究極の自然吸気エンジンを搭載したピュアスポーツカー! ホンダ「S2000」を振り返る

バリエーションの拡充と熟成が進んだS2000

 登場から1年がたった2000年には、世界初のステアリング機構VGS(Variable Gear ratio Steering:車速応動可変ギアレシオステアリング)を搭載した「タイプV」グレードを追加。

 VGSは車速と舵角に応じてステアリングのギアレシオを変化させ、さまざまな運転状況において理想的なハンドリング性能を実現する機構として開発されました。

アグレッシブなエアロパーツが装着された最終進化系モデルの「S2000 タイプS」
アグレッシブなエアロパーツが装着された最終進化系モデルの「S2000 タイプS」

 ワインディングロードなどではロックトゥロックが最小1.4回転のクイックレシオで、スポンスよくクルマの向きが変わるセッティングとなり、高速道路など車速が高い領域では敏感すぎないスムーズなステアリングギアレシオとなるので、安定した走りが可能になっています。

 2001年におこなわれたマイナーチェンジでは、ソフトトップの開閉スピードは従来のままリアウインドウをタイマー付熱線入りガラスにし、よりクリアな後方視界が確保できるようになりました。

 また、自在に外装色13色、内装色5パターン、ソフトトップ2色から好みの色を組み合わせられる「カスタムカラープラン」を導入。

 2003年のマイナーチェンジでは外装の一部意匠変更と、内装ではセンターコンソールやオーディオリッド、メーターを一新。あわせて、サスペンションのチューニングにボディ剛性向上など、走りの質や安定性も高められました。

 そして、2005年のマイナーチェンジでは排気量を200ccアップし、中・低速回転域から力強いトルクを発生する2.2リッターエンジンに換装。

 それにともない、最高出力250馬力/最大トルク22.2kgmから242馬力/22.5kgmとなり、エンジンの最大回転数も9000rpmから8000rpmにダウンしています。

 2.2リッターエンジンに変わったことでトルクはわずかにアップしたものの、最高出力や最大回転数が下がったことはデチューンとも受け取られかねませんでしたが、実用域で使いにくいというユーザーの不満が改善されたかたちです。

 同時に、加速性能や扱いやすさを重視してギアレシオをリファインしてローレシオ化。また、リニアで自然なアクセルフィールを実現するDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)も採用しています。

 最後のマイナーチェンジとなる2007年の改良では、急激な車両の挙動変化を抑制するVSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)とロールバーに設置されるサテライトスピーカーを標準装備し、安全性に加え快適性も向上。

 また、アグレッシブなエアロパーツが装着され、専用のサスペンションチューニングを施し、空力性能と運動性能向上を追求した「タイプS」が追加されました。

 その後、2009年にS2000は生産を終了。後継車はありませんでした。

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 S2000は10年間で日本では約2万台、世界累計で約11万台を販売。発売当初の販売計画台数が月間500台(マイナーチェンジ後は100台から150台)でしたので、当初の需要の後は計画どおりとはいかなかったといえます。

 当時は販売台数が多かったとはいえませんが、貴重なコンパクトFRスポーツカーということから販売終了後にじわじわと人気が再燃。

 そして、発売から20周年を記念して、2020年6月には新開発のサスペンションパーツや、新たにデザインされた外装パーツなどが、ホンダアクセスから発売されて再び注目を集めました。

 現在のSUV人気という状況を鑑みると、今後ホンダからS2000のようなピュアFRスポーツカーが発売されることは難しく、ますます貴重な存在となってしまうのではと危惧されます。

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