日帰り700km走破して分かったフィアット「パンダ・クロス4×4」の実力を教えます

「パンダ・クロス4×4」は、ファーストカーとしてオールマイティな実力

 パンダ・クロス4×4の4WDシステムと駆動に関する制御系は、おそらく誰もが想像するより優秀だ。4輪それぞれが駆動の具合を素早く絶妙に変化させながら、しっかりと足元を踏みしめて前へと進んでいく。その様子がきっちりと伝わってくる。微速域でラフにアクセルペダルをグイと踏み込んでも、前輪の空転は一瞬だけ。ほぼ同時に後輪の駆動が立ち上がって、何事もなかったかのようにスルスルと加速していく。姿勢を乱してみようと試みても、どこかが滑ればどこかが瞬時に補う感じで、破綻させる方が難しいくらい。

 どんなクルマでも一緒だけど、クルマの動きっていうのは物理の法則から逃れられない宿命にあるのだから、当然ながらいずれはどこかで破綻は来るだろう。が、そこまで持っていって何かあるとしたら、原因は間違いなくドライバーの無謀だろ、と思えたほどだった。

ツインエア・エンジンと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせは絶妙
ツインエア・エンジンと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせは絶妙

 とはいえ、その頼もしさだけに惹かれたわけじゃない。雪のある場所までの道すがらで「やっぱりいいな」と思わされ、帰り道で「うーむ、初めて気づいた」と唸らされた。

●パンダ・クロス4×4の4WDの「やっぱりいいな」

「やっぱりいいな」の筆頭は、ツインエア・エンジンと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせだ。直列2気筒875ccターボ、85ps/5500rpmに145Nm/1900rpmに過ぎないこのエンジンが意外や速いということは、クルマ好き達の間ではよく知られている話。

 低回転域から中回転域では粘っこいトルクを沸き立たせ、中回転域から高回転域にかけても望外の勢いを見せてくれるから、街中でも扱いやすく走らせやすし、高速道路でも巡航しやすいしじれったさもない。音は素晴らしく静かとはいい難いし振動も伝わってくるが、それは個性と思える類のモノだし、総じて出来映えは優秀だ。トランスミッションのギア比がFFモデルの2ペダルMTより全体的に低い設定だから、中間加速も素早くなっている。静止状態から100km/hまでの加速タイムは12秒。実用ベースのこのクラスのクルマとしては、そこそこ以上に優れた数値といえるだろう。今回も走っていて不満らしい不満を感じることはなかった。

 もうひとつはフットワークだ。雪景色に出逢うまでには山を幾つか越えるワインディングロードを駆け抜ける必要があった。そもそもFFのパンダはその姿には不釣り合いなフットワークを見せることで玄人筋でも高い評価を得ているクルマだが、パンダ・クロス4×4は最低地上高確保のために車高=フロア高を持ち上げているのだから、当然ながら重心高も高くなっているわけだ。グラつきが大きくなっていたり揺り戻しが出てきたりしてもおかしくはない。

 なのに、確かにロール量こそ大きくなっている気はするものの、その動きはとても自然で解りやすいし、嬉しいことに元々の持ち味がしっかり残されているのだ。ステアリングを切り込んでいくと、とくにシャープというわけではないものの、素直なフィールを感じさせながらすんなり気持ちよく曲がってくれる。そのときの腰をしっかりと粘らせながら長い脚で路面を捉えていく安定した曲がりっぷりも素晴らしい。ハンドリング、なかなか気持ちいいのだ。マニュアルトランスミッション特有の“操縦してる”感もあって、パンダ・クロス4×4で走る峠道は充分に楽しいといえる領域にある。

●パンダ・クロス4×4の4WDの「うーむ、初めて気づいた」

シートが上手く身体を沈み込ませて安定させてくれることもあって、意外なことにグランドツーリングでも印象がよかった
シートが上手く身体を沈み込ませて安定させてくれることもあって、意外なことにグランドツーリングでも印象がよかった

「うーむ、初めて気づいた」の方はどうかといえば、乗り心地である。こればかりはロングを走ってみないと判らない。750kmのドライブは、実は日帰り。その終盤、東京の自宅までおよそ100kmとなった辺りで、ふと気づいたのだ。あれ? 走った距離のわりには疲れてないな……と。

 最低地上高を稼ぎ出すのに伴ってサスペンションのストローク量を大きくしているわけだが、おそらくそれをキッチリ活かしていて、しなやかに路面の凹凸を吸収し、不快な衝撃として伝えてくることがほとんどない。クルマそのものの高速走行時の直進性がいいこと、ステアリングの座りがよくて反応も機敏すぎないこと、シートが上手く身体を沈み込ませて安定させてくれること、車体がコンパクトで視界もいいから気疲れが少ないこと、なども要因なのだと思う。意外なことにグランドツーリングも得意科目なのだ。

それでいて価格は263万円。冒頭に近いところで「コスパ断トツ」と早々申し上げたその理由を、分かっていただけただろうか? これまでにも様々なSUV、様々な4WDモデルにも試乗してきている。そのなかに魅力を感じたクルマがたくさんあることだって自覚している。けれど今、「SUVの推しを1台あげろ」といわれたら、僕はフィアット・パンダ・クロス4×4を選ぶだろうな、と思う。

 ちなみに絶妙な色味のモードグレーの売れ行きは好調で、そう遠くないうちに完売するんじゃないか? という話も伝わってきている。気になる人は、急いだ方がいい。

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1件のコメント

  1. ギアボックスがFFモデルより低いって話。カーグラかティーポでも書かれてたけど、チャンと諸元見てるのか?FFも4×4も変速比は同じ。6速を付け足しただけ。

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