10万m点検実施! ロールス・ロイスの働くキッズカー「SRH」はどうして生まれた?

まさにロールス・ロイスのミニチュア

 そんなロールス・ロイス SRHが制作されたきっかけは、プラスチック製の電動ジープだった手術用搬送車を修理できないかという、病院からロールス・ロイスへの相談だったという。

「ロールス・ロイス SRH」
「ロールス・ロイス SRH」

 ロールス・ロイスはこの相談を断る代わりに、ロールス・ロイスの基準で新しいクルマを作ることを提案したのだ。

 そして少人数のチームが、カーボンファイバーで補強されたファイバーグラス製のビスポーク・ボディシェルを設計・製造し、ブランドの象徴であるパンテオングリルを装着。ボンネットストリップには長さに合わせてカットされた「本物」が使用され、ツートンカラーの仕上げはフルサイズのコミッションとまったく同じように施工。さらに、ホイールカバー、シート、コーチラインまで、すべて完璧にカラーマッチングされている。

 また、シートは木製のハンドメイドで、パッドには医療用ビニールが張られ、汚れが付着する可能性のある縫い目をなくすために、熱溶着を実施。アルミ製のフットウェルは、取り外しての掃除ができるように設計された。

 さらにビスポーク・プロジェクトらしく、手作りのトレッドプレートや3Dプリントされたダッシュボード、ホイールキャップやスペーサー、トリムピースなど、多くの部品を個別に製作。真のロール・スロイスとして、レーザーでエッチングされたRRバッジと独自のスピリット・オブ・エクスタシーのマスコットが付けられ、完成されている。

 動力は電気駆動のため、ロール・スロイスならではのノイズのないドライビングを楽しむことが可能。公道走行可能なモデルと同様に、速度は通常の155km/hではなく4km/hに制限されている。

 なお、同プロジェクトには約400時間が費やされたが、作業はすべて社員が自分の時間を使っておこなったという。

 整備されたクルマは病院に戻り、仕事を再開。日帰り手術室のシスター、リンダ・コリンズ氏は、この10万m点検について次のように述べている。

「ミニ ロールス・ロイスの整備は、Covid-19の制限から移行した小児外科サービスの再開に向けて完璧なタイミングです。今回もまた、幼い患者さんが手術に向かう際に、クルマをフルに活用することができます。

 これにより、患者が受ける手術から離れて、病院の廊下を安全に監視されながら本物のロールス・ロイスを運転するというユニークな体験に集中することができます。

 私たちの愛車を最高の状態に保つために協力してくれた、ロールス・ロイス・モーター・カーズに心から感謝しています」。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ コーポレート・リレーションズ部門長 アンドリュー・ボール氏も、次のようにコメントしている。

「このクルマは、デザイン、素材、製造において、まさにロールス・ロイスのミニチュアです。4年の歳月と2000回の走行を経て、厳しい環境下でも比較的無傷でいられるのは、細部にまで気を配って作られていることの証です。

 ロールス・ロイスの本拠地に戻ってきたモーターカーが、塗装の傷や擦り傷をバフで除去されることは非常に稀ですが、今回はまったく問題ありませんでした。

 それは、そのクルマが使われ、楽しまれていることを示すものであり、それが究極的にはすべてのロールス・ロイスの目的なのです。私たちは、このユニークなクルマと、その特別なオーナーやドライバーを継続的にサポートできることを嬉しく思います」。

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