トヨタ「クラウン」は「MIRAI」に置き換わる? 次期型が「SUV×FCV」もあり得ると考えられる理由

次期型クラウンは「SUV×FCV」になると思ういくつかの理由

 クラウンの将来に対して、トヨタの「ミライ」がヒントになると筆者(瓜生)は考えます。

 世界初の量産型燃料電池自動車(FCV)として2014年に登場したミライは、官公庁などを中心に販売実績を積み、2020年12月には2代目へとフルモデルチェンジしました。

 実験的な要素の強く見られた初代とは異なり、2代目ではデザインも洗練され、良い意味で「普通のクルマ」となったことで、将来的なFCVの普及に向けた足がかりとなることが期待されています。

 自動車業界における世界的な「電動化」というトレンドのなかで、トヨタはその体力を活かした全方位的な戦略を採用しています。

 日本国内市場でいえば、足元では直近の現実解ともいえるハイブリッド車(HV)で販売台数を伸ばしつつ、プラグインハイブリッド車(PHV)のラインナップも拡充させつつあります。

 一方、将来に向けて、より環境性能の良いとされるFCVの開発を進めています。

 もちろん、中国などの海外市場では電気自動車(EV)も展開しています。

 ガソリンの代わりに水素を充填し、酸素との化学反応によって発生した電気を使用してモーターを駆動することで動力とするFCVは、二酸化炭素を排出しないゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)でありながら、充電時間と航続距離というEVの課題をクリアしている点が大きな魅力です。

 一方、FCVの普及には十分な数の水素ステーションが必要不可欠であり、インフラ整備に時間がかる点がネックです。

 ただ、日本は官民一体となって水素ステーションの整備を進めているおり、現時点でも世界でもっともFCVに適した国といわれています。

 資源の少ない日本にとって、水素をエネルギーとするFCVは文字通り「未来」そのものであり、今後順当にインフラが整備されれば、近い将来FCVは多くの人にとって選択肢に入るようになるでしょう。

 当然、FCVの普及にともないミライ以外のFCVモデルも拡充されていくことが予想されます。

 そのとき、ミライに続く次のFCVモデルがクラウンであっても不思議ではありません。

 かつて、「プリウス」が世界初の量産型ハイブリッド車として登場した後、続いてハイブリッドシステムが搭載されたのが「エスティマ」、そして当時のクラウンでした。

 新技術は、コストを価格転嫁のしやすい高級車や、システムを配置する余裕のある大型車から搭載されやすいという点でも、近い将来FCV化したクラウンが登場する可能性を見出すことができます。

 クラウンのSUV化についても、FCVシステムを搭載することを前提とすると、居住性を確保するためにもSUV化することは合理的であると考えられます。

上海モーターショーでお披露目されたトヨタ「ハイランダー」
上海モーターショーでお披露目されたトヨタ「ハイランダー」

 さらに、クラウンのSUV化を支持する理由がもうひとつあります。

 これまでクラウンは、基本的に国内専用車種として開発・販売されてきました。

 しかし、グローバル化の進む昨今、自動車業界では各車種でプラットフォームを共有し、部品の共通化を図ることでコストバランスを改善してきました。

 現行クラウンもLSなどと近いプラットフォームを使用してはいますが、日本市場に合わせたナロー(狭幅)型へとカスタマイズされたものとなっています。

 今後の日本市場におけるクラウンの需要減を考えると、グローバルでも販売できるモデルへとシフトを図るのは戦略的には妥当です。

 とくに、世界最大の新車販売市場である中国では、SUVかつ電動車がおおきな潮流となっています。

 さらに、クラウンのような歴史あるブランドを尊重する文化もあるため、SUVスタイルの新型FCVに、「クラウン」という名称を与える可能性はじゅうぶんにあり得ると筆者は考えます。

 次期型クラウンについての情報は、現時点では断片的なものばかりであり、真実は定かではありません。

 しかし、既存の情報から推測すると、次期型クラウンがSUVスタイルのFCVとなり、中国市場などを含めたグローバルモデルとして登場する可能性は大いにあるといえるでしょう。

 上海モーターショーで登場したクラウンクルーガーは、実際には「ハイランダー」の中国仕様(正確にいえば、第一汽車仕様)であるため、次期型クラウンとの直接的な関係はないようですが、今後の市場での反応が次期型クラウンに影響を与える可能性もあるかもしれません

※ ※ ※

 時代や市場に合わせて柔軟に対応していくことは、これからの時代にもっとも求められていることのひとつといえます。

 パワートレインにかかわらず、そのブランドらしさが出せるかどうかが重要という点は、日本も中国も変わらないようです。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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