3000万円オーバー! フェラーリ「BB」vs「ディーノ」 オークション下剋上時代到来

予想落札価格は同じ、「BB」は「ディーノ」に勝てるのか?

 1973年に正式発表され、その数年後、1970年代後半に日本で沸き上がったスーパーカーブーム時代には、宿敵ランボルギーニ「カウンタックLP400」と覇権を争った365GT4/BBは、12気筒ストラダーレとしてはフェラーリ初のミドシップ車である。

 現代の目でも見惚れてしまいそうな斬新さにくわえて、ディーノの係累であることを物語る古典的エレガンスもあわせ持つボディは、もともと1968年にピニンファリーナが発表したスタディモデル「P6」の生産型であるともいわれている。

●1974 フェラーリ「365 GT4/BB」

387台が作られたといわれる365GT4/BBのうち、わずか58台のみという英国マーケット向け右ハンドル仕様(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
387台が作られたといわれる365GT4/BBのうち、わずか58台のみという英国マーケット向け右ハンドル仕様(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 有名なペットネーム「BB(Berlinetta Boxer)」にも示されるとおり、前任モデルにあたる「365GTB/4デイトナ」用に新設計された、排気量4390ccの60度V型12気筒4カムシャフトエンジンのVバンク角を180度まで拡大。4基の3チョーク式ウェバー気化器が組み合わされて、380psのパワーを発揮する。

 そしてパワートレインの前後長を短く抑えるため、エンジン直下に2階建て構造に配された5速MTを介して302km/hの最高速を公称していた。

 ただしこのカタログデータは、BBがデビューする半年前に最高速度300km/hを標榜して挑戦状を叩きつけてきた、カウンタックLP400を上回ることだけを目的に設定された政治的数値というのが今や定説となっているようだが、それでもBBの魅力の前には何らの問題ともなりえないともいえよう。

 このほど「OPEN ROADS, MAY」オークションに出品された365GT4/BBは、前述のディーノ246GTと同じく、オルタナティヴ・ロックの世界的スーパースター「コールドプレイ」のベーシスト、ガイ・ベリーマン氏からの出品である。

 フェラーリの公式WEBページにも登場するほどに熱心なクラシック・フェラーリ愛好家である彼は、モノトーンのボディカラーを好むようで、こちらも「Grigio Ferro(スティールグレー)」のボディカラーに「Rosso(赤)」のレザー内装を組み合わせた一台である。また、387台が作られたといわれる365GT4/BBのうち、わずか58台のみという英国マーケット向け右ハンドル仕様とのことだった。

 1974年5月に完成したこの個体は、その翌月かの有名なイギリス正規代理店「マラネッロ・コンセッショネアーズ」によって英国に渡ったのち、ファーストオーナーに納車されたという。

 そののち3人の歴代オーナーのもとで大切に所蔵されたあと、2014年にガイ・ベリーマン氏が入手。彼の要望により、2015年から2017年にかけて、約7万ポンドを投じたレストアが施されることになり、一時はイエローに再塗装されていたボディも、オリジナル純正カラーのグレーメタリックで仕立て直された。

 今回のオークション出品に際してRMサザビーズ英国本社では、同時に出品されたディーノ246GTとまったく同額となる、21万-24万ポンドのエスティメートを設定していた。ところが、競売では入札が伸びず、エスティメート下限を割り込む20万9000ポンド、日本円換算で約3233万円にて落札された。つまり、ディーノ246GTの落札価格には及ばない結果に終わってしまったのである。

 マイナーチェンジ版にあたる「512BB」ないしは「512BBi」では、これまでにもディーノ246GTの相場価格に及ばない事例は珍しくもなかったのだが、BBシリーズのオリジナルにしてもっともピュアなモデル、そして希少価値ももっとも高いはずの「365GT4/BB」が、レアな「206GT」でもない246GTに敗れるというのは、ちょっとしたニュースともいえるだろう。

 世界的ミュージシャン「ガイ・ベリーマンの愛車」というバリューは、双方とも同条件。ならばコンディションやハンドル位置の違いによるもの、あるいはたまたま入札者に恵まれなかったという、オークションならではの偶発的な理由によるものなのか。それとも、グローバルなマーケットの趨勢がディーノを選んだのかは、いささか判断が難しい。

 今後の国際マーケットの動向に、注目していきたいところである。

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