今なぜ自動車メーカーが数億円級の新型車を開発? 超高性能車が続々登場する理由とは

今後、量産ハイパーカー市場はさらに拡大する可能性も

 一方、ハイパーカーを量産するといっても、販売価格は数億円レベルに達するケースが多いのが実状です。

 トヨタの場合、2021年からWEC(FIA世界耐久選手権)に「GR010 HYBRID」で参戦。2022年には量産ハイパーカーが登場し、その価格は2億円とも3億円とも、またはそれ以上になるとも噂されています。

トヨタ「GR010ハイブリッド」(WEC参戦車両)
トヨタ「GR010ハイブリッド」(WEC参戦車両)

 一般ユーザー目線では、こうした値付けは法外と思うかもしれませんが、生産台数が少ない超高性能車としては、もはやグローバルでの一般常識の範疇だといえます。

 1970年代から2000年代頃までは、いわゆるスーパーカーの新車価格は高くても5000万円程度でしたが、2010年代に入ると、たとえばマクラーレンに代表される、レーシングカー技術をベースとした新しい量産車の分野がグローバルで拡大し、スペシャルモデルでは1億円越えが目立つようになりました。

 スーパーカーを超える、超富裕層によるハイパーカー市場が形成されたのです。

 各方面に取材してみると、ハイパーカーのユーザーには大きくふたつのケースがあるようです。

 ひとつは、“吊るし状態”で本格的なサーキット走行を楽しむことです。

 一般的にレースマシンの場合、トランスポーターの準備や各種の詳細な整備が必要ですが、ハイパーカーはサスペンションなどの走行モードを切り替えると一般道路や高速道路で乘り心地が良い状態でサーキットまで自走が可能です。

 また、衝撃安全や予防安全など量産車としての高い性能があり、正規ディーラーでの安心したメンテナンスを受けられるというメリットがあります。

 もうひとつは投資として、短期での転売による利益確保を狙うケースです。

 近年、スーパーカーではランボルギーニ「ミウラ」やフェラーリ「ディーノ」の事例にあるように、数十年の保有を経て価格が急騰するコレクタブルアイテムとして価値が急上昇しています。これをハイパーカーでも応用しようという投資戦略もあります。

 いずれにしても、庶民にとっては量産ハイパーカーの実態を肌で感じることは難しいといえます。

 新型コロナ禍で世界主要国がさまざまな経済支援策と打ち、株価の上昇などによってグローバル経済が活性化するなか、ハイパーカー市場も今後さらに活況を呈することになりそうです。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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