「ボルボ=安全」を築き上げた「240」は200万円前後を狙って正解!【中古車至難】

速いクルマ、丈夫なクルマ、安全なクルマ、このようなクルマは中古車市場に山のように出回っている。しかしこれら要素をすべて持ち合わせ、なおかつレトロな味わいを兼ね備えたクルマとなるとボルボ「240」で決まりだろう。王道のネオクラシックカーとして、多くのクルマ好きから認められた理由は一体どこにあるだろうか。

今となっては新鮮な60年代フィーリング

 ネオクラシックと呼ばれる世代のクルマ、つまり「ちょっと古いクルマ」が人気を博している昨今だが、そのなかでも「大定番」といえる存在がボルボ「240シリーズ」だろう。

 非常に有名なクルマゆえよくご存じの方も多いはずだが、ボルボ240とは、いってみればシーラカンスのようなもの。

 お魚さんのシーラカンスは3億5000万年前と変わらぬ姿のまま、1938年に南アフリカで発見されたわけだが、ボルボ240は(当然ながら)さすがにそこまで極端な「生きた化石」ではない。

 しかし1993年という(ネオクラシック系のなかでは)比較的最近まで新車の販売が続けられたボルボ240のデビューは、米国のニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任した1974年までさかのぼる。

 さらに、240シリーズと基本設計をほぼ同じくする前身の「140シリーズ」も仮に同型車であるとするならば、ボルボ240の基本構造は1966年までさかのぼることになる。……1966年といえば、日本ではメートル法が完全施行された年。その前年までは尺貫法の公的な使用がまだ禁止はされていなかったという“大昔”である。

●1974年 ボルボ 240シリーズ

1974年に登場した4ドアモデルであるボルボ「244」。車名はシリーズ名+エンジン気筒数+ドア枚数といった法則のもとつけられていた。1980年以降は全モデルが「240」という名前で統一された(C)Volvo Cars
1974年に登場した4ドアモデルであるボルボ「244」。車名はシリーズ名+エンジン気筒数+ドア枚数といった法則のもとつけられていた。1980年以降は全モデルが「240」という名前で統一された(C)Volvo Cars

 そんなボルボ240は、まずは2ドアセダンの「242」と4ドアセダンの「244」、さらには5ドアの「245」という車名で1974年の秋にデビューした。さすがに初期モデルと1993年の最終モデルとではデザインのディテールは異なり、搭載エンジンの種類も少々異なる。

 だが「基本的な構造」と「基本的なデザイン」は不変のまま19年間、いや、140シリーズから数えれば27年間、このクルマは生産され続けた。それが、筆者が240を「シーラカンス」と呼ぶ理由だ。

 魚のほうのシーラカンスが3億5000万年も生き延びることができた理由は「その間、深海の環境は大きく変わらなかったから」だといわれている。

 しかしクルマのほうのシーラカンスであるボルボ240が、新車としては19年間または27年間も生き続け、その後も30年近くにわたって愛され続けている理由は何なのか?

 それは、このクルマならではの「デザイン」と「運転フィール」のふたつであると、筆者は考える。

 デザインは見てのとおりのレトロ系だが、1980年代後半や1990年代に各自動車メーカーから雨後の筍のように発売された「作られたレトロ」ではなく、「本物のレトロ=歳月の経過により自然と味わいが生まれたもの」である点が、まずはボルボ240の世界的な人気を長らく支え、今も支えている。

 そしてもうひとつの理由である「運転フィール」。こちらについても、ボルボ240は間違いなくレトロ系だ。

 最新世代のボルボ各モデルはプラットフォームを刷新したことで、BMWやメルセデスなどドイツ勢の最新世代各車と比べてもまったく遜色のない、スムーズでありながらもスポーティな乗り味を実現させている。しかし240は、なにせもともとは1970年代あるいは1960年代のプラットフォームゆえ、それらと同じようなスムーズさは望むべくもない。

 だが、古いクルマならではの「操作系各部から伝わる重み」が逆に新鮮というか、極端な電子制御化が進んだ現代のクルマでは決して出せない類の“味”に転化した結果、ボルボ240は、昨今のコンピュータ仕掛けなクルマでは満足できない層の受け皿であり続けているのだ。

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