「あえてMT車に乗るメリット」は存在する? AT率約9割でもMT推奨派が多い謎
いまあえてMT車に乗る最大にして唯一無二のメリットとは
しかし、もし筆者が免許をこれから取得しようとする人に、AT限定免許をすすめるかといえば、それも「No」です。
仕事上、生活上の必要性がない人で、いまMT車を新車購入する人のほとんどが「MT車が好きだから」が主たる理由だと考えられますが、それこそがMT車に乗る最大にして唯一無二のメリットといえるのではないかと考えます。
大前提として、人が何を楽しいと思うかは人それぞれです。MT車を楽しいと思う人がいれば、AT車を楽しいと思う人もいる、どちらにも優劣はありません。
人の趣味嗜好は、他人によって規定されるべきものではなく、自身の中から生まれてくるものです。
データを見れば、MT車はもはや風前の灯です。現在新車購入されるMT車の多くが、趣味性の高いスポーツモデルだと考えられます。
それらは、そもそもが限られたターゲットのみを想定しているニッチなモデルであり、大多数のニーズに合わせたものではありません。したがって、誰もが魅力に思うわけではないのも当然です。
前述の通り、性能面や機能面で見てもMT車を選ぶ合理性は皆無です。しかし、人は合理性でのみ生きるものではありません。
AT車に比べて非合理的なものが合ったとしても、それを補って余りあるものが「好きだから」という感情なのだと思います。
結局のところ、各メーカーから用意されているMT車のほとんどが「操る喜び」といったある種の精神論を強く訴求しているのは、それ以外に合理的な説明がつかないからではないでしょうか。

新車販売におけるMT車比率が1%程度であることは前述しましたが、逆にいえばいまでも年間4万台程度のMT車が販売されているととらえることもできます。
潜在顧客も含めれば、その数倍のニーズはあることでしょう。これは趣味の世界で考えれば、まだまだ非常に大きな市場規模であるといえます。
「人が何を楽しいと思うかは人それぞれ」といいましたが、それでもこれだけの人がMT車を楽しいと思うのであれば、それだけ「MT車に魅力がある=好きだから」と思う人が多いということの証明になるのかもしれません。
MT車を「移動のための生活の足」というAT車と同じ土俵で考えるならば、MT車をすすめる理由はほとんどありません。
しかし、趣味のものとしてとらえたら、いまなお多くの人を惹き付ける魅力的な乗り物であると考えます。
ただ、日本ではAT限定免許では法律上、一般公道でその魅力を味わうことができません。
MT車に魅力を感じるかどうかは人それぞれですが、体験するチャンスを味わう権利、という意味で、筆者はAT限定免許ではなく、MT車も運転出来る普通免許の取得をすすめるのです。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。









































































