今なぜ自動車メーカーが数億円級の新型車を開発? 超高性能車が続々登場する理由とは

プジョーは、WEC(世界耐久選手権)参戦用の新型マシンとして「9X8」を世界初公開しました。このハイパーカーは量産化を前提に開発されているようなのですが、トヨタをはじめ、自動車メーカーがハイパーカー市場に参入するのはなぜなのでしょうか。

レース参戦車なのにリアウイングが無い! 斬新なプジョー「9X8」

 フランスのプジョーは2021年7月6日21時(日本時間)、ル・マン24時間レースなどWEC(世界耐久選手権)用に開発した新型レーシングマシン「9X8」をオンラインで世界初公開しました。

 後輪を出力500kW(680hp)の2.6リッターV型6気筒ツインターボ、そして前輪を200kWの電動モータージェネレーターで駆動するハイブリッド四駆です。

リアウイングがないプジョーの新型レーシングマシン「9X8」
リアウイングがないプジョーの新型レーシングマシン「9X8」

 9X8のアンベール後、プレゼン進行役やプジョー契約レーシングドライバーは、リアウイングがないという特徴だけではなく、エクステリアデザインが過去に成功してきた各種のプジョーレースマシンと比べてまったくの別物であり、「ニューエラ(新世代)」になったという点を強調していたのが印象的でした。

 筆者(桃田健史)の第一印象としては、9X8は“レーシングカーありき”ではなく、“量産車ありき”の設計思想を強く感じます。

 そもそも、新規のLMH(ル・マン・ハイパーカー)とは、耐久レースへの出場マシン向けであると同時に、レースマシンをベースとした量産車を考慮するための車両規定です。

 この考え方は、19世紀末からいままで100年以上にわたる自動車産業史のなかで、自動車レースの在り方を大きく変える、まさに新世代への第一歩だといえます。

 改めて、自動車業界の実情を見てみると、2010年代に入ってから自動車メーカーにとってはCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)という技術やサービス領域において、“100年に一度”と呼ばれる事実上の自動車産業史で初となる大変革期に直面しています。

 さらに、2010年代以降はSDGs(持続可能な成長目標)や、財務状況だけではなく環境・ソーシャル・ガバナンスを重視するESG投資を念頭に置いたグローバルでの急激なEVシフトが起こっています。

 こうしたなかで、自動車メーカーとしては「これから先も自動車レースは必要か?」と自問自答するようになりました。

 たとえばホンダの場合、「2040年までにグローバルでEV/FCV新車100%」を達成するために、1960年代から段階的に参戦していたF1のワークス活動について、2021年シーズンをもって完全撤退することを決定しています。

 F1などのフォーミュラカーの場合、量産車へのフィードバックはエンジンやモーターなど部品や燃料に関する技術領域や、エンジニアのスキルアップがメインとなる一方、耐久レース用のプロトタイプレースマシンは丸ごと量産車への商品化の道筋がつけやすいという考え方が従来からありました。

 それが、新設されたル・マン・ハイパーカー規定によって、レースマシンと量産車との差異がかなり小さくなり、自動車メーカーとしてはレース参戦の意義をユーザーや株主に対して説明しやすくなったといえます。

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