24時間耐久レース完走で注目集まる水素エンジン! BMWが限定生産した7シリーズとの違いは?
トヨタが富士スピードウェイで開催された24時間耐久レースに水素エンジン搭載車で参戦、無事に完走したことで一気に注目が集まった水素エンジンだが、実はBMWが2006年には限定生産している技術であった。
BMWの水素エンジンを覚えていますか?
自動車が電動化への道を突き進もうとしている昨今、わが国のトヨタが水素エンジンの開発を進めていることを公表し、内燃機関の旧き佳き味わいを愛してやまない自動車愛好家たちの「期待の星」となりつつあるようだ。
しかし、水素燃料を用いた内燃機関の研究は前世紀からおこなわれており、「エンジン屋」として世界に名を轟かせているBMWは、あくまで実験的なものながらシリーズ生産にもチャレンジしていた。
今回VAGUEでは、BMWが2006年に開発・限定生産した水素エンジン車「BMWハイドロジェン7」について、将来への期待を込めて解説しよう。
●世界初の量産型ラグジュアリー水素サルーン
地球温暖化に甚大な影響を及ぼすという、二酸化炭素(CO2)を削減させる「カーボンニュートラル」という金科玉条のもと、2030年代にはすべての乗用車用パワーユニットの電動化が待ったなしの状態となりつつある。
そして、筆者を含む古典主義的な自動車エンスージアストが愛してやまない内燃機関のもたらす旧き佳き味わいは、悲しいけれど過去のものとなろうとしている。
そんな状況のもとにあった2021年4月22日、トヨタは水素エンジンの技術開発に取り組むことを正式に表明。総排気量1618cc直列3気筒ターボ、つまりGRヤリス用のエンジンを水素対応化したパワーユニットを搭載する「カローラ・スポーツ」を製作し、同年5月21日から23日の「スーパー耐久(通称S耐)富士24時間レース」にも参戦を果たし、無事に完走を果たした。
しかし、水素を燃料とする内燃機関を搭載したのはトヨタが初めてというわけでもない。1970年代には大学の研究所などで基礎研究が始まっていた水素エンジンは、21世紀には大きな節目を迎えるのだ。
それが「世界初の量産型ラグジュアリー水素サルーン」を謳ったBMW「ハイドロジェン7」である。2006年11月のロサンゼルス・モーターショーにおいて、2006年末から100台を限定生産するというアナウンスとともにワールドプレミアに供された。
世界限定100台という限られた台数で、しかも実験的要素が強かったものの、「E68」という正規コードネームのもとに生産され、日本でも一部のメディアや関係者を対象に試乗のチャンスが与えられたことから、そのレポートなどを目にした人もいるだろう。
ハイドロジェン7のパワーユニットは、同時代のBMW 7シリーズ「760i/760Li」に搭載されていた総排気量6リッターのV型12気筒「バルブトロニック」ガソリン自然吸気エンジンがベース。当時のBMWが「デュアルモード・エンジン」を標榜したように、水素とガソリンふたつのモードで作動し、同じ気筒内で水素とガソリンの双方を燃焼させることができるというものであった。
ただし同じ6リッターV12NAでも、純ガソリン仕様の最高出力445ps/最大トルク61.2kgmに対して、水素燃料で走る際の最高出力は260ps(191kW)、最大トルクは39.8kgm(390Nm)/4300rpmに抑制されていた。0-100km/h加速性能は9.5秒(ガソリン使用時5.6秒)、最高速度は230km/hでリミッターが作動することになっていたとされる。
通常のガソリンタンクの容量を減らすことで得たスペースに、最大容量8kgの液化水素タンクを設置。水素燃料による走行可能距離は最大200kmと謳われていたが、やはりこの「足の短さ」が大きな足かせとなり、本来の実用化はまだ先と判断されてしまった。
当時のBMWは走る歓びをと、
内燃機関や、前後重量50:50のFRに、
さらには2眼メーターやホフマイスターキンクなど
造形にもこだわりがあり続けたし、
アダプティブクルーズコントロールや自動ブレーキ採用などの自動運転化には否定的だった…
それも今では売上重視へと転換し
ブランドイメージとしての形ばかりになって
すべてのこだわりを捨て去ろうとしてる昨今だ、
「エンジン屋BMW」とはもう過去の話だよなって思う。