3000万円オーバー! フェラーリ「BB」vs「ディーノ」 オークション下剋上時代到来
1970年代のフェラーリといえば、日本ではスーパーカーブームの頃に子ども達から憧れの対象だったクルマである。なかでも「カウンタック」と人気を二分した「BB」、そしてハンドリングマシンとして人気の高かった「ディーノ」は当時流行った漫画の影響もあって人気は絶大だった。では、現在のオークションマーケットではどちらに価値があるのだろうか。
「コールドプレイ」のベーシスト、ガイ・ベリーマン氏の愛車2台がオークションに登場
フェラーリ初の市販ミドシップ車である「ディーノGT」シリーズと、フェラーリ初の市販12気筒ミドシップ車である「BB」シリーズ。いずれもスーパーカーブーマーのカリスマ的人気モデルながら、2010年代以降の国際クラシックカー・マーケットにおいては、新車として生まれた時代の格付けを覆すかのように、相場価格が拮抗するという珍事が常態化しつつあるかにも見える。
今回は、クラシックカー/コレクターズカーのオークション業界における世界最大手、RMサザビーズ英国本社が2021年5月19日から26日に開催したオンライン限定オークション「OPEN ROADS, MAY」に出品された2台、実はさる世界的セレブレティの愛車である1971年型「ディーノ246GT」と、1974年型「フェラーリ365GT4/BB」のオークションレビューから逆転現象を分析してみよう。
●1971 ディーノ「246 GT」
1969年にデビューしたディーノ246GTは、その前年、1968年に生産が開始された「206GT」のスケールアップ・改良版である。
ディーノ206GTはフェラーリが設計し、フィアットで生産される2リッターV6エンジンを、ピニンファリーナのデザインによる総アルミ製ボディに搭載したモデル。当時の常識を超えた驚くべきハンドリングに、芸術的とも称される美しいスタイルで世界に衝撃を与えた。
そしてフェラーリは、エンジンを2.4リッターに拡大するとともに、ボディの基本骨格およびエンジンブロックをスティール化。さらにホイールベースを60mm延長することで実用性や生産性を向上させたディーノGTの本命「246GT」へと進化させる。
このような経緯のもとに誕生し、スポーツカー史上屈指の名作と評されることになったディーノ246GTだが、その生産期間中にはいくつものアップデートを受けている。
最初期モデルの「タイプL」では206GTから踏襲されたセンターロック+スピンナーのホイールは、1971年初頭から生産された「タイプM」以降は5穴のボルトオンタイプへと変更。さらに同年後半から生産開始された「タイプE」のシリーズ中途には、前後のバンパー形状も206GT以来のラジエーターグリルにくわえ込むスタイルから、グリル両脇に取り付けられるシンプルな意匠に変更されるなど、そのマイナーチェンジの内容は多岐にわたるものだった。
今回、RMサザビーズ「OPEN ROADS, MAY」オークションに出品された1971年型246GTは、1624台が作られたという「タイプE」の中でももっとも初期に生産されたと思われる1台で、フロントバンパーはタイプMまでの共通項だったグリル左右にくわえたスタイルを残している。
現代のマーケットにて、人気・相場価格ともにもっとも高い「タイプL」よりはいささか安価になることの多いタイプEながら、このシルバーの個体には特別な付加価値があった。
それは、グラミー賞を受賞したこともある英国のロックバンド「コールドプレイ」のベーシスト、ガイ・ベリーマン氏が現在進行形で愛用している246GTだったのだ。
WEBカタログによると、もともと1971年6月23日にマラネッロ工場をラインオフしたというこの個体は、同年8月にイタリア国内の女性オーナーにデリバリー。そののち数人のイタリア人が所有したあと、1978年にアメリカへと輸出されていった。
アメリカでこのディーノ246GTを入手したのは、ミシガン州在住の愛好家で、彼はその後36年間にわたって所有。2014年に再び大西洋を渡り、ガイ・ベリーマン氏のコレクションに加わることになったとされている。
現在に至るまで「Argento Auteuil Metallizzato(シルバーメタリック)」のボディや黒革のインテリアなどは、基本的にオリジナルが保たれている一方で、ベリーマン氏の委託によりエンジンとその補器類、トランスミッション/クラッチ、サスペンションやブレーキシステムなどは、スペシャリストの手によってオーバーホールされている。
この246GTに、RMサザビーズ英国本社が設定したエスティメートは、21万-24万英ポンド。オンライン競売では22万5000ポンド、日本円に換算すれば約3480万円という、ディーノ246GTタイプEとしてはハイエンドに属する価格で落札されるに至った。
この高評価を決定づけたのは、もちろん個体そのものの魅力もあるだろうが、やはり「ガイ・ベリーマンのディーノ」という付加価値が大きく反映したのは間違いあるまい。
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