速度違反しない車が日本でも義務化!? 次世代技術で未来の自動車社会はどう変わる?

V2Xでクルマが絡む重大事故が減る?

●V2Xを早期に実現

 V2X(ブイ・ツゥ・エックス)とは、Vehicle(クルマ)が車外のさまざまなモノや人と通信でつながることを指します。

 クルマどうしの場合はV2V、クルマと道路インフラではV2I、またクルマと歩行者(Pedestrian)はV2Pと呼ばれます。

クルマが外部と通信することで事故が予防できる可能性も
クルマが外部と通信することで事故が予防できる可能性も

 V2Xが実現すれば、周囲のクルマや歩行者、そして自転車やペットなどと自車との位置関係や接近状況が分かるため、交差点での出会い頭や道路への急な飛び出しによる事故の予防になります。

 直近では、次世代通信の5Gの実用化が進んでいます。5Gはこれまでの4Gと比べるとデータ送信速度の遅延が少ないことから、V2Xを実現した場合の事故予防の可能性が高まることが期待されています。

 ところが、V2X実現にむけて大きな課題があります。

 アメリカの運輸省によると、V2X対応機器の新車導入を義務化した場合、義務化の開始から15年後でも普及率は76%に留まり、100%になるにはさらに15年が必要だというのです。既販車のすべてが入れ替わるためには、アメリカでは都合30年間かかるという試算です。

 そこで、コンチネンタルが提唱しているのが、既存車でも最近は装着率が高いカメラやレーダーなど、高度運転支援システムなどをソフトウエアで改良し、データをクラウドに吸い上げ、インフラとの協調などを上手く使えば完全なV2X時代到来に向けた準備ができるといいます。

 この考えをCPM(コレクティブ・パーセプション・メッセージ)と呼びます。

 V2Xという理想論だけではなく、既存技術の改良による現実解によって重大事故を少しでも減らそうという試みですが、コンチネンタルでは現在、次世代V2Xを想定した実験的な交差点などの交通環境の設置に向けて、日本の行政機関と協議を進めているといいます。

※ ※ ※

 このほか、クラウドの活用と車内のECU(制御コンピュータ)の集約を並行しておこなう自動車の電子基板を新設計に注力するなど、コンチネンタルはワールドワイドで大規模な組織再編を実施。そうした時代変革のなかで、キーワードとなるのは「ソフトウエア中心の開発」です。

 トヨタでいう「ソフトウエア ファースト」の開発思想ですが、ドイツをはじめとして世界各国で次世代に向けた自動車開発の有りさまが大きく変わってきたことを、今回のウェビナーで再確認できたと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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