昔はステータスシンボルだった? 左ハンドルで販売された日本車3選

日本は左側通行ですから、当然ながら右ハンドルのクルマがスタンダードです。しかし、かつて輸入車は左ハンドルのまま日本で販売されるのが当たり前の時代があり、さらに日本車でも左ハンドルのモデルが存在。そこで、 左ハンドルで販売された日本車を3車種ピックアップして紹介します。

左ハンドルのまま販売された日本車を振り返る

 日本の道路は左側通行なためクルマは右ハンドルなのがスタンダードですが、法律上は左ハンドルのクルマも問題なく走行可能です。

 そのため、一部の輸入車は左ハンドルのまま販売されているケースがありますが、現在は少数派になったといえるでしょう。

日本でも左ハンドルのままで販売された日本車たち
日本でも左ハンドルのままで販売された日本車たち

 一方、昭和の時代には輸入車といえば左ハンドルの方が圧倒的に多く、左ハンドルのクルマがステータスシンボルとされており、日本と同じ左側通行の国であるイギリスのクルマでも左ハンドルのモデルが販売されていたほどです。

 日本は自動車の輸入に関税がかかっていませんが、昔は輸入車が国産車に比べてかなり高額だったことから、富の象徴として左ハンドル車信仰があったということでしょう。

 そんな時代には日本車でありながら左ハンドルのクルマも存在。そこで、左ハンドルで販売された日本車を、3車種ピックアップして紹介します。

●ホンダ「アコードクーペ」

スタイリッシュな外観で内装もゴージャスだった初代「アコードクーペ」

 現在、日本のメーカーは世界中に進出しており、各国に工場を建設して盛んに現地生産がおこなわれています。

 なかでもホンダは、1982年から他社に先駆けてアメリカに工場をつくり現地生産を開始。アメリカ製第1号車は2代目「アコード」でした。

 そして、1985年に登場した3代目アコードでは、初の試みとして企画・開発をアメリカ法人でおこない、アメリカ工場で生産するモデルとして初代「アコードクーペ」が誕生。

 アコードクーペはセダンのシャシをベースにした2ドアクーペで、内外装のデザインや装備のチョイス、サスペンションのセッティングなどをアメリカホンダが担当しました。

 アメリカ製のアコードクーペは、1988年に日本へ左ハンドルのまま輸入されて販売を開始。

 国内ではラインナップされなかったスタイリッシュなクーペボディに、本革をふんだんに使ったゴージャスな内装、BOSE製のハイエンドオーディオシステムなど、アメリカらしさを感じさせる華やかな1台に仕上がっており一定の人気を獲得しました。

 その後1990年には2代目、1994年には3代目へとモデルチェンジし、右ハンドルと左ハンドルの2仕様が販売され、高性能なDOHCエンジンの「Si」グレードも展開。

 しかし、日本でクーペ需要が低下してしまったこともあり、1997年に販売を終了して4代目以降は輸入されませんでした。

 アコードクーペは北米で7代目まで登場しましたが2018年に生産を終え、現行モデルではラインナップされていません。

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●日産「クエスト」

当時としてはかなり大柄のプレミアムミニバンとして販売された「クエスト」

 1990年代から日本でファミリーカーとして普及し、今では定番車種となったミニバンはアメリカで誕生したカテゴリーです。

 アメリカでは1980年代にミニバンの普及が始まり、次第に日本メーカーも参入。そして、1992年には日産が北米専用のミニバン「クエスト」を発売しました。

 クエストは7人乗りの大型ミニバンとして開発され、米オハイオ州の工場で生産し、1995年にオーテックジャパンが輸入するかたちで、左ハンドルのまま日本でも販売されました。

 ボディサイズは全長4835mm×全幅1870mm×全高1770mmと当時の国産ミニバンと比べてかなり大きく、外観はボリュームのある全体に丸みを帯びたフォルムで、サイズ感とともに内装もアメリカナイズされたゴージャスな雰囲気のプレミアムミニバンに仕立てられています。

 搭載されたエンジンは最高出力150馬力を発揮する3リッターV型6気筒のみで、FF駆動から広い室内空間を実現。シートレイアウトは2列目が独立したキャプテンシートとし、3列目は3人掛けで大人7人がゆったりと座れました。

 しかし、日本での販売は左ハンドルのみだったことに加え、リアドア(スライド式)が右側だけという使い勝手の悪さ、価格もおよそ350万円からと高額だったことからヒットせず、1999年に販売を終了。

 なお、北米ではその後もクエストは代を重ねて販売されましたが、エルグランドをベースにした4代目が2017年に販売を終え、現行のラインナップからミニバンは消滅してしまいました。

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●三菱「エクリプス」

「ギャラン」をベースに仕立てられたスポーツカーの初代「エクリプス」

 1985年に三菱はクライスラーと提携して、アメリカに合弁会社である「ダイヤモンドスター・モーターズ(現、三菱モーターズ・ノース・アメリカ)」を設立しました。

 そして、1989年にはアメリカ市場向けに企画・開発された3ドアハッチバッククーペで、同工場で生産された初代「エクリプス」が発売されました。

 初代エクリプスは、当時販売していた6代目「ギャラン」と主要なコンポーネンツを共有したモデルで、外観はリトラクタブルヘッドライトを採用し、伸びやかで空力性能も考慮されたスタイリッシュなフォルムが特徴です。

 グレード構成は2リッター自然吸気エンジンのFFモデル「GS」と、最高出力200馬力を誇る2リッター直列4気筒ターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせた「GSR-4」をラインナップ。GSR-4はトランスミッションが5速MTのみとされるなど、生粋のスポーツカーに仕立てられています。

 1990年には左ハンドルのまま日本に輸入・発売され、当時アメリカの法規に則って採用されていた、自動的にシートベルトが装着される「電動フロントシートベルト」を国内モデルで初めて装備するなど、スタイルも含めて個性的なモデルとして一定の人気を獲得。

 その後、1994年に2代目が登場し、2004年から3代目のオープン仕様「エクリプススパイダー」が日本に輸入されましたが初代ほどの人気とはならず、4代目以降は日本で販売されませんでした。

※ ※ ※

 かつて、日本で輸入車が左ハンドルのまま輸入された理由のひとつに、一部の車種でメカニズム的な問題があったということが挙げられます。

 もともと左ハンドルで設計されたクルマを右ハンドル化する際に、ペダルのレイアウトやブレーキの機構に問題があったり、一部の装備が取り付けられないという事例がありました。

 そのため、本来の性能やドライブフィーリングは本国仕様の方が優れていると評され、あえて左ハンドルのまま輸入されたということです。

 しかし、今ではそうした差異は改善されているので輸入車でも大多数は右ハンドルですが、車種によっては左ハンドルに慣れた顧客が多いということから、左ハンドル車も輸入されているモデルがあります。

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