台」というキャッチコピーとともに、1万5000-2万ドルというエスティメート(推定落札価格)を設定。そして実際の競売では3万ドル、日本円に換算すれば約330万円で落札されることになった。
正直なところ、エスティメートの段階からかなり強気な値付けとも感じられてしまったのだが、どうやらモデルとなった名車の再現度とコレクターの「熱度」は必ずしも一致しないことが推測できる。
この分野では人気ブランドとなった「ハリントン」製チルドレンズ・カーの第一世代にして、生産された数がもっとも希少なモデルであることが、コレクターの求める要素ということなのだろう。
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