24時間耐久レース完走で注目集まる水素エンジン! BMWが限定生産した7シリーズとの違いは?

現在の技術なら800kmの航続距離も夢ではない!?

 トヨタ「MIRAI」二世代に代表される燃料電池車は、水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を起こし、その電力でモーターを駆動させる。これに対し、水素エンジン車はガソリンの代わりに水素を燃焼させることで動力を得る。

●水素タンク技術の進化した今こそ、BMWの再挑戦に期待したい

「ハイドロジェン7」のパワーユニットは、6リッターV型12気筒「バルブトロニック」ガソリン自然吸気エンジンがベース
「ハイドロジェン7」のパワーユニットは、6リッターV型12気筒「バルブトロニック」ガソリン自然吸気エンジンがベース

 100%純水素を燃料とするならば、いわゆる化石燃料には頼らない。したがって走行時のCO2排出は、エンジンオイルが燃焼する時に微小な発生があるのみで、カーボンニュートラルに向けた有力な取り組みのひとつともなりうるポテンシャルを持つ。

 そして最大の特徴は、既存のガソリンエンジンをベースにモディファイを施した、正真正銘の内燃機関であること。これまで長年培ってきたテクノロジーの多くが生かせるとともに、不可避的な電動化に寂寥感を覚えていた旧来の自動車ファンにとっては、あの魅惑的なサウンドと振動をもたらす「エンジン」を、この先も楽しむことができるかもしれないという期待感を持たせてくれるものなのだ。

 BMWハイドロジェン7の発表に先立つこと2年、2003年にはわが国のマツダも、当時最新モデルだったスポーツクーペ「RX-8」をベースとし、13Bロータリーエンジンを水素対応させた「RX-8ハイドロジェンRE」を実験的に開発。この年の東京モーターショーに参考出品ののち、地方自治体やエネルギー関連企業などにリース販売をおこなったという。

 ところがBMWハイドロジェン7もRX-8ハイドロジェンREも、それっきりで終わってしまった。その最大の理由は、当時の技術では十分な量の液化水素を収めるタンクを持ちえなかったことが指摘されているようだ。

 確かにこの時代の水素タンクの気圧は200気圧程度しかなかったという。このタンク性能の低さ、つまり一回の水素注入で走行できる距離の短さが最大のネックとなり、2000年代初頭の水素エンジンは高い障壁に行く手を阻まれてしまう。

 しかし、水素タンク問題(≒航続距離問題)のブレークスルーは、意外なところにあった。それはトヨタによって開発された燃料電池用の水素タンク技術である。

 MIRAIに使われている水素タンクは800気圧で、15年前のBMWハイドロジェン7用タンクの4倍。つまり、同じスペースに4倍の液化水素が注入できることから、無茶は承知で単純計算すれば航続距離も200km×4の800kmになる。これならば実用的な航続距離を得られることになるのだ。

 少なくとも現状において、BMWが水素エンジンの開発を継続しているという情報はないようだ。しかし内燃機関を愛する筆者としては、ぜひBMWにもう一度水素エンジンにチャレンジしてほしいと熱望してやまない。

 もはやカビの生えてしまったような古い価値観かもしれないのだが、やはり内燃機関の味わいを愛する者にとって、BMWは永遠の「エンジン屋」。SDGsに背を向けることなく、内燃機関の素晴らしいフィールを堪能できるような水素エンジンを、これから世に送り出すことができるメーカーとしては、最右翼になりうるポテンシャルがあるはずだ。

 もちろん15年前のハイドロジェン7では、ガソリン単体仕様と比べて大幅なパフォーマンス低下があったことは否めない。それは15年前の技術レベルでは、ガソリンエンジンに匹敵する熱効率が実現できなかったことが大きな要因だったのであろう。

 しかし、1970−1980年代のエミッションコントロール(排気ガス公害対策)で一度は牙を抜かれながらも、そののち再びパワーウォーズを展開したガソリンエンジンのごとくパフォーマンスとフィーリングを蘇らせ、しかも環境性能にも優れた内燃機関をぜひとも「エンジン屋BMW」の手で開発してほしいと切に願うのである。

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1件のコメント

  1. 当時のBMWは走る歓びをと、
    内燃機関や、前後重量50:50のFRに、
    さらには2眼メーターやホフマイスターキンクなど
    造形にもこだわりがあり続けたし、
    アダプティブクルーズコントロールや自動ブレーキ採用などの自動運転化には否定的だった…
    それも今では売上重視へと転換し
    ブランドイメージとしての形ばかりになって
    すべてのこだわりを捨て去ろうとしてる昨今だ、
    「エンジン屋BMW」とはもう過去の話だよなって思う。

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