まさにメーカー渾身の作だった? 優れたパッケージングの車3選
クルマのボディサイズには、さまざまな理由で制約があります。とくにコンパクトなクルマでは、いかに広い室内を実現するかが重要です。そこで、優れたパッケージングのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
優れたパッケージングと評されたクルマを振り返る
日本のみならず海外でもクルマのサイズは法律で定められています。また、国によって異なりますが、道路環境や自動車メーカーの生産設備によって、ある程度のサイズに限定されるケースもあります。
日本の道路環境ではあまりにも大きいクルマを自家用車と使うことは敬遠されがちで、コンパクトカーや軽自動車は、まさに日本でベストマッチといえるでしょう。
そうした小型のクルマでは、安全性を考慮したうえでいかに広い室内を実現するかが、販売台数にも影響するため、各メーカーとも工夫をこらしています。
そこで、優れたパッケージングと評されたコンパクトカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「フィット」
ホンダは1972年に初代「シビック」を発売し、その後は革新的なデザインを採用した初代「シティ」が誕生。そして「ロゴ」へとエントリーカーへの系譜が受け継がれました。
しかし、ロゴは単にコンパクトで安いだけのイメージで、取り立てて秀でたところは見受けられずヒットしませんでした。
そこでホンダは、シャシからエンジンまですべてを一新した新時代のコンパクトカー、初代「フィット」を2001年に発売。
ボディサイズは全長3830mm×全幅1675mm×全高1525mm、ホイールベース2450mmと、ロゴよりもひとまわり大きくなったのと同時に、旧来のコンパクトカーの印象が強いデザインだったロゴに対して、ワンモーションのスタイリッシュなフォルムに変貌を遂げました。
そして初代フィットの最大のトピックスは、燃料タンクを前席下に収める革新的な「センタータンクレイアウト」を採用したことで、クラストップの広い居住空間と荷室を実現。
さらに、燃料タンクの四方をクロスメンバーで囲うことで、シャシの高剛性化が可能になりました。
なお、同様なレイアウトは軽自動車の「Nシリーズ」も採用しています。
パワーユニットは、当初1.3リッター直列4気筒「i-DSI」を搭載し、1トン未満の車体に86馬力の十分なパワーと、23km/L(10・15モード)の低燃費を達成。
初代フィットはスタイリッシュなボディ、広い室内、優れた経済性と、コンパクトカーに求められるニーズすべてを高い次元でバランスさせたことで発売直後から人気車種となり、2002年にはトヨタ「カローラ」を抜いて日本国内での年間販売台数トップに躍り出る大ヒットを記録しました。
2020年2月には、初代からコンセプトを継承した現行モデルの4代目が登場し、さらに世界各地でフィットから派生したモデルが販売されるなど、ホンダの基幹モデルとなっています。
●日産「キューブキュービック」
日産は1998年に、2代目「マーチ」をベースにしたトールワゴンの初代「キューブ」を発売。コンパクトなボディながら広い室内空間を実現したことでヒット作になりました。
そして、2002年には「箱」をモチーフにした外観デザインに一新した2代目が登場。
外観はまさにキューブという車名にふさわしい直線基調のフォルムで、左右非対称のリアゲートが斬新な発送でした。
また、箱型のボディは四隅の見切りが良いということもあって、幅広い年齢層のユーザーから高い支持を得て、初代以上のヒットを記録。
そして2003年には、この2代目キューブをベースに、ホイールベースを170mm延長して3列シート7人乗りとした「キューブキュービック」が登場しました。
ボディサイズは全長3900mm×全幅1670mm×全高1645mm、ホイールベース2600mmで、外観はキューブと明確な違いは無く、リアドアが3列目シートの乗降性を考慮して長くなっている程度です。
3列目シートの居住性は緊急用というレベルで荷室もごくわずかな容量でしたが、全長4m未満で3列シート実現したパッケージングは高く評価されました。
キューブキュービックはコンパクトミニバンとして一定の人気を獲得しましたが、2008年に3代目の登場で生産を終了。一代限りで消滅してしまいました。
●トヨタ「iQ」
次世代のシティコミューターとして1998年に、「スマート」ブランドから2人乗りのマイクロカー「シティークーペ」(後に「スマート フォーツー」に改名)が誕生しました。
軽自動車よりも全長が短いスマートは日本でもヒットしましたが、2シーターということからユーザーは限定的だったといえます。
そこでトヨタは2008年に、マイクロカーでありながら3+1と斬新なレイアウトの4シーターとした「iQ」を発売。
ボディサイズは全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmと、全長は軽自動車よりも40cm以上も短く、この室内に4人分のシートを収めるためにさまざまなアイデアが詰め込まれていました。
エンジンは1リッターと1.3リッターの直列4気筒を設定し、iQ専用に設計されたトランスミッションによってフロントタイヤをエンジンよりも前方に配置。
さらに新開発の小型エアコンユニットを採用したことで、助手席足元の空間の拡大が可能になりました。
また、燃料タンクは前席床下に格納し、運転席と助手席のシートバックを極力薄型化することで、リアシートのスペースを確保。
後席とリアハッチのクリアランスがわずかだったことから、後席乗員を保護する世界初の「リヤウインドウカーテンシールドエアバッグ」を全車標準装備するなど、安全性についても十分に配慮されていました。
iQの優れたパッケージングは国内外で高く評価されましたが、快適に乗れる限界は大人3人までだったことと、日本では価格面から軽自動車ほどのアドバンテージがなく、2016年にフルモデルチェンジすることなく生産を終了しました。
異例ともいえるほどiQ専用に開発された技術は数多く、かなり高コストなモデルだったことがうかがえます。
※ ※ ※
コンパクトなクルマの開発は日本のメーカーが得意としていますが、欧州メーカーも数多くのコンパクトカーを輩出しており、現在も高いニーズを誇っています。
そのため、過去に日本の軽自動車が輸出されて欧州で販売した実績があります。
軽自動車というと日本独自の規格なため海外進出しているイメージがありませんが、現在もアジア圏で販売され人気となっているなど、しっかりと海外進出を果たしているのです。
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