日本からスポーツモデルが激減!? 走りの楽しいクルマ「少数派」状態はいつまで続くのか
現在、2ドアや3ドアのクーペを代表とするスポーツモデルは国産車のなかで数が少なく、売れ行きも好調とはいえません。1990年代はさまざまなスポーツモデルがありましたが、現在は少数派の状態といえます。いったいなぜそうなってしまったのでしょうか。
現在ホンダのスポーツモデルは“実質ゼロ”!?
日本車の車種ラインナップと売れ行きを以前と比べると、カッコ良さや運転の楽しさに重点を置いたスポーツモデルが激減しました。1990年代までは2ドアや3ドアのクーペが豊富でしたが、最近は少数にとどまっている理由とはいったい何なのでしょうか。
かつて人気の高かったスポーツモデルを振り返ると、トヨタの「セリカ」や「カローラレビン」「スプリンタートレノ」、日産なら「シルビア」や「スカイラインクーペ」、ホンダ「インテグラ」や「S2000」、マツダ「RX-7」、三菱「GTO」などは、すべて過去のクルマになっています。
背景にはクーペを中心としたスポーツモデルの販売減少があります。
例えばマツダ「ロードスター」は、1989年に登場した初代モデルが、1990年に日本国内で年間2万5226台登録されました。1か月平均で約2100台ですから、現在のマツダ車に当てはめると「CX-5」や「マツダ2」と同等の売れ行きでした。
ところが2020年のロードスターの年間登録台数は約4400台なので、1か月平均なら370台程度です。ロードスターはスポーツカーの中ではコンパクトで価格も安く、人気車のため今でも存続していますが、売れ行きは約30年前の20%以下です。
昔と違って、今はクルマが珍しい憧れの存在ではなくなり、カッコ良くて速いスポーツカーの売れ行きも下がりました。安全装備の充実などによってクルマの価格が全般的に高まり、小さくて実用的な車種が支持を得ている事情もあります。
それでもメーカー別に見ると、日産では伝統の「フェアレディZ」が健在で、すでに次期型の内外装や概要も公表されました。最高峰のスーパースポーツカーとしては「GT-R」も購入できます。
トヨタでは2019年に「スープラ」が復活して、2021年の後半にはスバルとの共同開発で生まれた「86」も、次期型にフルモデルチェンジされます。
クーペではありませんが、独自の3ドアボディを備えて走行性能を高めた「GRヤリス」もあり、レクサスブランドの「LC」や「RC/RC F」まで含めるとスポーティな運転が楽しめるクルマを相応に選べます。
なお、86のスバル版モデルといえる「BRZ」の新型モデルは、新型86よりひと足はやく2021年夏頃の発売が予定されています。
スズキはもともと軽自動車が中心のメーカーで、スポーツモデルは多くありませんが、コンパクトカーの「スイフトスポーツ」は人気が高いです。
軽自動車では「アルト」にもスポーツモデルの「アルトワークス」が用意され、スズキは運転の楽しいクルマを手頃な価格で提供しています。
また、ダイハツは軽オープンカーの「コペン」にTOYOTA GAZOO Racingの知見を盛り込んだ「コペン GRスポーツ」を設定しています(トヨタへのOEMモデルもあり)。
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ホンダは以前はスポーツモデルを豊富にそろえましたが、最近は少ないです。
「S660」は運転の楽しい軽自動車のミッドシップスポーツカーですが、2022年3月に生産を終えます。しかも生産規模が小さいので、2021年の3月末にはすべての生産枠を使い切り、早くも受注を締め切りました。つまり新車では買えません。「シビックタイプR」も販売を終了しました。
「NSX」は生産台数が限られ、以前からほとんど購入できません。従って販売会社のホームページでは、NSXを紹介していません。つまり2021年5月時点において、ホンダではスポーツモデルを購入できないのです。
マツダはロードスターを用意しますが、それ以外はSUVが中心です。今のマツダは日本で9車種を販売していますが、その内の5車種はSUVです。残りはマツダ2、「マツダ3(セダン/ファストバック)」、「マツダ6(セダン/ステーションワゴン)」、そしてロードスターなので、以前に比べてスポーツモデルが大幅に減りました。
三菱は、以前はクーペではありませんが、高性能スポーツセダンの「ランサーエボリューション」シリーズを手掛け、コンパクトカーの「コルト」にも「ラリーアートバージョンR」がありました。
それが今は軽自動車やSUV、またミニバンの「デリカD:5」が中心です。スポーツモデルの設定はありません。
なぜ各メーカーからスポーツモデルが減ったのでしょうか。また新たに投入する予定はないのでしょうか。
ホンダの販売店では「シビックタイプRは、2020年に短期間で売り切れました。後継車種も登場しますが、時期は不明です。S660の後継車種も聞いていません」と説明します。
ホンダのスポーツモデルが少ない背景には、ホンダ車の偏った売れ方も影響しています。
2020年度(2020年4月から2021年3月)に国内で販売された「N-BOX」、「N-WGN」、「フィット」、「フリード」の販売台数を合計すると、この時期に国内で売られたホンダ車全体の約70%に達します。
そうなるとシビックタイプRやS660、そしてミニバンの「ステップワゴン」や「オデッセイ」も含めたほかのホンダ車は、すべてを合計しても残りの約30%に含まれるのです。
売れ方がここまで前述の4車種に偏ると、ホンダのブランドイメージも変化します。昔を知らない人達にとって、今のホンダは「小さなクルマのメーカー」です。
従って今のホンダでは、スポーツモデルを積極的に投入しても、売れ行きを伸ばせる可能性は低いです。ホンダがブランドイメージの改革に乗り出さない限り、クーペに限らずスポーツモデルの車種数が増えることは考えにくいです。
2011年に初代(先代)モデルを発売した発売したN-BOXが人気を得たのは喜ばしいことですが、その結果としてブランドイメージも変わり、ほかのホンダ車の販売不振を招きました。
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