もはや車が買える値段! 「ブガッティ」や「300SLR」のチルドレンズカーの深遠なる趣味の世界とは?

精巧だから高額というワケではない「チルドレンズ・カー」

 オンライン限定オークション「OPEN ROADS, MAY」に、RMサザビーズ英国本社から出品されたのは、1955年に開催された「ミッレ・ミリア」にて、故スターリング・モス卿/デニス・ジェンキンソン組が総合優勝を果たした、メルセデス・ベンツ「300SLR」を、1/2スケールで復刻した魅力的なチルドレンズ・カーであった。

 シャシはパウダーコートされたスティールで組み立てられ、ボディワークはグラスファイバーで作られている。ノーズと両サイドには、のちにメルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン」限定バージョンの車名にもなった「722」のゼッケンナンバーが麗々しく掲げられる。

 これは1955年ミッレ・ミリアにて、ブレシアのスタートが朝7:22だったことを意味するもので、いまなおメルセデスのアイコンとなっている数字なのだ。

スターリング・モスにのサインを持ち、素晴らしいハンドメイドのチルドレンズ・カーの1台(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
スターリング・モスにのサインを持ち、素晴らしいハンドメイドのチルドレンズ・カーの1台(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●メルセデス・ベンツ「300SLR 722 チルドレンズ・カー」

 このチルドレンズ・カーは、もちろん実走可能なものである。リアに搭載される排気量48ccの単気筒エンジンに、遠心式のクラッチを組み合わせることで、最高速度は15mph(約24km/h)に達するという。

 さらに、メカニカル式ピストンキャリパーを取り付けた、シングルのディスクブレーキが装備され、12インチのスティールホイールおよびバルーンタイヤに組み合わされている。

 一方インテリアに目を移すと、シートは手縫いのネイビーレザーとタータンクロス柄ファブリックのコンビ。これは、オリジナルの300SLRへのオマージュである。また、フロアにはグレーのカーペットが敷かれ、その両端およびサイドパネルはダイヤモンドキルト仕上げのレザーで設えられている。

 ステアリングホイールは、4本スポークのポリッシュアルミ。加えて「722」300SLRを特徴づけていたエアロスクリーンは、プレクシグラスで再現された。

 RMサザビーズ英国本社の公式WEBカタログには、製作したコンストラクターに関する記述はとくにないようだが、曰く「ビルダーによって製作された3つの『ハーフスケール』チルドレン300 SLRのシリーズのなかでも、唯一のプリ・プロダクションモデル」とのこと。プラークには、故スターリング・モス卿本人によって、サインが記されている。

 このメルセデス・ベンツ300SLRジュニアは、偉大なスターリング・モス卿によって認証されたサインを持つことだけにとどまらず、ディテールに至るまで入念な仕上げが施された、素晴らしいハンドメイドのチルドレンズ・カーといえよう。

「クラシック・レーシングカーや、メルセデス・ベンツ各モデルのエンスージアストが自身のコレクションに加えるにはもっとも楽しい選択のひとつであるとともに、もちろん未来のレースカーエンスージアストがドライブして楽しむにも理想的」

 カタログでは、そんな謳い文句とともに、5000-1万英ポンドのエスティメート(推定落札価格)が設定されていた。そして、オークションでは1万800英ポンド、すなわち日本円換算すれば約168万円で落札されるに至ったのだ。

 これだけ見れば相当な高価格で、たしかにエスティメートの上限も上回っているものの、アメリカで出品された「ハリントン」のブガッティ風チルドレンズ・カーと比べたら、かなり本格的な作りであるにもかかわらず、むしろリーズナブルにも映ってしまう。

 おそらく、この世界の門外漢である筆者には分からないことなのだろうが、モデルとなったホンモノの再現度や出来栄えの良さ以上に、チルドレンズ・カーのコレクターにとっては重要な要素があるということと思われる。

 やはりチルドレンズ・カーの世界は奥が深い……、と感心させられてしまうオークション結果であった。

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