自工会豊田会長 クルマの100%電動化に言及!「e-フューエル」が実現する日本らしいカーボンニュートラルとは
政府の新車100%電動化宣言で新車販売店やユーザーに迷いも
世界がEVシフトへと大きく舵を取るなか、なぜ自工会はこのタイミングで「e-フューエル」の重要性を強調したのでしょうか。
カーボンニュートラルという考え方は、2010年代後半から世界各国で一気に広まり、国や地域での政策として達成目標を掲げるようになりました。

そのなかで、運輸分野でのCO2排出の割合が多い自動車について「20XX年までにガソリン車やディーゼル車の新車販売禁止」という厳しい方策が目立つようになったのです。
日本では、2020年12月に経済産業省が「グリーン成長戦略」を公表し、自動車については「2030年代半ばまでに軽自動車を含めて新車100%電動化」という目標を掲げました。
さらに、年が明けて2021年1月の通常国会の施政方針演説で、菅義偉総理が「2035年までに」と新車100%電動化の年数を明示したのです。
そのため、メディアでは「日本でも今後、一気にEVシフトが進む」といった報道が目立つようになりました。
市場に対する影響は極めて大きく、例えば筆者(桃田健史)が複数ブランドの新車ディーラーの現場で話を聞くと「いまガソリン車を購入しても本当にいいのか?」という新車購入に対する迷いを示すユーザーが増えているといいます。
これに対して、ディーラーマンとしてもはっきりとした答えができず困っているというのです。
また「ガソリン車やディーゼル車の下取り価格が一気に低下するかもしれないが、いつ頃までに売ればいいのか?」といったユーザーからの問い合わせもあるといいます。
こうした声は、自動車メーカー各社を通じて自工会でも把握しているはずですので、今回の会見でも、カーボンニュートラルに対する正しい理解を広めるため、オンラインなどでカーボンニュートラルと自動車の関係についての専用コンテンツを近日中に公開するといっていました。
自工会によると、現在の日本市場は新車市場で約4割がハイブリッド車ですが、保有台数約7800万台でみるとハイブリッド車は1割程度に留まっています。
新車ライフサイクルが約15年であり、2021年現在の保有台数のすべてが電動化シフトするには、政府が掲げるカーボンニュートラル達成年の2050年より先になってしまうと、自工会では考えています。
そのため、重要なことは既存の保有車や、現在発売しているガソリン車やディーゼル車が今後中古車になって市場の残っていても、e-フューエルとして燃料がカーボンニュートラルになっていれば、日本全体としてのカーボンニュートラルにつながるはずだ、という考えにつながります。
こうした発表に対して、記者からは「世界のEVシフトの潮流に取り残されないのか?」という質問が出ましたが「大切なことは、ゴールがカーボンニュートラルであること。そのために(施策を実施する)順番を間違えないでいただきたい」と、豊田会長は政府やメディアに対して釘を刺しました。
この会見がおこなわれた4月22日は、日本時間の夜にアメリカのバイデン大統領が主体となる環境サミットがおこなわれる予定で、そのなかで各国は「20XX年までに新車100%電動化」について改めて強調する可能性があります。
日本の自工会としては政府に対して「出口戦略に対する意識を国民全員がしっかり持った、日本らしいカーボンニュートラル政策を望む」という強い意志を示したことになります。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

































