小笠原諸島はなぜ品川ナンバー? 都心から約1000km離れた地名が採用される背景
クルマを新たに購入した場合に住んでいる地域のナンバープレートを取得しますが、小笠原諸島では約1000km離れた「品川ナンバー」が付けられるといいます。なぜ遠く離れた地域名が採用されるのでしょうか。
約1000km離れた品川ナンバー
小笠原諸島の小笠原村では、登録されているクルマには「品川ナンバー」が付けられているといいます。
品川から距離の離れた小笠原村のクルマには、なぜ品川ナンバーが付けられるのでしょうか。
小笠原諸島は、東京の南である約1000kmの太平洋上ある30余りの島々を指します。
小笠原群島(聟島、父島、母島列島)、火山列島(硫黄列島)と西之島、南鳥島、沖ノ鳥島からなっていますが、このうち民間の人が定住しているのは父島と母島です。
この小笠原諸島が東京都に所属しているというのは知っている人も多いですが、この島を走るクルマのナンバープレートに、品川ナンバーが付いていることはあまり知られていません。
小笠原諸島は、1880年に当時の東京府の管轄になりました。その後1943年に、東京都制の施行とともに東京都の管轄となります。
そして、第二次世界大戦での激戦とアメリカによる統治を経て、1968年に日本に返還されます。
こうした歴史的経緯や、本土側の交通の拠点が東京であったことなどから、東京都の管轄となり、小笠原諸島を始め同じく品川ナンバーとなる伊豆諸島には陸運局がないことから、東京の都心部南側を管轄する陸運支局の品川ナンバーが使用されています。
関東陸運局東京運輸支局の管轄地域には「千代田区、中央区、港区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、大島支庁、三宅支庁、八丈支庁、小笠原支庁」と明記されています。
では、実際の登録作業などは、どのようにおこなうのでしょうか。
父島唯一の自動車整備工場である有限会社小笠原整備工場の武田工場長は、以下のように話します。
「ナンバープレートは、小笠原村役場が封印してくれます。ユーザー車検は、もし取るとしたら、クルマを貨物扱いで本土に輸送するしかありません」
また、定期船「おがさわら丸」を運行している小笠原海運によると、普通自動車の場合、東京から父島への5月の輸送料(車輛海上運賃)は片道7万6364円かかるとされています。
小笠原村の自動車保有台数は、自家用の乗用車と軽自動車を合わせて2016年4月現在1538台。
1世帯当たりの自動車保有台数はおよそ1.069台(同日時点の世帯数は1439世帯)となり、日本全国の平均である1.064台(2016年年3月末)とほぼ同水準です。
1500台以上のクルマがあると、整備工場にも需要は多くなりますが、離島ならではの苦労はあるのでしょうか。
前述の武田工場長は、次のように話しています。
「部品の調達に苦労します。本土の工場でしたら、部品を発注すれば翌日には入荷しますが、父島の場合、船が入るのが週に1便なので、タイミングによっては10日以上入荷にかかる場合があります。
そんなに長期間お客さんを待たせてしまうわけにはいかないので、応急処置をして、とりあえず動ける状態にし、部品入荷後にきちんと修理をするということもしています。
また、本土と違って、すべてを修理しなければならないのも大変です。本土ならエアコンはエアコン屋、板金は板金屋、電装は電装屋と分業されていますが、島はうちが全部見なければならないので大変です。自転車から大型の重機まで、なんでも整備してします」
また、本土と違って小さな島ではクルマの走行距離が短く、部品の消耗も少ないように思います。
「むしろ、消耗は激しいかもしれません。海風の影響で、ブレーキのローターはサビか発生しやすく、そうすると摩擦が増えてパッドの減りも大きくなります。タイヤは気温や紫外線の影響で劣化が早く進みます」(武田工場長)
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クルマを維持するにも離島ならではの事情があるようですが、自動車賠償責任保険には離島割引があり、 自家用乗用自動車37か月の保険料で本土の3万170円に対し、離島は9620円となっています。
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