マクラーレン「F1」を2度も大破させた「Mr.ビーン」の元愛車の価格は?

約851万円の落札価格は、付加価値があってこそ?

 このほど、シルバーストーン・オークション社から「THE RACE RETRO LIVE ONLINE AUCTION 2021」に出品されたFIA仕様フォード・ファルコンは、ローワン・アトキンソン卿からの直接のオファーによって、同社に販売委託されたという。

●1964 フォード「ファルコン FIA レースカー」

ローワン・アトキンソン卿が、「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」を含む様々なクラシックツーリングカーレースに出走してきたフォード「ファルコン FIA レースカー」(C)Silverstone Auctions Limited 2021
ローワン・アトキンソン卿が、「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」を含む様々なクラシックツーリングカーレースに出走してきたフォード「ファルコン FIA レースカー」(C)Silverstone Auctions Limited 2021

 アトキンソン卿は2006年以来このファルコンを所有しており、過去15年間には英国スネッタートンやベルギーのシメイで開催される「シルバーストーン・クラシック」、そしてもちろん「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」を含む、様々なクラシックツーリングカーレースに出走してきた。

 この種のレースカーの常として、レースの前後には必ずスペシャリストによる整備を受けているが、さすがに世界的レジェンドの愛車に相応しく、英国でも最高のチームがメンテナンスサービスを担当。その間に施されたすべての作業、アップグレードなどを詳しく記した履歴ファイルも完備した状態でオークションに出品された。

 このファルコンは2014年から現在に至るまで、グッドウッド・サーキットにもほど近いファンティントンの「ジョン・フリーマン・レーシング」によって管理されており、現時点における最後の重要なコスト投下は2018年となる。新品のラジエーターやアルミニウム合金製バンパー、ブレーキやエンジン冷却系などを含む様々な作業がおこなわれている。

 もちろん、アトキンソン卿の所有期間中の定期的なメンテナンス作業とアップグレードの履歴ファイルには完全な詳細が記載されている一方で、2020年には世界中で猛威を振るっているCOVID-19の影響により、サーキットで本領を発揮する機会は与えられなかった。

 現状において添付されるFIAドキュメントは「クラスCT10(ピリオドF 1962−1965)」のためのもので、新型コロナ禍によって車両検査も中断されていることから、更新手続きは未決状態にある。

 ただ、前回のレース以降に走らせる機会も限定されていたため、英国のクラシックレース界では有名なスペシャリスト、スティーヴ・ウォリアーによって組まれたエンジンは、この先もしばらくの間は充分なパワーを発揮するとのことである。

 また、すべてのシートベルトや消火器などの安全装置は新品に取り換えられているほか、スペアパーツにはホイール/タイヤのセット、リミテッドスリップデフ、落札者がストックしておく必要がある補修用ボディパネルなども含まれる。

 クラシカルなターコイズ・ブルーのボディカラーに、ミニライト社製アロイホイール、少しだけローダウンしたスタンスは、いかにもイギリス式ツーリングカーレーサーらしいアピアランス。英国のエンスーにとっては、堪らない魅力を湛えた1台である。

 加えて英国内のナンバー登録もされていることから、サーキットのみならずクラシックカー・ラリーイベントやツーリングなどにも参加可能である。

 シルバーストーン・オークション社では、今回の出品に際して「巧みに仕上げられ、世界的セレブレティとともにヒストリーを築いてきたファルコンを手に入れるならば、レースシーズンが間もなく始まる今こそ、絶好のタイミングでしょう」という煽情的なキャッチ文とともに、5万5000−6万5000ポンド(邦貨換算約835万−約988万円)というエスティメートを設定した。

 これも同社曰く「今回のガイド価格は現実的」とのことだったが、3月27日午後(現地時刻)におこなわれたオンライン競売では、エスティメート下限をなんとかクリアする5万6250ポンド、日本円に換算すれば約850万円で落札されることになった。

 ぎりぎり面目は保たれたかにも見えるのだが、実はこの価格は同年代のフォード・ファルコン・スプリントの相場との比較では、2倍から3倍にも相当するもの。完璧なレース仕立てであることを加算したとしても、やはり「元Mr.ビーン代」がかなり含まれるかに感じられたのである。

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